いろんなアルバムから好きな曲を自分のプレイリストに持ってきたようなアルバム。
OverToneが『POP APP』をリリース。2022年にメジャーデビューし、早くも2ndアルバムとなる今作は、彼らのポップネスが炸裂した作品となっている。キャッチーなリフレインが中毒性の高い“論外”や、フューチャーベースを取り入れた“Prologue”の他、OverToneの得意とするラブソングもたっぷりと収録。6曲入りでありながら、OverToneの魅力が余すことなく詰まった作品となっている。今回のインタビューでは、メジャーデビューしてからの道のりを振り返ってもらいながら、今作で見せたOverToneとしての強みやツアーへの意気込みなど、八上和希、GUCCHI、NOWAR The 匠、アマノの4人に語ってもらった。
■春にメジャーデビューを果たし、リリースもライブも活発に行っていたりと、今年はすごく盛りだくさんだったと思いますが、みなさんにとってどんな1年でしたか?
八上 そうですね。でも思っていたほど変化があったわけではないなっていうのが正直なところですかね。改めてちゃんと音楽と向き合うというか、このグループとこの仕事と向き合う時間がすごく増えた1年だったので、ほんまにやらないとヤバイなっていう。ふんどしを締め直した1年になりました。
匠 段々と関わってくれる大人の方たちが増えたり、曲を作る上でプロデューサーさんが入ってくれるとかっていう変化は感じました。
GUCCHI 僕もプロデューサーの方と何名かお会いして、音楽の話をさせていただいて、やっぱりこれからはそのレベルでやっていかなあかんねんなって思いました。今までは好きなことだけやっていたのが、いろんなことを考えながら作ったりしないとなって。そこは気持ちを締め直しましたね。
■アマノさんは今年印象的だったことはありますか?
アマノ メジャーデビューしたからなのかは分からないんですけど、レコーディングの時に、1人1人の声質に合ったマイクを選ぶっていうことをしていて。だから1曲の中でも別々のマイクでレコーディングすることもあって。そういうのは今まではなかったので、「メジャーデビューするとこんなこともできるのか!」って思いました。
八上 そこで実感するんや。(笑) 俺と匠くんは一緒のマイクやったな。
アマノ 今作も4人一緒のマイクで録った曲もあれば、全然違うマイクで録ったものもありましたね。
匠 印象的なことで言うと、メジャーデビューアルバムの『Prologue』がオリコンのデイリーチャート10位にチャートインしたっていうのが、僕らも初めてのことだったので、すごく印象的でした。
八上 僕はコロナ禍にも関わらず、ラジオとかキャンペーンでいろんなところを回らせていただいて、インディーズの頃よりこんなに露出が多くなるんやなって思って。改めて見た目とかにも気を遣うようになりました。(匠に向かって)なんで笑ってるの?
匠 微笑ましいなぁと。(笑)
八上 4人で一緒に垢抜けていってます。お母さんにもこの間言われましたからね、「垢抜けたなぁ!」って。(笑)
■(笑) 今作は早くも2ndアルバムということですが、メジャーデビューからの動きとしては、精力的に制作を進めていった感じなんですか?
GUCCHI そうですね。アルバムが出る前からもう次作に向けての制作に入っていくので、リリースする頃にはいつ作った曲だっけ?ってなることもあります。(笑)
八上 “それと、愛”に関しては、レコーディングしたのもう去年の夏とかじゃない?
■幅広い時期の曲が揃っているんですね。アルバムというひとつの作品にしていくにあたって、イメージなどはあったんですか?
GUCCHI それこそ『POP APP』っていうテーマで、僕らのポップスを軸にやっていこうっていう思いはあって。その中でいろんなジャンルを試してみたいなっていうのはありましたね。
■1曲目“Prologue”からフューチャーベースの曲が登場していますね。
GUCCHI そうですね。ちょっとやってみたくて。
■フューチャーベースをやりたいというのは、ずっとアイデアとしてあったんですか?
GUCCHI そうですね。単純に聴いていて一番オラつけると思いました。(笑)
匠 分かるなぁ。(笑)
GUCCHI 「やってみたいけど、合うかな?」とか思いながらも、なんとかポップスに昇華したっていう感じでした。チャレンジでした。
八上 この曲は作詞・作曲がGUCCHIなんですけど、僕がすごいなと思ったのが、この感じの曲調でずっと日本語なんですよ。こういう曲って英語使いたくなっちゃうのに、これはマジですごいなって思いました。
■あえて日本語の歌詞にしたんですか?
GUCCHI あえてでもあるんですけど、僕は基本的に英語が得意ではなくて。(笑)
八上 えっ?避けてたってこと?
GUCCHI 中2の時にテストで19点取ったことがある……。相当アホなんですよ。(笑)
アマノ 中2の19点はヤバイ。(笑)
GUCCHI やばいやろ!?でも基本的に自分の中のテーマとしては、英語を使うにしても僕でも知っているような英語にするっていうのを一応軸にしていて。だからカタカナで書ける英語くらいなら結構使っているかなと思います。
■それもポップスとしてのあり方ですよね。
GUCCHI そうですね。全体的にわかりやすくキャッチーにっていうことで。
■みなさんは“Prologue”を最初に聴いた感想としては、どんなものがありましたか?
