SpendyMily VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■その気持ちは平井さんも同じですか?

平井 そうですね。マニアックなものをやりたいと思うんですけど、それをやってしまうと、聴いてくれる人が広がらないから。最初は聴いてもらいやすい曲でファンを増やして、いつかアングラなものはやりたいですね。

yukirie 後に「こんなものもできるのか!?」と思ってもらいたいから。

■最初からそういう考えを持てるのはある意味すごいです。そして、今回の新曲“Distance”の話に移りたいんですが、これはいつ頃に作ったものですか?

yukirie 去年の10月頃ですね。流れとしては僕がオケを考えて、それを松永くんに渡して、歌を自由に入れてもらうんですよ。

松永 オケを聴いた時はビックリしました。「こういう曲にしたかった」というジャストな部分を突かれたから。色気があるというか、80、90年代のレトロ要素を入れたくて。サックスも入っているし、すごくいいですね。

yukirie 80年代風のテイストや雰囲気であるとか、お互いに特に口にはしていなくて。今までの3曲はモダン寄りですけど、今回は海外のミクスチャー、ファンク系を意識しながら作りました。ドラムインやブラス系の楽器、スラップとか作るうちに、RED HOT CHILI PEPPERSっぽいなと。(笑) それでもSpendyMilyらしさは失いたくないから、松永くんが持っている歌の色気やポテンシャル、曲のキメのドラムは彼女らしさを表現して欲しくて。それで、ただのオシャレ曲、ただのファンク曲にならずに着地できたのかなと。

■ああ、なるほど。

yukirie 特に松永くんには言わなかったけど、コーラスの松永くんの声はジョン・フルシアンテっぽいなと。

松永 何て?

yukirie RED HOT CHILI PEPPERSのギターはコーラスもやるんだけど、それが似ているなと。

松永 知らなかったです。(笑) 80、90年代の踊れる感じもあったから。今の時代はこれやろって。歌のテイストとしては尾崎豊、安全地帯、井上陽水とか。

■その辺とレッチリ が融合して、また新しい曲調ができたと。(笑)

yukirie 僕は直接的な80、90年代ではなく、Justin BieberやThe Weekndとか、ドラム、パーカッション、シンセの使い方が80、90年代の音楽をリファレンス元にしている楽曲を聴いて、それを発展させた感じですね。

平井 この曲はライブ映えしそうだなと。だから、ドラムも4つ打ち、16の裏も意識しました。

■今までの楽曲の中でもかなりアッパーな曲調になりましたね。

yukirie 最初はドラムもシンプルに入れて平井さんに投げたんですけど、返って来たら「なんだこれ!?」って。イントロからパンチのあるフィルを入れてくれて、すごいものを考えてくれたなと。大サビ前のフィルもそうだけど、彼女の雰囲気が出ているから。

■では、歌詞のテーマというと?

松永 大人になりたい女性がいて、彼女が背伸びしてタバコを吸ったり、高い香水を付けているけど……そうなろうとすればするほど、現実から離れてしまうという。僕も大人になりたいと思う時期もあり、今もきっとどこかで思っていたりするから。現実は求めれば求めるほど離れてしまうんだよって。でも、最終的にそんなことはどうでもいいわって、彼女自身は気にしなくなるんです。でもハッピーでいたい気持ちは変わらないから、そこで本当の愛情を見つけるという。歌詞には書いていないけど、彼女は求めることをやめて俯瞰で見られるようになったことで、自分が諦めていた女性に一歩近づけるという。

■なぜそういう題材を選ぼうと思ったんですか?

松永 なんとなくそういう人は多いのかなと。僕も何かになりたいとか、大人の男性に憧れた時期があったけど、追い求めても、自分がいかに幼いかに気付かされるのがオチだなと。(笑)

■お2人はこの歌詞を読んで、どう思われましたか?

平井 アダルトというか。今までの歌詞はストーリーちっくだったけど、この曲は感情を表す言葉が多くて、それは新鮮でしたね。

yukirie 初めてラップパートを入れているんですけど、その言葉選びというか、言葉遊びが秀逸だなと。

松永 この歌詞の意味は肌で感じて欲しくて。(笑) 言葉にできない感情ってあるじゃないですか。それがわかってもらえたらいいなと。

■“Distance”という曲名も、どこか今の時代性を反映させているのかなと思いますが、いかがですか?

松永 正直、関係はありますね。大人になりたい自分とのギャップという意味で“距離”という言葉を使っていますけど、今の時代はこの言葉を聞くだけで、「ビクッ」となっちゃうから。

■わかりました。今後、バンドで考えていることや将来の夢などあれば教えて下さい。

yukirie 今年初めてドラマ「シジュウカラ」いただいて、すごく嬉しかったんですよ。自分たちの意識が変わったところがあったから。今後もタイアップは取っていけたらいいなと思います。あと、去年初めてライブをやり、力不足を感じる部分があったから、いつかワンマンライブができるように、規模感を広げていきたいですね。

平井 バンドの夢は全部言ってくれたので、個人の仕事もいつかやりたいなと思っていて。私はアートワークも担当しているから、他のアーティストさんとコラボして、その繋がりで他のバンドともコラボできたらいいなと。

yukirie 個人的なことを言うと、澤野弘之さんがすごく好きで、劇伴をやっている方なんですけど、僕もインスト音楽が大好きなので、ドラマやアニメの劇伴を担当したいです。

松永 曲を聴いてもらい、感情を揺さぶられるものを作れたらいいなと。僕自身も音楽に救われてきたから。あと、yukirieくんが言ってくれたように、いつかワンマンライブができたら、1から100まで自分たちの世界観でのめり込ませたいなと思います。「こいつらありえない!」と思わせる世界観をそこで魅せたいですね。

Interview & Text:荒金良介

PROFILE
2020年、Vo.松永瀀がyukirie、平井⽂と出会いオンラインでのセッション活動をスタートし結成。2021年8⽉に初のオリジナル楽曲『夏とブルー』、10⽉に『⾬のリズム』をリリース。2022年1⽉にリリースした『後悔』はインディーズにも関わらず、楽曲を聴いた監督が⾃ら選出し、ドラマ24「シジュウカラ」(テレビ東京系)のエンディングテーマに⼤抜擢された。叙情的かつハイテクニックなyukirieのギターを中⼼とし、既存の枠組みに捉われないアレンジを追求する事でインターネットシーンにおいて、国内外問わず幅広い⾳楽ファン・業界関係者からの⾼評価を獲得している。
https://www.spendymily.com/

RELEASE
『Distance』

配信デジタルシングル
https://spendymily.lnk.to/Distance

5月27日 ON SALE