大原櫻子 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

力強くも温かいアルバムが完成。世の中に対する葛藤に立ち向かう女性の強さを描く。

大原櫻子が1年10ヵ月ぶりとなるアルバム『FANFARE』をリリース。女性の強さを軸に作り上げたという今作には、力強くも優しさのある壮大な“Fanfare”、心温まる“ふわふわ”、犬の目線から歌詞が描かれた“寄り道”など、個性豊かな楽曲が揃っている。今回のインタビューでは、そんな本作の制作や込めた思い、そして女優として演技の仕事なども行っている大原が感じる芝居と歌手活動の互いがもたらす影響について、大原櫻子本人に話を訊いた。

■今回のアルバムリリースは1年10ヶ月ぶりとなりますが……。

大原 もうそんなに経つんですね。

■前作のアルバムをリリースしてから、今までは短かったですか?

大原 そうですね。『l (エル)』をリリースしたのがコロナ禍が始まって半年後くらいで、いろいろバタバタと動いていたので、あっという間だった気がします。

■『l』のリリース以降、今作の制作の時期は大原さんはどんなモードで過ごしていたんですか?

大原 『l』の時は、それこそコロナ禍になってしまって、「とにかく何かできないか」とプロデューサーさんに相談したり、とにかく音楽を作ろうという意識がすごくあって。今回の『FANFARE』は、小名川高弘さんがプロデューサーとしてついてくださって、構想を練っていったんですけど、小名川さんが作る世界観だったり、大原櫻子の音楽の軸を改めて見つめ直した1年だったなと思っていて。なので、『l』とはまた違ったような感触になるのかなと思っています。小名川さんは私がデビューした時からついてくださっているスタッフさんの1人でもあるので、原点回帰みたいなことも感じられる1枚になったと思います。

■原点回帰という言葉も出ましたけど、今の自分を見つめ直すフェーズに入った理由は何かあったんですか?

大原 今までは、私も英語に興味があったりとか、アメリカの曲が好きだったりするので、海外で活躍されてる作曲家さんと一緒にやってみたり、ダンスナンバーを多くしたりという挑戦もしていたんです。もちろんライブの時にダンスで魅せるっていうのも大事ですけど、みんなと一緒になって歌えるような楽曲も大事だなってすごく思って。亀田さんとかが作ってくださっている楽曲って、みんなで歌ったりタオルを回したりできる曲も多かったので、そういう楽曲をもう一回作りたいなっていう意識がありましたね。

■まさに今作には、みんなで楽しめるような優しい印象の楽曲や、励まされるような楽曲が多いと感じました。アルバムのテーマはどんなものを見据えて作っていったんですか?

大原 今回、3ヵ月連続リリース企画をやらせていただいたりして、そこでは恋愛をテーマにいろんなシチュエーションや視点を描いた曲を発表したんです。それがアルバムにも入っているので、恋愛模様っていうのは強めのテーマのひとつになるのかなと思っています。ただ『FANFARE』っていうアルバムタイトルやリード曲にもあるように、「女性の強さ」みたいなものをすごく出したいなっていうのが私の中であって。というのも、今年に入ってから舞台をやらせていただいた時も、作品のテーマとして女性が社会で生きていく上での葛藤を描いている作品がすごく多くて。そこに感化されているっていうのもあったりすると思うんです。連続リリースの3曲もそうですし、“Fanfare”もそうなんですけど、今がコロナ禍だったり、世界で争いごとが起こっていたりとか、世の中に対する葛藤みたいなものを主人公が持っていて、「それに向かって自分のことを奮い立たせて向かっていくぞ」っていう、女性の強さを描きたいっていう話をしていたので、そういう「女性の強さ」がテーマとしても大きいところであるのかなと思います。

■1曲目にリード曲“Fanfare”が収録されていますが、曲のタイトルとアルバムのタイトルを同じものにする案は、制作の初めの段階からあったんですか?

大原 いや、全体が出来上がってからですね。作っていく中でも、この曲は「ファンファーレ」っていうテーマも含め、何かを引っ張っていく感じがするというか。メロディーを聴いて、アルバムの1曲目にピッタリと思いました!歌詞もそういう方向で作っていったので、同じタイトルにしました。

■すごく優しい印象の残る曲ですね。

大原 そうですね。でも「革命を起こしたい」みたいな意思の強さは出したいなと思っていて。コーラスがたくさんいるっていうのもあって、穏やかな気持ちになるように聴こえるかもしれないですけど、「みんなが一斉に前を向いて歩きだす」っていうのが伝わったらいいなって思います。

■歌詞についてはどんなことをオーダーしたんですか?

