Non Stop Rabbit『無自覚とは言いつつ多少は自覚がある天才ツアー2022』ライブレポート@EX THEATER ROPPONGI

柔軟なアイデア力を発揮し未来への決意を見せた東名阪ツアー終幕。

「やっとこのシングルで強みだけが突出して見えた気がします。王道でカッコいい主題歌も書けるし、バラードでの声の良さもそうだし、ふざけた時もすごいんだぞっていう。今後はこの強みを鍛えようかなと。」以前インタビューにて、最新シングル『無自覚の天才』に収録された3曲についてそう語っていた田口達也(Gt&Cho)。そんなシングルを引っさげて行われたツアー『無自覚とは言いつつ多少は自覚がある天才ツアー2022』のファイナル、9月15日(木)のEX THEATER ROPPONGI公演では、その3つの音楽性を主軸にした楽曲の魅力を感じさせるセットリストと、YouTuberならではの柔軟なアイデアをふんだんに組み込んだライブを展開した。

この日のライブは“ALSO”で開幕。「止まらない兎、Non Stop Rabbit始めます!」といつものように始めたステージにぴったりな歌詞に、田口の勢いのあるカッティングと、太我(Dr)のキレのあるドラムでのっけから熱いステージを繰り広げる。「六本木おまたせ!楽しんでいこうな!」という矢野晴人(Vo&Ba)の言葉から“乱気流”へと続け、“明るい歌”へ。高音の際立つ歌声と金物を多用する華やかなフィルが鮮度の高い瑞々しさを感じさせる。“私面楚歌”では引き続きアップテンポながら勢いを少し落ち着けるように、歪んだギターとタムを中心にするドラミングで音の重心を下げて印象を変える。さらに“TABOO”ではベースの低音を押し出しながらグルーヴを作り出す。序盤から豊かな楽曲で会場の流れを作り、オーディエンスを引き込んでいく。

アッパーな“Pant voice”で盛り上げたのち、“BIRD WITHOUT”ではサビのメロディをなぞるイントロや間奏のギターが懐かしさを呼び起こし、会場の雰囲気を変える。そしてこの季節にぴったりな“夏の終わり”、終わった恋から前を向く様子が描かれる“恋愛卒業証書”と、バラードに繋げていく流れも見事だ。後のMCによると、これまでの公演はMCで自由に喋った後にバラードに突然入っていくという、彼ら本人も「へたくそな入り方」と評する流れだったというが、本公演ではそれを改善したという。田口のギタープレイからも感情の昂ぶりを感じられるなど、セットリストの改善の末の“恋愛卒業証書”では感情的なシーンも垣間見ることができた。

この日の会場である六本木での思い出話から、矢野の飼っているカエルの話題まで自由なMCは、普段YouTuberとして活動しているだけあって抜群のトークスキルを感じさせる。そんなリラックスしたムードを経て、4つ打ちの王道ロックで盛り上げた“偏見じゃん”、“推しが尊いわ”とユーモアの溢れる曲を畳みかける。特に“推しが尊いわ”は、オーディエンスにとっては「推し」が目の前にいるということもあって、客も指ハートで熱烈なアピールをしながら熱を上げていく。しかし曲終盤、突然黒子によって舞台袖に連れていかれた3人。ほどなくステージ上に戻ってきたのは、何故か全身タイツ姿の矢野と田口であった。そんな中“豆知識”へ。後に太我も登場し、全身タイツ姿の3人で歌ったり踊ったりと、会場を大いに盛り上げていた。

気を取り直し「ここからカッコ良くいきたいと思います!」と披露したのは、この日の主役とも言える楽曲“無自覚の天才”。一段ギアを上げるような勢いで圧倒するが、これもまだセットリストの中盤。だがそんなことを差し置いて、ライブはラストスパートかのように盛り上がりを増していく。キャッチーな頭サビから続いた“三大欲求”から、続くEDM調の“ハニートラップ”では、矢野の「飛べますか!」の一言でオーディエンスが一斉に飛び跳ねる。サビ前半ではドラムパッドとガットギターをメインに落ち着いたフレーズ、サビ後半ではEDMサウンドで盛り上がるという抑揚ある構成の楽曲だが、“豆知識”での盛り上がりからの“無自覚の天才”、 “三大欲求”とアッパーな楽曲が続いたことで会場の熱気は高まる一方で、そんな中の“ハニートラップ”も盛り上がり曲として一層会場を揺らしていく。

「せっかくバンドやっていてライブをやっているんだから、今までのライブを越えたいと思うわけですよ。越えてくれますか!?」という田口の言葉をきっかけにして“アンリズミックアンチ”、その勢いのまま“Needle return”に突入。後半、アッパーな楽曲が続く中、和の要素を盛り込んだ“音の祭り”や、EDMサウンドでダンスフロアに染め上げた“Needle return”など、様々な方向性のアプローチを取り入れたバラエティ豊かな楽曲が続くことで、盛り上がりも天井知らずだ。そんな熱狂を目の当たりにした田口は「いい景色だね」と呟く。そして、「俺たちはいつも自分で考えて自分で決断をしてきた。この2年大きな箱でやってこなかったのも、メジャーデビューしたのもそう。豊洲PITも同じ。」と、2020年に開催した初の全国ツアーにて、そのファイナルの豊洲PIT公演がパンデミックの影響によって中止となったことにも言及。「国からの要請が出て、あの日は俺たち自身で『俺たちはやらない』って決めた。俺たちは誰かに決められたくないし、自分で選んでいたい」。そして熱を帯びた口調で続ける。「あの日、辞めるという決断をして立ち止まったんじゃない。進むために中止を決めた。そんなことを考えた時に、やっておかなきゃいけない場所があるって思ったわけよ。全国ツアーファイナル豊洲PIT、来年やります!」と来年の全国ツアーの開催と、そのファイナルとして幻となった豊洲PIT公演を行うことを発表した。「巻き戻すんじゃない。これまでも必死に生きてきたんだからさ、またここから素敵な思い出作りを始めていきましょう!」そう宣言し、“優等生”を力強く奏でた。

そしてこの日最後の楽曲として披露した“PLOW NOW”では、銀テープが発射されるという、ここ数年見ることのなかった景色も広がった。この演出に、そして未来への道が開けるような明るい楽曲と「最高速度ぶっ飛ばして 止まらないから」「今この時を生きてたいんだ」の歌詞に、彼らの決意の強さと、これからも自分たちの意思で進んでいくという覚悟を強く感じた。止まらない兎、Non Stop Rabbitはこれからも走り続けていく。

Text:村上麗奈
Photo:菊島明梨

https://nonrabi.com/

『無自覚とは言いつつ多少は自覚がある天才ツアー2022』@EX THEATER ROPPONGI
01. ALSO
02. 乱気流
03. 明るい歌
04. 四面楚歌
05. TABOO
06. Pant voice
07. BIRD WITHOUT
08. 夏の終り
09. 恋愛卒業証書
10. 偏見じゃん
11. 推しが尊いわ
12. 豆知識
13. 無自覚の天才
14. 三大欲求
15. ハニートラップ
16. アンリズミックアンチ
17. Needle return
18. 音の祭
19. Refutation
20. 優等生
21. PLOW NOW