ジ・エンプティ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■それもいいことかもしれませんね。そしてケンノスケさんの“とまらない愛を”のお話をするのですが、これはノンフィクションなんですか?

ケンノスケ ノンフィクションです。僕は浮気をしないっス。

■歌われている相手には、誰かモデルがいるんですか?

ケンノスケ その点に関しては、聴く人ひとりひとりに大切な人がいることを考えて作りました。僕たちの世代で言うなら、彼氏、彼女とか、家族とか。もう少し上の世代の人なら自分の子供とか。「その人にとっての大切な人」を想像して書いたので、「自分が思っていること」としてはノンフィクションですが、特定のモデルはいません。ひとりひとりが大切な人を想像して聴いてくれるようにと思い、書いています。

■「寝相の悪いあなたの手に起こされ」の所とか、すごく生々しさを感じました。

ケンノスケ これ、いいですよね!好きなんですよ。歌詞を聴いて頭に光景が思い浮かぶのが好きで、でも言い過ぎるのも好きじゃなくて。このくらいがちょうどいい塩梅なんだと思います。

■でも最後のところで、ファンタジーに入りますよね。「三日月のかけらを送り合う」って。

ケンノスケ ここは僕がよく月の写真を撮っているから、そういうイメージなんです。

■なるほど!そう言われると、とても納得しました。もうひとつ気になった歌詞が「君に慣れたくないよ」という所なんです。素敵な歌詞ですよね。

ケンノスケ その人とずっと一緒にいると慣れが出てきて、慣れると、態度とかそういうのが変わるじゃないですか。それが嫌なんです。ずっと最初に抱いた気持ちのままでいたい。だから絶対に慣れたくないし、自分にも慣れてほしくない。一緒にいることを当たり前と思ってほしくない。もし明日死んでも後悔がないように、「今日頑張って生きているよ」という気持ちで書いています。

■いいですね。この曲と“曖昧”については、すっごくリズムに特徴があるじゃないですか。なので、ベースとドラムにぜひこだわりをお聞きしたく思います。

タイキ “曖昧”は、抑揚を意識していないです。“とまらない愛を”の方はケンノスケと一緒に作ったんですけど、そっちの方は抑揚を考えています。

ケンノスケ 今回はタイキがいろんな提案してくれました。単調にならないように、Aメロの中でも前半と後半でちょっと変わるようにしてくれて。そういうのが抑揚に繋がってくるんです。自分は結構、タイキが作ったビートに合わせているみたいなところがあって、助けられています。

■2曲ともライブがすごく楽しみです。そして4曲目の“僕たち大人になれるかな”ですが、いかにも青春感満載な曲でありつつ、今、紛れもなくみなさんは大人ですよね?どうしてこの曲を2025年に書こうと思ったのでしょうか?

ヒナ それは「今、書きたいと思ったから」ですかね。(笑) 自分の身の回りのことを書くことが多いので、逆に言うと、何かが起きなければ何も出てこないという感じです。

■ということは、何かが起きたんですか?

ヒナ いや、何かが起きたというか、それこそいろんな景色が見られるようになってから、「あの時はこうだったな」とか、「ここはぐっと我慢しなきゃいけないんだろうな」とか、そういうモヤモヤがあったんじゃないのかな……という感じです。

■なるほど。今は大人になれていますか?

ヒナ 大人にはなれていないんじゃないですかね……。大人でいったらまだゼロ歳児じゃないですか?(笑)

ケンノスケ 自分は下半身が大人っす。(笑)

■1番ストレートなラブソングを書いている人が何を言っているんですか!(笑) 話を戻して、曲調としては、2005年くらいのJ-POP感を感じましたが、後半はリズムに怒涛の「崩し」が入りますよね。なぜストレートに終わらせなかったのでしょうか?

ヒナ いや、単純に2回同じことしても面白くないじゃないですか。(笑) というより、ジャンル分けされる時に、「ジ・エンプティ」というものが先立って出てくるといいなと思っていまして。ジャンル的には青春パンク的なものになりますけど、別に僕らは「青春パンクをやろう」と思ってバンドを始めたわけじゃなく、「みんなで歌いたい」というのがコンセプトなので、それを根底に置きつつも、今できることというか、今頭に浮かんだものをそれぞれ曲として落とし込んでいるんじゃないでしょうか。

■それで今のモードは、こんな感じなんですね。この曲の歌詞にある「12の終わりに地球は終わるらしい」というのは、2012年の「マヤ暦の予言」のことですか?

