Offshore VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Arata(Vo&Gt)、KAI(Gt)、佐倉なる(Dr)、大島英寿(Ba)

河村隆一も認める「スタンダードなのに、どこにも無い」サウンドの作り方。

河村隆一がプロデュースする4人組バンドOffshoreの楽曲“青の約束”を起用したショートムービー「【平成/令和の対比型MV】Offshore『青の約束』」がYouTubeに公開された。音楽大学の同期であるArata、KAI、佐倉なるの3人に新メンバー大島英寿を加えて新体制をスタートさせたOffshore。今回公開されたショートムービーは「平成と令和の恋愛観」に関する実態調査をベースとして、平成・令和を生きるカップルの姿をそれぞれ描いている。Offshoreにとって初のインタビューとなった今回は、結成のいきさつから音楽づくりにまつわること、河村隆一との交流から、20代の彼らの価値観まで、幅広く話を訊いた。

■Offshoreのみなさんは今回がバンドとして初めてのインタビュー取材ということで、いろんなお話を聞いていきたいと思います。まずArataさん、KAIさん、佐倉なるさんは音楽大学の同期と伺いましたが、大学ではどんな勉強をされていたのですか?

Arata 3人ともロック&ポップスコースという、音楽大学としては比較的珍しいコースで、それぞれ担当の楽器を専攻していました。僕はシンガーソングライター専攻です。

■バンド結成のきっかけは?

Arata まあ大学の友達の繋がりというか、初めは「バンドやってみようぜ!」みたいな流れでした。ベーシストはいろいろあったんですけど、今は大島くんが入ってくれた感じです。

■新メンバーの大島さんはオーディションに合格して加入されたんですよね?(取材日時点では)加入からまだ1ヵ月も経っていない新人さんということですが、合格の決め手は何でしたか?

Arata プロデューサーの河村隆一さんが「ベーシストのオーディションをしよう」と言って、オーディションが始まって。決め手としてはベースの腕が一番だったんですけど、やっぱり性格というか、メンバー3人とも「この人がいいな」と思ったのが大きいです。

なる バンドの中でドラムとベースって大事じゃないですか。なので、「あ、合うな」ってなんとなく直感的に思った人を選びました。

■大島さんから見たOffshoreはどんなバンドでしたか?

大島 最初に聴いた時は、「若いのに楽曲の完成度がすごく高いな」と思いました。

■その口ぶりですと、大島さんは他のメンバーより年上なのでしょうか?

大島 いえ。1歳年下です。

Arata 1歳くらいは誤差ですよ。(笑) 彼は身長も高いからちょっと年上に見られるんです。

大島 身長は186センチです。

Arata 6センチくれ!(笑)

■文字通りの大型新人ですね。(笑) ベーシストが加入したことによる一番の違いは?

Arata 今までしばらくはサポートのベーシストを入れて活動していたんですけど、一番の違いは「小回りが利く」っていうのが正直なところです。でもやっぱりバンドをやっている以上、「メンバーである」っていうのは、心理的にも、活動的にもすごく重要なことなので。まぁ仲間がひとり増えたって感じですかね。音楽以外で言うと(大島は)バンド内では今のところ見守り役なポジションにいます。(笑)

■いかがですか大島さん?今バンド内で「自分」を100%出せていますか?

大島 いや……まだ50%くらいです。(笑)

なる あー、まだまだや。(笑)

■50%しか出せていないなら、1年後に会ったら全然違う印象になっているかもしれませんね。(笑) 話は変わりますが、Offshoreのバンドの活動のテーマは何ですか?

Arata 自分たちが好きな音楽を発信して、それを好きになってくれる人がいればいいなということだったり。あとは音楽好きも唸らせたいなと思ってやっています。

KAI 誰かの生活の一部になって欲しいなって思います。生活の中に入り込むような音楽がやりたいです。

■プロデューサーの河村隆一さんはみなさんにとってどんな存在ですか?

