■“wani no kuchi”ですが、「ワニの口」というモチーフはどこから来たんですか?
かわむら これはワニの歯を抜くおもちゃですね。
かめがい そうなんだ。
かわむら この曲はサビだけがちょっと前にできていたんです。3年前くらいですかね。実家にある昔の写真を見ていた時に、部屋の棚にワニの歯を抜くおもちゃの箱が写っていたんです。あれってよく考えるととんでもないおもちゃじゃないですか。だってワニの口が開いていて、歯を抜いたら噛まれるかもしれない。……そりゃあ噛むに決まってるでしょ!
■確かに。(笑)
かわむら とんでもない世界観だなと思ったんですよね。
かめがい 自分がやられると思ったら、すごい嫌だね。
かわむら すんごい嫌。
かめがい ワニはよく我慢しているよ。
かわむら 本当だよ。ワニってイメージが噛むという動作と一体化しているじゃないですか。キャラクターが1個の行動と一体化しているって、すごいアイデンティティだなと思って。その存在感がすごく気に入ったんですよね。今までワニの存在自体にすごく思い入れがあったわけではないんですけど、あのワニのおもちゃの存在感が、その時の自分のマインドと共鳴する部分があったんですよね。
かめがい よく考えるとひどいおもちゃだね。
かわむら ひどいおもちゃよ。だって健康な歯を抜かれたらさぁ……。
かめがい そりゃあ嫌だよね。あれって、歯を抜くやつと押すやつがあるじゃん?押されるのも嫌だよね。いっぱい押し込まれて、当たりが出たらやっと噛めるんだよ……。
かわむら 歯茎に歯を埋め込まれていってね。っていう……それです。(笑)
■タイトルをローマ字にしたのには意味があったんですか?
かわむら 「ワニの口」っていう言葉って、日本語に聞こえないなと思ったんですよね。日本語で書くと「ワニの口」なのですごくわかりやすいんですけど、「wani no kuchi」っていう言葉ってすごく可愛らしいというか、キャッチーだなって思って。その感覚に一番近いのがローマ字の「wani no kuchi」だったという感じですね。
■『UNDERTALE』に出てくる「ケツイがみなぎった」という言葉は、前回の取材の際にもおっしゃっていましたが、“wani no kuchi”の歌詞にも含まれているんですね。
かわむら 本当にすごくいい言葉だと思いますし、そうとしか表現できない気持ちのひとつだなと思っていて。これって翻訳されたフレーズなわけじゃないですか。それでしか得られない言葉のフィーリングがすごく自分たちにも突き刺さっている感じです。
かめがい よく使うよね。
かわむら うん。そうとしか言い表せないことだと思います。
■“火花”は後半にだけ歌詞が乗る、珍しい構成の楽曲ですね。
かめがい これは最初ピアノとドラムのインストのつもりで作った曲で。というのも、私が11月に喉の手術をして声が出せなかったので、歌モノを想定して作るのはすごく難しかったんです。それをリハでかわむらくんと合わせている時に、「歌詞が乗ったらカッコいいんじゃないか」と言ってくれて、かわむらくんが歌詞を書いてくれたっていう感じです。
■歌詞は元々あったインストにインスピレーションを受けて書いたんですか?
かわむら そうですね。自分たちで制作する曲って、どの部分においても必然性がないといけないと思っていて。そうでなくてもいい部分があると、あまり気持ちよくないと思っているんです。それでインストを前提として作ってきた曲を合わせた時に、言葉とかコーラスが乗ることにある種の必然性を感じたんです。だから乗せたっていうのが感覚としては近いと思います。
■今作を聴いて、ポップしなないでの音楽は編成の選択肢もそうですし、音楽性も多様だなとあらためて感じました。そんなポップしなないでの核にあるものは、どういった部分だと思いますか?
かわむら 結局のところを言うと、2人の人間でしかないので、そこに尽きるとは思うんです。ただもう少しわかりやすく自分たちを分析すると、やっぱり言葉とそれを伝えるサウンドだと思うんですね。言葉をどう伝えていくか。それが歌だったり、コーラスだったり、ドラムだったり、ピアノだったりするっていう感じかな。
かめがい ポップしなないでって、かわむらくんが言う通り言葉がすごく大事な要素だと思っていて。私は歌っているので、「どうすれば伝わるんだろう」っていうのはすごく考えているんです。なので、曲を聴いてもらった時に、「歌詞がいいね」って言われるとすごく嬉しいんです。かわむらくんが書いた言葉を伝えるのに成功したって思うから。やっぱり「ラララ」で歌っているのと、言葉で歌うのは全然違って。その言葉を私が口に出した時に、私が何かを感じてそれを表現できたら、聴いた人がまた何か別のことを感じると思うんです。そうやって繋がっていくことだと思うんですよね。言葉を通してのコミュニケーションってすごく大事なんだなって思います。
■3月からは2マンツアーも控えていますね。『合言葉はトキメキ』というツアータイトルに込めた思いというと?