ヒナ そうですね。「2012年に地球が滅亡する!」と聞いた時、僕は小3くらいでした。それで、地球が終わるということで、僕は好きな子に告白したんです。だけど結局地球は終わらなかったので、滅亡すると予言したヤツを恨もうかなと思って。(笑) 曲自体は高校の時に見たONE OK ROCKの曲とか、いろんな自分の記憶に残っている年代の曲から、歌詞だったり、リズムだったりを持って来て、組み上げていったみたいな感じです。

■そういえば、たまたま2025年も「予言」が盛り上がる年になりましたね。

ヒナ ですね。(笑) 2012年には映画もありました。あの『2012』という映画、めっちゃトラウマなんですよ。

■ありましたね、映画!みなさんは2012年の予言って、信じていましたか?

シンノスケ 映画が公開されていた記憶はあります。でも予言のことは知りませんでした。

タイキ 僕もあんまり覚えていないですね。

ケンノスケ 僕もです。

ヒナ みんな告白してないから覚えていないんだよ!(笑) でも予言って、いっぱいありますからね。

タイキ これまでは全部外れとるけんね。(笑) 俺らも何か言っといたら、いつかは当たるかもしれん。

■私も何か予言しとこうかな。(笑) ちなみにこの「握りしめた100円」ですが、福岡っ子の100円は、何に使うものなんですか?

ヒナ 100円あったら、一日中遊べましたよ。(笑) 駄菓子屋さんで過ごして、当たりが出れば繰り返せるし、ゲームセンターでも遊べるし。僕は人がゲームしているのを見るのが大好きなので、ゲームセンターはいいですね。あの頃は「100円マック」とかもあったから、100円あったらお腹いっぱいご飯も食べられたし。でも、今はそうじゃないんです。だから「あの頃ってすごく良かったんだな」と思いつつ、書きました。

■みなさんは、小さい頃の100円はどう使っていましたか?

タイキ 100円か……。

ヒナ でかくなりすぎて想像もできないよな。(笑)

ケンノスケ 自分はちょうど小学校の頃に、1日100円お小遣いを貰っていたんです。それで、1ヶ月で3,000円を貯めて、カードゲームのカードを買ったりしていました。

シンノスケ 僕もカードが多いですね。友達の家の横がセブンイレブンやったんで、揚げ鶏を買っていました。(笑) 500円玉でカードパックと揚げ鶏とおにぎり1個が買えたんです。その3点セットを持って、友達の家に行っていました。

■今なら100円握りしめて何をしますか?100円じゃコンビニのコーヒーも買えなくなってしまいましたが……。

シンノスケ なんも買えないですよね。今は100円の自販機もかなり少ないですもんね。

■おにぎりは安くても170円くらいしますからね。時代が変わった感じがします。そしてCDにのみ収録された“BE FINE”。どうしてCDだけに収録したのでしょうか?

ヒナ 5月にリリースしたシングル『輝き』を1年前に録り終えた時にはできていて、そこからライブハウスだけでやっていた曲なんですが、いろんな人に「音源として出した方がいいのか、出さない方がいいのか」と相談しつつ、1年越しに「出した方がいい」という方向に固まりまして。でも、ライブハウスにずっと通ってくれている方から、「出しちゃったんや……」という反応があることも見えたんですよ。ただ、ライブハウスに通ってくれる方の多くはCDも買って聴いてくれているので、まず「どうやって還元しようか」と考えた時に、サプライズじゃないですけど、CDのみの曲を1曲入れて、「一旦これで勘弁してください!」という感じになりました。この曲は“笑っておくれよ”の続きなんです。“笑っておくれよ”で書ききれなかったことを、ここに落としこんで、ラストでバーンとみんなが遊べるような感じにしました。

■音源は一発録りなんですか?

ヒナ 一発でみんなでガンとやりました。いい感じにいったし、やっぱり一発録りなので、勢いがありますよね。

■「i’ll be fine」は、「大丈夫」という意味ですが、これはヒナさん的に、言われたい言葉なんですか?言いたい言葉なんですか?

ヒナ どっちでもないんです。もう「各々が言っていかなきゃいけないでしょ!」という言葉です。毎日いろんなことが降り注ぐ中で、「明日こそいいことあるぞ」と思えないと、生き辛い世の中だと感じているので。「自分の口癖を“i’ll be fine”にしておかないと、次の日も頑張れないな」という気持ちで、この歌詞を書きました。

■とてもいい曲だと思います。さて、今作のEPを通して、ファンのみなさんに伝えたいことはなんですか?