八上 編曲をROYALcomfortのROVERさんにやってもらっているんですけど、GUCCHIからデモが送られてきた瞬間にROVERさんにやって欲しいなって思って。それが一番最初の感想でしたね。
アマノ この曲は結構キーが高めなんですけど、GUCCHIはいつも低めの声担当なんですよ。だからGUCCHIの歌った仮歌がピッチ修正ソフトで無理やり上げたロボ声みたいになっていて……。その印象が強いですね。(笑)
GUCCHI そこなんや。(笑) 最初に作っていたキーから上げた方がいいなって思って、無理やりピッチ修正ソフトで3度くらい上げたので、めっちゃ可愛い声で聴いていただきましたね。
アマノ でもレコーディングして、こういう曲も俺たちにできるんやなっていうのは思いました。やっぱりポップなジャンルではないというか、ゴリゴリのEDM調の曲なので。これを日本語で俺らでも歌えるんだなと。
匠 僕も同じで、ROVERさんからトラックがきた時に、「めちゃくちゃカッコいいな、これを僕らが歌うんか」って思って。実際にレコーディングしてみて、自分らの声で聴いたら意外に合うんやなって思いました。新しい自分たちを見つけられたというか。
■歌詞もすごく熱いですよね。
GUCCHI これは自分たちの音楽人生を先まで考えて書いたんです。超要約すると、「マジ売れようぜ!」みたいなことを書きたくて。ちょっと映画の世界っぽいニュアンスも入れてみながら熱い詞を書きました。
八上 めっちゃ熱いんですけど、どこか冷静さを感じるというか。
匠 内に秘めた感じ。
八上 そうそう。「GUCCHIやなぁ」って思いましたね。
■みなさんでこの歌詞のような、「売れようぜ!」的な話をすることは多いんですか?
八上 週9でしていますね。
匠 会う度に言ってる気がするな。
八上 会う度に誰かしらが新しいアイデアを持ってきて、意見交換とかアイデアをブラッシュアップしたりする時間になっているので。もう一緒に住みたいっすよね。
匠 いや……それはほんま勘弁して欲しい。(笑)
■ちなみに今回はフューチャーベースでしたけど、GUCCHIさんとしては「次はこういうものにチャレンジしてみたい」みたいなのってあるんですか?
八上 やっぱ日本クラウンやしな……。
GUCCHI ん……どういうこと?
八上 日本クラウンといえば演歌やろ!
匠 多分歌われへん!
アマノ 無理やろな。(笑)
GUCCHI でもそうですね。それこそEDM系の洋楽ジャンルで、ジャンプするくらいのテンポが流行ったじゃないですか、ハウス系の。ああいう曲を増やしていきたいなっていうのは思っています。
■“赤い線”もGUCCHIさんが作詞・作曲を担当しているんですね。これはどのように作られたんですか?
GUCCHI これはメジャーデビューする前にできていた曲なんですけど、メジャーデビューしてから歌詞をいじったりしました。
八上 最初はラブソングじゃなかったんですよ。“わすれもの”っていう曲名やったな。
GUCCHI そうですね。2年くらい前にバイト中に小学生がドッヂボールでめっちゃダッシュしているの見て、「なんであいつあんなにダッシュしてるん?」って思って。でもあの頃って自分でもきっとそうやったなと思って、それで1曲書いてみたっていう。
■それがラブソングになったのはどうしてなんですか?
GUCCHI いろんなご意見をいただきつつでしたね。ただ、元々使っていた歌詞を残しつつラブソングに変えたので、自分の中では結構楽しい作業でもありました。
八上 テーマとしては「初心を忘れない」みたいなテーマやったんですよ。
GUCCHI そう。だからそこまでブレずに、それのラブソングバージョンっていう感じで書き換えました。「ここの歌詞を残しながら書いてみよう」っていう感じで楽しかったんですけど、できればもうやりたくはないですね。大変は大変なので。(笑)
■歌詞を見てみると、今回のアルバムにはラブソングが多めに収録されているんですね。
八上 そうですね。今の事務所に入った時に、当時のマネージャーとかに「やっぱりOverToneはラブソングじゃない?」みたいなことを言われて。その頃、既にラブソングが結構あったんですけど、確かに自然とラブソングを作っているっていうことは、自分たちでもそれが強みって思っているんやろうなって感じて。僕個人としては、ラブソングは等身大にというか、22歳の時には22歳のラブソングを、27歳でアラサーになったタイミングで“赤い線”みたいな愛について語っている曲とかを歌うようになってきたので、僕が作った曲ではないですけど、心から歌える感じがありますね。だから、昔の曲を歌っている時は懐かしい気持ちになったりとかもします。
GUCCHI それこそ“つよがり”を匠くんがどういうマインドで書いたのかとか、僕らも聴いたことないな。
匠 “つよがり”は女性目線になっているので、こういう歌詞のことを相手に思っていて欲しいなっていう。お別れした時に向こうがそう思ってくれていたら、こっちも気持ち的に報われるというか。ただ歌う時に誰かを思うとかはなくて。他の恋愛ソングとかは目の前にいるファンの人たちを相手と見立てて歌うことが多いです。
アマノ 僕はラブソングは特に情景が浮かびやすいので、頭の中で映像を流しながら、曲ごとの主人公の気持ちになりきっているかもしれないです。それはラブソングに限るんですけど。
八上 映画ばっかり見るからやない?
■映画は恋愛ものを結構観るんですか?
アマノ 恋愛ものはあんまり観ない……。(笑) 恋愛ものって感動するものが多いじゃないですか。どっちかが病気になっちゃってとか。あんまりそういうの観たくないんですよ、泣いちゃうので。
八上 泣くん!?アマノの涙はまだ見たことないな。
アマノ 涙は出さないんですけど……。
八上 なんやねんそれ。(笑)