SHE’S VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

初回限定盤(CD+DVD+フォトブック) TYCT-69174 ¥4,950(tax in)

井上竜馬(Key&Vo)、服部栞汰(Gt)、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)

今の時期だからこそ活力となるSHE’Sの新作は寄り添い傍らに居てくれる心の避難場所

SHE’Sのニューアルバム『Tragicomedy』は、多くの人の心が弱り気味な現在にこそ歌って欲しかった楽曲たちが詰まった一枚。まるで繭のように心の避難場所を提供してくれ、その各曲は底知れぬ安堵や安心、安らぎやささやかな活力を与えてくれるものばかりだ。とは言え、それは偶然のフィットであったと語るメンバー。今作の製作開始時は、「心が弱っている知人に向けて贈った言葉や歌たち」だったという。
新しい試みや新機軸を多分に有しつつも、全体的に温かく優しく、まるで傍らにて歌ってくれているかのような感覚を聴き手に与えてくれる今作。この『Tragicomedy』こそ、我々がいま歌って欲しい、「待っていた歌たち」と呼べる。今作はまさに、今もそしてこれからも「悲喜劇」を繰り返し、背負い、生きていく我々への「優しくも活力となる、寄り添い傍らに居てくれる心の避難場所」に他ならない!!

■この『Tragicomedy』は新型コロナ感染のニュースで不安や疲弊している現在にジャストフィットする、まさに、「いま歌って欲しい歌」が多く収まっている、偶然ながらもそのタイムリー性にまずは驚きました。

井上 今回ももちろん様々な方に届き、聴いてもらたいとの気持ちはありました。そんな中でも当初は、このアルバム各曲で歌っていることが、同じように悩んでいる方や心の中にわだかまりを持っている方々に届いてくれたら嬉しいな…との気持ちから作り始めましたから。

広瀬 今のような状況の世の中になるなんて、制作当初は全く想像もつきませんでしたし。結果的にそうなったと言うしかない。当初はそれこそ「これまで以上にいい作品を作ろう」、「音楽を楽しんで、その結果、作品に結びつくようなアルバムにしよう」との気概で臨みましたから。なので、基本はコロナ云々もですが、聴いて楽しんだり少しでも気が楽になってもらえたら嬉しいです。

■今作からは従来のみなさんの音楽性の根本にあった至福感や幸福感はもとより、安堵感や安心感がより伝わってくる作品印象があります。これまでの降り注ぐ感じとは違い、傍らに居たり、寄り添って歌ってくれている感がすごくしました。

服部 人それぞれ捉え方は違うし、変わってくるんでしょうが、誰にでも響く、そんな作品が出来たかなって。どんな人も心に思うことがあるでしょうから。そこに寄り添ったアルバムを作りたくて。その辺り、今回は竜馬(井上)が元々「人の心」をテーマに書いたことも大きかったし、僕らはその竜馬の作ってきた原曲を最大限、期待に応えるアレンジや演奏をしていったんです。その「人の心」がテーマの根本にあったからこそ、今の世の中の状況や振り返ればそのような響き方もする作品に仕上がったんだろうなって。今回はこれまでで最も時間をかけて制作しましたからね。もちろんその分思い入れも強く、今までで最も良い作品が出来た自負もメンバー全員が持っているんです。

広瀬 その「人の心」がテーマや機軸にあったからこそ、落ち着きや全体としての統一感があるかなって。

木村 さっきの「自分たちが楽しんで作った」雰囲気もシッカリと作品に表れているし、これまでの作品の中でも、最も聴く人の心に寄り添える楽曲が揃った実感はあります。しかもそれも押しつけるとかではなく、しっかりと心に寄り添える…そんな作品になったなって。

■今回、その「人の心」についてをテーマにしようと思い至った要因は何だったんですか?

井上 アルバム制作用に曲を作り始めた辺りから、今回はこのテーマで行こうと決めていたんです。「心」にフォーカスを当てたアルバムを作ろうって。というのも、自分の身近な人が心の病気になってしまい…、そこからですね。そこに対して、自分なりに向き合うための楽曲を作ろうと。例えば「その人とどうやって接したらいいんだろう?」とか、「その人に向けてどんな言葉を贈ったらいいんだろう?」って。なので、漠然と「心」とは称しましたが、起点はその辺りからでした。

■いわゆる、その病んでしまった心にどのような言葉をかけたら癒せたり、治癒していけるんだろうって?

井上 それもですが、他にも「どうやったら受け入れてもらえるんだろう?」とか。でもそれって決して他人ごとじゃないんですよね。なので、まずはそれを自分に当てはめて、「自分だったらどう向き合ったり扱ったり付き合っていくだろうか?」って。ちょっと無視してしまいがちな感情も、ある意味しっかりと出していかなくちゃならない。それが今作の“Ugly”だったり。いい子なだけでは解決できないことも世の中には沢山ありますから。

■その辺りが先ほどの「傍らに居て歌われている」というのを感じた要因だったんでしょうね。

井上 伝わってくれて嬉しいです。歌詞も今までもそう難しく伝えてはいませんでしたが、今回はよりストレートに分かりやすさも意識しました。じゃないと心に向けて届かないような気がして。そもそも定義も曖昧な上に、更に曖昧な表現では結局何に対して何を歌っているんだろう?ってなっちゃう。それだけは避けたくて。なので、僕としては起点となったその方に向けて歌う意識で挑みました。が故にそのパーソナルな雰囲気が出たのかも。歌い回しやニュアンスや雰囲気がこうなったのも必然的でしたから。

■今回はこれまで以上にデリケートな部分も多いですが、その辺りの伝え方のアレンジやサウンド、演奏面ではいかがでしたか?個人的には、これまでになかった要素や「オッ!」と感じる曲も交えつつ、全体的にウォームで大らかなもので包み込まれている温かい印象がありました。なんか繭(まゆ)みたいな…。

広瀬 “Unforgive”や“Ugly”等の攻めた曲もあれば、“Masquerade”や“Blowing in the Wind”のように、これまでの自分たちにはなかった新しい音楽性やリズムを取り入れた曲もありますからね。自分的には新しい試みとして、“Blowing in the Wind”でのドラムやベースを全て打ち込みにした、このスタイルにはかなりの新境地観を持っていて。この曲では僕もシンセベースを弾いているんです。もちろんこの曲も生で弾いたり叩けたりもしました。だけどリズミカルな曲でもあったので、アクセントづけにこの方法にしてみて。でもその辺りも一通り聴けば全く気にならないんじゃないかな。SHE’S感がシッカリと存在しているし、その上“Blowing in the Wind”は人力では出せない機械ならではのニュアンスも出せていますから。

木村 曲の世界観にも合っていたので打ち込みでも僕的には全然かまいませんでした。新しい挑戦でもあったし。実際それによって新しい道や方法論も開けましたから。ライブも楽しみにしていて欲しいですね。