■小説があることで、普段の曲作りとは異なる部分もあったかと思います。テーマがある上で作るゆえの大変さなどはありましたか？
ヒデユキ テーマがない時って、自分の好きなようにラフに作れるんです。もちろんそれはそれで0から生み出す苦しみもあるんですけど。一方、今回はこの世界観をどのように表現するかというところからスタートしたので、小説の良さをどうしたら上手く音で表現できるのかを考えるのが苦労した部分でした。
セイカ 私はテーマが決まっていた方が曲作りがしやすいタイプなんです。縛りがあった方が楽しいというか。それこそ岡崎先生の小説の世界観をイメージして曲を作った時も、物語の中で流れていそうな楽器を選んだり、太宰府・令和のイメージソング“時の旅人”を作った時は、「令和」の元となる短歌が詠まれた奈良時代にあった音階を使ってみたり。なので、今回も難しいテーマではあったんですけど、それをどう音と歌詞と曲調で表現するかを考えるのが楽しかったです。
■“たからもの”では鍵盤の音が印象的に使われていますが、それはどんなアイデアから実現されたものだったんですか？
セイカ 基本的にアレンジは私が引き受けているんですけど、ピアノの音って不思議だなと思うんです。ハッピーな歌にも悲しい歌にも使われて、曲によって表情がすごく変わる楽器だと思って。なので、普通に聴くとピアノが印象的なカッコいい曲に聴こえるんですけど、小説を読んでから聴くと、ピアノの音が切なく、グッとくるように聴こえればいいなと思って、ピアノをメインにおいてみました。
■今回コラボした佐藤さんはミュージシャンでもあったにしろ、小説家の方と一緒に作詞をしたことで、普段にはない刺激もあったかと思いますが、いかがでしたか？
ヒデユキ 普段僕たちがチョイスしないようなワードを歌詞に入れてくださったのが「言葉のプロってすごいな」と思う反面、今後、僕たちだけでもそういうものを作っていかないといけないなと感じました。そういう意味ではすごく刺激を受けました。
セイカ 同じく、言葉のチョイスや世界観が自分たちにないものなので、すごくありがたかったです。一方で、小説の先生って本当に文字だけで全ての世界を表現するじゃないですか。それって本当にすごいことだなと思って。それに対して音楽って歌詞だけではなく、メロディーもあるし、楽器や曲調も含めて、いろんなことで伝えたいことを伝えることができる。なので、自分たちも改めて歌詞にこだわるという部分を、もっと突き詰めていかないといけないなと勉強になりました。
■お2人のそれぞれの中で、小説、楽曲、朗読の全体を通して、特に一押しの部分があれば教えていただきたいです。
ヒデユキ もちろん前提としては、小説と音楽と朗読の全体を楽しんで欲しいですが、強いて言うと歌詞ですかね。ストレートすぎない表現で、かつ小説を読んだ後に歌詞を読むと結構刺さるフレーズが多くて。そこは小説と朗読と音楽を楽しんだ時に最終的に噛み締めて欲しいところかなと思います。僕たち自身もこのプロジェクト以降、人生とか両親について考えるようになったんです。自分の頭の中に歌詞が流れてきた時に考えることが多いので、聴いていただいた方も何かを感じていただければ嬉しいです。
セイカ 全部楽しんでもらいたいのはもちろんなんですが、とはいえ、最近のトレンドワードにも「タイパ」ってあるように、みんな忙しいと思うんです。じっくり本を読む時間もないような時代だと思う。でもこのプロジェクトって、正直耳さえあれば全部完結するんですよ。スマホひとつで世界観を全て楽しめるので、そういう意味でも、まずは曲と朗読を楽しんでもらいたいです。曲は約2分58秒なので、もしかしたら山手線の1駅よりも短いかもしれない。(笑) なので、タイパ重視の方にもぜひ聴いてもらえると嬉しいです。
■小説自体もコンパクトですし、読んだ後の余韻もすごくいいですよね。
セイカ あの短さであのストーリーを表現できるって本当にすごいですよね。
■“時の旅人”や“純喫茶”、受験応援ソングの“Step by Step ～合格祈願～”など、Neontetraの楽曲はテーマを据えた楽曲も多いじゃないですか。テーマを決めた上で制作を行っていくことは、お2人の方向性として積極的に行おうと考えていることなんですか？
セイカ そうですね。Neontetraが発信する意味がすごく重要だと思っているんです。それこそ私が福岡の太宰府出身だから、天満宮と関連付けて受験合格の歌が出せるとか、岡崎先生も太宰府出身だったから太宰府の曲を一緒に書こうとか。私たちにしかできない音楽を追求していくことが、私たちのミッションなんじゃないかなと思います。
■次のテーマに関するアイデアも既にあるんですか？