大原 1人の女性、しかも私の等身大である20代の女性が、「みんなで行くぞ!」って旗を振って前に歩き出すみたいな曲を歌いたいっていうのを伝えて、この歌詞ができました。

■そういった力強いテーマの楽曲なので、歌い方もパワーがあるのかと思いきや、逆にすごく柔らかくて。

大原 私も最初にメロディーを聴いた時には、力強い感じなのかなと思っていたんですけど、優しさと、みんなが寄り添っている感じがすごく出たなと思っていて。今までは、ここまでテーマがはっきりしていて強い意志を持っているけど、優しい歌い方をするっていうのをあまりしてこなかったので、すごく新鮮でした。だから、出来上がるまで曲の雰囲気がわからなくて。でも自分でも想像はしていて、途中の段階の時に「ここはちょっと優しく聴こえ過ぎているんですけど」って言ったら、「ここからどんどんコーラスでも厚みが出ていくから」って言われて。最終的に聴いたら、すごく思っていた通りになっていました。

■5月にリリースされた“笑顔の種”は、「嬉しいことも悲しいことも 半分こしよう」という歌詞が、このアルバムに収録されることで、更に印象的なフレーズになっているなと感じました。

大原 私もこの部分めちゃくちゃ好きで。「半分こ」って、なかなか大人になってから使わないじゃないですか。すごく久美子さんらしい可愛らしさが詰まっている楽曲だなと思います。やっぱり今、なかなか実家に帰れなかったり、遠くの人には会えなかったりする時代に、「おかえり」って言ってくれる場所があるっていうのを、気づかせてくれるようなものにしたいっていうところから作られた歌詞で。温かいし、可愛いし、とても情景が浮かぶ曲だと思います。

■こちらは歌い方としてもパワフルですよね。

大原 久美子さんの歌詞は、本当に自分が主人公になったように、景色がちゃんと見えるんですよ。すごく歌いやすいですし、気持ちも込めやすいです。すごく好きです。

■“それだけでいい”や“ポッピンラブ!”など、大原さんご自身が作詞をされている曲も収録されています。特に“ポッピンラブ!”は、ご自身が主演を務めたドラマ「つまり好きって言いたいんだけど、」の主題歌にもなっていますが、大原さんにとって芝居と歌との関係性は深いものなんですか?

大原 そうですね。自分で作るってなった時は歌詞にも影響しますし、自分が歌い手として歌わせていただくという意味でも影響は出てくると思います。楽器を弾きながら作詞・作曲をするんじゃなくて、台本をたくさん読んで、思い浮かんだものを書いていくという感じなので、頭で考えてやるようなタイプではないかもしれないです。

■“ふわふわ”はいかがですか?これも大原さん作詞の楽曲ですが、すごく可愛らしい曲になっていますね。

大原 今までも“のり巻きおにぎり”とか、“いとしのギーモ”とか、ちょっとクスッと笑えるようなものをスパイスで1曲入れていて。今回のアルバムにもそういう曲が1曲あったらいいなと思って作りました。あと“のり巻きおにぎり”もみんなで踊ったりできるような曲だったので、“ふわふわ”でも身振りだったり、コロナ明けにはみんなと一緒に歌えたりするような曲にしたいなと思って。そのイメージを大事にしながら、私が焼肉とビールが好きっていう、ただ単にそんな思いで書いていきました。(笑) ぜひ焼肉店で流して欲しいですね。

■童謡みたいな曲調なのに、歌詞が大人向けっていうギャップがまたいいなと思います。(笑)

大原 可愛さもあるし、でも中身にはおじさんを感じますよね。(笑) お子たちにも歌って欲しいけど、ちょっと子供には危険な曲ですね。(笑) でも誰もが歌える曲だと思います。

■励ましている温度感もすごいラフですよね?

大原 そうなんです。根底としては「やっぱり日本人って働きすぎているよね」っていう。それこそコロナ禍になって、1回バッと仕事がなくなって、今は徐々に復活してきていますけど、みんなが急にこれまでの溜まっていた分を働きだしているなって思うんですよ。家族だったりとか、お友達だったり、身近な存在を見ていてもそう感じていて。そんな時に自分を労えるというか、「自分頑張ってるな」とか、「褒めてあげよう」って思える曲にしたいなっていうのが根底にあります。