Arata 偉大な方であるっていうのはみなさん周知の事実だと思います。でも、僕が1番すごいなって思うのは、良い意味でフランクで、フラットに接してくださる所です。だからこその方なんだろうなと思います。

KAI 音へのこだわりがすごいです。スタジオにある機材だったり、ご自身がやられているバンドでの音作りに対しての姿勢だったり、それがすごくカッコいいなって思います。

なる 「恩人」みたいな所がありますね。この出会いがなかったら今の僕たちは無いかもしれない。大島くんの加入前に、学校で「いいね」って言ってもらって、今の事務所で拾っていただいて、すごくお世話になっています。

大島 自分にとってはレジェンドです。初めてお会いした時もすごく気さくに話していただきました。すごく温かい方です。

■音楽における「プロデュース」には様々な意味があると思いますが、河村隆一さんはバンドに対して、どのような形でプロデュースしているのでしょうか?

Arata 基本的には事務所のスタジオというか、隆一さんのスタジオを「いくらでも使っていいから、好きにやりなさい」と言っていただいて。出来上がった楽曲に対してもアドバイスしてくださったり、COTTON CLUBでライブする機会をくださったりもしますが、基本的には温かい目で「好きなようにやっていいよ」って言ってくださっています。

■印象的だったアドバイスなどはありますか?

Arata 最初に僕らが隆一さんのスタジオにお邪魔した時に、隆一さんは「バンドは音の取り合いだ」という話をしてくださったんです。バンドって、僕らだとヴォーカル&ギター、ギター、ドラム、ベースっていう楽器があるんですけど、それが空間を奪い合って共存し合っている……っていう。ミキシング的なことを言うと、「誰がどこにいるか、誰がどこにいるべきかの居場所の住み分けをちゃんとするのが音作りなんだよ」と話してくださいまして。そのことは難しいイメージとして知ってはいたのですが、隆一さんがすごくわかりやすく言ってくださり、隆一さんの頭の中ではそうなっているんだなと思いました。

なる アドバイスを受けて、曲に対してのアプローチやプレイスタイルも変化しました。隆一さんのライブでドラムを叩いてる沼澤尚さんのプレイがとんでもないんです。隆一さんは「沼澤さんは一番に目が行くドラマーで、スネア1発でオーディエンスの目を自分に集められる」と仰っています。プレイヤーとしての魅力がすごくあって、俯瞰して見た時にも、自然と目が行っちゃうんですよね。自分もそういう存在になりたいです。

KAI 隆一さんの所有する楽器に触れる機会をいただいて、やっぱり僕が持っている楽器とは比べ物にならないぐらいいい音がするので、自分が目指すべき音作りの方向性が変わってきました。

Arata 「楽器はヴィンテージだから良い」っていうわけでもないんですよね。やっぱり「ヴィンテージだから」よりも、「いい楽器である」が先なんです。KAIちゃんがよく弾いているFenderのストラトキャスターだったら、「本当のストラトの音は何なのか」という基準を知っておくのが、ミュージシャンとしては大事なことだと思います。楽器屋さんにディスプレイされているものを触らせていただくことはいくらでもできると思うんですけど、それを実際にレコーディングで使ったことがある人って、きっと同年代のミュージシャンにはなかなかいないので、そこは活かしていきたいですね。

■先日ショートムービーが公開された“青の約束”について、こちらはどんな時に聴いて欲しい曲として作曲されたのでしょうか?

Arata この曲はちょっと出来上がり方が特殊でして。実はこれ、KAIちゃんが作ったサビのメロディだけのデモがあったんですけど、彼はなんとそれをボツにしようとしていたんです。(笑) 「こんなのもあるけど、これはボツだから」って言っていて、僕がその発言を聞いて「いやいや、ちょっと僕の方で引き取って、ちゃんとした曲にしてもいい?」と言って止めたんです。それでフル尺のメロディを作って、なるくんが歌詞を書いて出来上がったんです。

■ちなみになぜボツにしようとしていたんですか?

KAI 僕は結構サビだけの曲をストックしているんですが、その時の自分の中ではあんまりピンと来ていなかったんです……。(笑)

■そういうのって作曲をしているとよくあることではありますよね。でもサビがすごく印象的な曲でした。

なる ボツにしなくてよかったな。(笑)

KAI やっぱりひとりじゃわからないこともありますよね。

■みなさんの中に「こういう音楽を作りたい」というイメージはあるんですか?

KAI いろんな方の人生に関わることに対しての曲を作りたいです。ドライブや通勤、通学みたいなことでもいいですし、ちょっと行くのが憂鬱な時とか、行くのが楽しみな場所とかに音楽を一緒に連れて行くようなイメージで。

Arata 僕らも音楽好きなので、既にある楽曲へのリスペクトや憧れもあります。包み隠さずに言うと、既存の音楽を聴いていて、「こういう楽曲がOffshoreにも欲しいな」って思うことももちろんあります。まぁそう思って作ったとしても、やっぱり元の曲とは全然別のものになりますけどね。(笑)

■逆に作曲の際に、「これは敢えてやっていない」ということはありますか?