ヒナ 前作もそうなんですけど、僕はやっぱり「CDを出させてもらえる」ということへの有難みをめちゃくちゃ感じています。CDプレイヤーを持っていない人が多いと思うんですけど、でもCDは買ってほしいですね。ジャケットひとつにしても、「前はこんなんにしたから、今回はこんなんがいい」みたいに、みんなでいろいろと話し合って作っているので、手に取っていただけたら嬉しいです。

シンノスケ 僕はいっぱい考えて書いたんで、ちゃんと聴いてね。(笑)

ケンノスケ いい作品になったと思います。僕は最近、ずっと車の中でこのEPを聴いているんです。本当、永遠に聴ける。(笑) 完成度が高いし、めっちゃ良いから。自分がこのバンドのメンバーじゃなくて、普通の人だったとしても「これは買っちゃうな」って思うくらい気に入っているんです。マジでいい作品なんで。あと、自分たちのライブも最高なんです。本当にカッコいいので、あとはみんなが出会ってくれるだけだと思っています。

タイキ 歌詞とかも見ながら聴いてほしいです。ライブではまた聴こえ方が絶対に変わってくると思いますので、いっぱいCDを聴いて、ライブにも来てほしいです。

■最後の質問になりますが、また長期のツアーが始まりますが、ここから始まるツアーで、EPのタイトルにちなみ「覚醒」させたいことはなんですか?

ヒナ 僕は今年、ボイトレに行こうと思っていて、まだ行けていないんです。ボイトレに行って、先生に僕の可能性をもっともっと引き出してもらって、覚醒したいです!

シンノスケ 僕は最近ギターの調子がめちゃくちゃいいんです。もう覚醒しちゃった感じがします。セッティングでいろいろと弄っていた時、今まで盲点やったところを変えてみたら「うわ、これや!革命や!」となりました。ぜひそれを聴きに来てください。

タイキ 最近はライブでイヤモニをつけるようになって、「覚醒しているな」と感じるようになりました。音の聴こえ方が全然変わるんです。うちのバンドって、中音(※ステージの中で聞こえる音)がデカいんですよ。なので、今までは自分のドラムの音が聴こえづらかったんですけど、イヤモニをしていると、遮音性もあるし、なおかつ欲しい音だけを拾ってくれるので、聴こえ方が全然違います。覚醒させたいというか、覚醒しましたね。

■それは間違いなく音にも影響してくると思います。ケンノスケさん、最後のまとめになっちゃいましたね。いかがですか?

ケンノスケ 僕は今、デリバリーのバイトしているんですけど、地図をめちゃくちゃ覚えられるという覚醒をしたいです。(笑)

■……このインタビューの最後が音楽についての話じゃなくて、「地図が覚えられるようになりたい」でいいんですか?

ケンノスケ ですよね……。(笑) 僕もそうは思ったんですけど、最近の自分は、音に関してすでに覚醒しちゃっているんですよ。ちょっと鼻が折れてから(※ケンノスケは鼻を負傷している)あんまり派手なことができてなくて。11月に手術が決まったから、それまではもうどれだけまた折れてもいいから、ライブで暴れたい……という覚醒をしたいと思います。

Interview & Text:安藤さやか

PROFILE
2019年に中学の友達同士で結成し、福岡県久留米市を拠点に精力的に活動を行っている。2022年に1stシングル『テイクミーアウト』、2ndシングル『青春』をリリース。2023年12月に『神様からの贈物 e.p.』をリリースし、東名阪福でリリースツアーを敢行。2024年4月に配信シングル『ウルトラロマンティック』をリリース。9月には福岡にて『宴 -EN-』を開催した。10月に2nd EP『革命 e.p.』をリリースし、全国12ヶ所にて『革命ツアー2024』を敢行。2025年3月に九州3箇所で『SAN』を開催。5月に配信シングル『輝き』をリリースし、東名阪福で『シャイニングツアー2025』を開催。8月6日にEP『覚醒少女 e.p.』をリリースし、全国21ヶ所にて『覚醒少女ツアー2025』を開催する。ありのままを綴ったまっすぐな歌詞と、圧倒的なライブパフォーマンスで未来を明るく照らし出してくれる。若者たちの心を掴む、新世代の青春応援歌。
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RELEASE
『覚醒少女 e.p.』

通常盤(CD)
NBDL-0115
¥1,000(tax in)

No Big Deal Records
8月6日 ON SALE