かわむら 我々も来てくれる人たちも、ただトキメキを探しに来ると思っているんですよ。音楽にお腹を満たす効果はないですし、眠かったのに急に目が覚めるっていうのもないと思うんですけども……。
かめがい なに、その例え。(笑)
かわむら レッドブルみたいな?(笑) まあ多少目が覚めることはあるかもしれないけど、限度があるから。眠かったら絶対に眠くなっちゃうじゃん。
かめがい そうだね。
かわむら でもどんなにきつい毎日が続いていても、好きな音楽が1ヵ月後に実際にライブ観られるっていう時に感じるトキメキはあるじゃないですか。なので、「ここは『合言葉はトキメキ』でしょ!」っていう。これは歌詞にもなっているんですけどね。
かめがい 合言葉って1人じゃ成り立たない言葉だから、私たちも会いに行くし、みんなが会いに来てくれる、「お互いの合言葉がトキメキになっている」みたいな感じがして、私はすごく好きです。ツアーのタイトルとしてもすごくいいなと思います。
■どんなツアーになりそうですか?
かわむら 前回までは正直、蓋を開けるまで「お客さん5人来てくれたらいいな……」みたいな感じというか。それはちょっと言い過ぎですけど、「そんな中でもこんなに来てくれて嬉しい」みたいな、そういった感情でやってきた部分が心のどこかであったと思うんです。多分今回も根本は変わらなくて、「こんなに来てくれたんだ」っていう感情は絶対にあるんですけど、もう少し責任を持って音楽と言葉でコミュニケーションを取れる気はしています。対バンの方々も、我々がすごく信頼している音楽と人間性の人たちばかりなので、楽しい日にできるんじゃないかなと思います。思い上がりかもしれないですが、少し自信があるツアーになっているんじゃないかなと思います。
かめがい 私も主催のライブとかだと、来てくれた人たちからもらうものがすごく多くて。それに対する感謝とか、そこに来てくれる人たちのためにっていう気持ちがすごく大きかったんです。もちろんそれは今も変わらないんですけど、でも「私たちのためにありがとう」ばかりというよりは、みんなに見せたいものや、聴いて欲しいものをちゃんと伝える時間だと思っていて。初めてライブで披露する曲もたくさんあるので、「それをちゃんと届けて、ちゃんと伝える」っていうことをやっていけるんじゃないかなと。これまでよりちょっと一歩進んだところで、みんなに会いに行けたらいいなと思っています。
Interview & Text:村上麗奈
PROFILE
2015年結成のかめがいあやこ(Vo&Key)、かわむら(Dr)による、軽やかに無常を歌うセカイ系POP。かわむらの作るどこか寂しげだが前向きな歌詞世界と、かめがいの表情豊かなクセの強いボーカルで、ミニマムな構成ながら編成に囚われない、完成された音楽性を持つ。独自の楽曲哲学に沿ったMVや、確かな表現力により世界観を再現するライブパフォーマンスが話題。2023年2月22日に発売する2nd Full Album『戦略的生存』にて、日本コロムビアよりメジャーデビュー。3月からは全国6都市を巡る「ポップしなないで presents『合言葉はトキメキ』ツアー」を開催予定。ファイナルのみワンマンとなり、4月22日恵比寿リキッドルームで行われる。
https://popsnnid.com/
RELEASE
『戦略的生存』

COCP-41954
¥3,300(tax in)
日本コロムビア
2月22日 ON SALE
LIVE
ポップしなないで presents 『合言葉はトキメキ』ツアー
・2023年03月25日(土) 福岡Queblick(16:30/17:00)
ゲスト:超能力戦士ドリアン
・2023年03月26日(日) 仙台spaceZero(16:30/17:00)
ゲスト:板歯目
・2023年04月02日(日) 札幌Crazy Monkey(16:30/17:00)
ゲスト:和田輪
・2023年04月08日(土) 大阪アメリカ村DROP(16:30/17:00)
ゲスト:塩入冬湖(FINLANDS)
・2023年04月09日(日) 名古屋CLUB UPSET(16:30/17:00)
ゲスト:ネクライトーキー
・2023年04月22日(土) 東京LIQUIDROOM(17:00/18:00) ※ワンマン
チケット:
宮城/福岡/北海道/大阪/愛知 ¥3,500(税込、ドリンク代別)
東京 ¥4,000(税込、ドリンク代別)
チケット一般発売:2月25日(土)各プレイガイドにて
<名古屋公演先行受付中>
・イープラス
・ぴあ
・ローソンチケット
※他公演も先行受付中