Arata 僕が意識しているのは「スタンダードから逃げない」ことです。かと言って普通では終わらないようにも意識しているんですけど、やっぱりメロディが一番大事だと思っているので、王道のコード進行や定番のアプローチ、定番のリズムパターンを毛嫌いするよりも、メロディが呼んでるのであれば、スタンダードなアプローチからは逃げないようにしてます。その上で何ができるか。8ビートを叩かせるんだったら、どれだけ8ビートをカッコよく叩けるのか。普通のギターのアプローチでも、どれだけいい音でどれだけグルーヴィーに演奏できるか……というようなことを心掛けています。

なる 僕はArataとは逆に、スタンダードを踏まえつつ、自分のやりたいことを盛り込んでいます。リズムオタクなんですけど、そういうプレイヤーとしてのエゴをどれだけ盛り込めるかっていう。

Arata これを言うと結構な種明かしになる気がするんですけど、曲を作る時、なるには最初にマシマシで叩いてもらって、その上でみんなで取捨選択をしています。1番美味しいところでなるの音が出るように。なので、ライブでは結構アプローチが違ったりして、そこは楽しんでいただけるかと。

なる ライブやる度にフレーズが違いますからね。(笑) 1回も同じように叩いたことないです。(笑) でもずっと4回転ジャンプみたいなことをしていると、失敗する確率の方が高くなるし、スタミナの減りも早いので、「ステップを踏みながら、たまに4回転ジャンプ」みたいなことを意識しています。魅せどころもわきまえないといけない。ドラムばかりがうるさいと他を台無しにしちゃうので、魅せられるところでしっかり魅せて、それ以外は慎ましくいきたいです。

Arata これは後々変わってくると思うんですけど、現時点ではあんまり音数を多くしないようにしています。僕は割りと音を重ねるタイプのアレンジャーだったんですが、隆一さんに「良い楽器の音さえあれば、ダブリングしていたギターも1本でいいってことがよくあるんだよ」と教えていただいて。実際にスタジオで良い機材を使っていると「あ、この音はいらないね」ということがよく起こるようになりました。音を少なくしておくと、ライブでの再現性も上がりますし、修行というわけではないですけど、今リリースしている2曲に関しては音数を少なくしています。

■確かにシンプルなサウンドが魅力的な曲になっていました。そういえば、最近タイトルに「青」がつく曲が多いと言われていますが、“青の約束”はどうして「青」なのでしょうか?

なる 実は……色は全く関係なくて。(笑) 楽曲のコンセプトが「また会いたいな」というもので、僕は地元の友達に「また会おうね」ってLINEとかで伝える時に「また会おう」と全部打つのがめんどくさいので、「あお」って送っていたんです。そこから「もう少し情報量を減らせないかな?」と思い、「青」一文字になりまして……。

■あーなるほど!それってコミュニティ内での流行的なものなのでしょうか?

なる いや、もう僕たち個人間のやりとりで、送っているその友達にしかわからないやつです。(笑) それがきっかけで「また会いたいなって約束」という意味で“青の約束”とタイトルをつけたんですけど、意味としてはやっぱり「夏の曲」という所もあります。青春だったり、出会いと別れのせわしなさだったりも含めて、一番イメージしやすいのが「青」なのかなと。めちゃめちゃ月並みな表現になりますけど、「青」には青い空とか青い海とか、そういう爽やかさや突き抜ける感じがあるじゃないですか。夏の空を見上げると雲がパーっと広がっていて、ああいうのを見た時に「素晴らしいな」みたいなことを思うような。まぁでも意味の大半を占めているのは「青春」の青ですね。(笑)

■ちょっと意外な成り立ちでしたが、最近の曲に「青」が多いのも、そういうことが積み重なった結果かもしれませんね。

なる 元はいわゆるダジャレですけどね……。(笑) でも「青」はいろんな想像力をかき立てられる色だと思います。ちっちゃい子が「なんで空って青いの?」って質問するのも、人間が青に想いを馳せがちだからというか。いろんな想いが込められがちな色なのかなと思います。