セイカ やっぱりNeontetraだからこそやる意味があるものを今後もやりたいと思っています。今までも自分の地域やご縁からどんどんと広がっていったんですけど、それはどれも自然発生的にできたことだったんです。なので、今回も“たからもの”関連のイベントを全て終えた時に、次にやるべきことが見えてくるんじゃないかなと思っています。なので、今は「これをやる」とは決めずにやっていきたいなと思っています。
ヒデユキ 楽曲以外のところでも、それぞれの地元に関連した活動も増えているんです。僕は千葉県出身なんですけど、そのご縁で千葉県柏市の大スターである爆風スランプのギタリスト・パッパラー河合さんの楽曲を歌わせていただいたり、サッカーチーム「アビスパ福岡」の応援ソング“Progressive!”を作ったのも、セイカさんが福岡県出身で、かつ僕がサッカーがすごく好きだったという繋がりがあったり。そういった繋がりからまた曲のインスピレーションが湧いてくるんじゃないかなと思います。
■Neontetraは今年10周年なんですよね。振り返ってみて、いかがでしたか？
セイカ 10年も続くとは思っていませんでした。(笑) でも続けようと思って活動しているわけではなく、1つ1つ目の前のことをやっていたら、気づいたら10年経っていたという感じなんです。目の前のことをやっていたら、ご縁があってメジャーデビューすることができたり、CDをリリースできたり。「目の前にやることがあるからやりたい」、「やりたいからやる」っていう10年でした。
ヒデユキ 自分もあまり実感はないですね。ここまで支えてくれたファンの方々の存在があってこその10年なので、本当にありがたいなという思いが大きいです。あとは10年を振り返った時に、もちろん細かい停滞はあるんですが、何もしなかった1年が本当になくて。何かをし続けていった結果、たまたま10年が経過したという感覚なんです。今もまさに“たからもの”を一人でも多くの方に知っていただきたく必死でツアーを回って、今年もいつの間にか4月になっていますし……。本当にあっという間に過ぎていたなと思います。
■Neontetraの今後の目標や展望というと、どんなことがありますか？
セイカ ずっとファンの人には言い続けているんですけど、目標の場所は『紅白歌合戦』です。本質的には多くの人に私たちの音楽を聴いてもらいたいという思いがあるんですけど、紅白に出られるようになっていれば、その目標が達成できているのではないかと思って。ファンの方への恩返しにもなると思いますし、多くの人に楽曲を届けて、いつか紅白の舞台に立ちたいです。
Interview & Text：村上麗奈
PROFILE
セイカ(Vo)とヒデユキ(Ba)の2人からなる、進化系1990年代“テイスト”ポップスバンド。早稲田大学在学中に結成。作詞・作曲・編曲のすべてのサウンド制作をNeontetra が行う。2020年、徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。デビュー曲“時の旅人(たびと) ～令和ゆかり地・太宰府のうた～”のMVには、同郷の広瀬香美さんが出演し話題を集める。2022年には、サッカーＪ１「アビスパ福岡」の試合にて歌唱をしたり、飛行機エアドゥの機内音楽に楽曲が採用されたり、「爆風スランプ」パッパラー河合さん制作の千葉ご当地ソングを歌唱したりするなど、活動の幅を広げた。「音楽で地方創生！」を掲げているアーティストとして、社会貢献活動を熱心に行っている。人々の心に寄り添い、励まし、応援するポップスを提供し続けている。
http://neontetra.jpn.com/
RELEASE
『たからもの』
クラウン ミュージック ストア限定商品
A.通常セット（CD+短編小説+朗読音源）
￥1,100（tax in）
https://crown.murket.jp/item/36401
B.発売記念イベント生配信視聴券セット（CD+短編小説+朗読音源+生配信視聴券）
￥2,200（tax in）
https://crown.murket.jp/item/36677
C.発売記念イベント参加券セット（CD+短編小説+朗読音源+イベント参加券）
※サイン＆撮影会付き
￥3,300（tax in）
https://crown.murket.jp/item/36526
配信限定シングル
https://lnk.to/takaramono
日本クラウン
3月15日 ON SALE
EVENT
2023年6月3日(土)都内にて発売記念イベントを開催。
登壇者：Neontetra、佐藤青南
ゲスト：宮崎あみさ
サイン会、撮影会、トークショーを予定。
参加券、配信視聴券はクラウンミュージックストアで期間限定販売中。
https://crown.murket.jp/item/36526
https://crown.murket.jp/item/36677
