富田美憂 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

富田美憂『OveR』

■メイキング映像(初回限定盤のDVDに収録)を見るのも楽しみです。カップリングの“ねえ、君に”についてもお聞きしたいんですけど、“OveR”とは正反対のしっとりした曲ですが、ご自分で選ばれたんですか?

富田 そうですね。今年に入ってからレコーディングしたんですけど、「どういう曲がいい?」と言われた時に、「あったかい雰囲気でスケールの大きいバラードを歌いたいです」とお願いしたんです。さっき“OveR”は作家のお二人が私をイメージして作ってくれたと言いましたけど、“ねえ、君に”も、作家の遠藤直弥さんが「富田さんをイメージして書かせていただきました」と言ってくださって。

■同じ富田さんをイメージしていたのに、全然違う曲ができあがって。

富田 そうなんですよ。「こんなにも違うんだ!」と思って。それは面白いなと思いました。今まで“ジレンマ”とか、“インソムニア・マーメイド”とか、失恋の曲を歌うことが多くて。“片思いはじめました”も明るいけど、実は失恋の曲ですし。だから、幸せな曲というか多幸感のある曲にしたいなと思って、それを伝えさせていただいていたんです。

■この曲に出てくる「君」は、いろんな解釈ができるなと思ったんですけど、どういう曲として歌ったんですか?

富田 初めて聴いた時は恋の歌なのかなと思ったんですけど、歌詞を読み解いていくうちに、もっとスケールの大きい愛の歌なんじゃないかと思ったんです。明確に「好きだ!」と思っている人に向けている歌詞だし、恋人をイメージして聴いていただいても間違いではないんですけど、私は家族を思い浮かべながら歌わせていただきました。レコーディングした後は無性に家族に会いたくなって、おもむろに母に電話をしちゃったので、聴いてくださったみなさんも、家族とか、恋人とか、大事な人に「会いたいな」と思ってもらえたら嬉しいです。

■ちなみに富田さんは、最近犬を飼い始めたそうですけど。

富田 これ、みなさん言うんですよ!100%言われるんですよ。(笑)

■愛犬への歌なのかなと。

富田 それも合っています。(笑)

■犬も家族ですもんね。(笑) 昨年のアルバムもいろんな富田さんが出た作品でしたけど、今回の“OveR”と“ねえ、君に”も全然声色が違うじゃないですか。どういう声で歌うのかは、どうやって決めているんですか?

富田 曲によって歌い方や声色を変える作業はかなりやらせていただいていて。たとえば、“片思いはじめました”は「少女漫画みたいな曲が歌いたいです」と言ったので、いわゆる声優アーティストっぽさみたいなものを出して、かわいらしく歌ってみたり、“ジレンマ”はズバ抜けて大人な曲なので、他の曲よりも声を太くしてみたり。同じバラードでも、“ねえ、君に”と“足跡”と“インソムニア・マーメイド”では、全部声色や歌い方が違いますし。ほぼ全曲、違うアプローチをする中で、“ねえ、君に”も今までにない歌い方になっていると思いますし、ここまで軽やかな声でバラードを歌ったのも初めてだったと思うんです。私はCDを1枚出すごとに、違った富田美憂を見ていただきたいと思っているんですけど、今回もそれができたかなと思います。

■“ねえ、君に”は、家族を思い浮かべたら自然とこういう声になったんですか?

富田 なっていました。なんとなく口角上げめで歌っていたと思うんですけど、自分ではその意識がまったくなくて。終わった後にスタッフさんから「ここまで開けた感じは“Present Moment”以来じゃない?」と言われて、「確かに」と思ったんですよね。

■事前にいろんな声色を試して、今回はこの声で歌おうと決めたわけではない?

富田 そうですね。事前に考える曲もあるんですけど、“ねえ、君に”は自然に出ました。

■ちなみに今まででいちばん素に近い歌声って、どの曲なんですか?

富田 どれだろう……?「新しいのが出た」と思うのは“ジレンマ”、“かりそめ”、それと今回の“OveR”あたりだと思っていて。“ねえ、君に”は、楽譜通りに歌うというよりは、「ありがとう」というフレーズもありますけど、大事な人へ向けての気持ちが自然にポロっと出たみたいな、言葉を紡ぐみたいなイメージで歌っていたので、そういう意味では素に近いのかもしれないです。

■その時の感情によって声が変わるタイプなんですか?

富田 どうなんでしょう。普段からいろんな声を出しているから、どれが自分の声か正直わからない。(笑)

■声の仕事をしているとそうなっちゃいますよね。(笑) 今回のシングルを作り終えて感じたことはありますか?

富田 まずは1年前からレコーディングしていたものがついに形になって達成感が大きいです。それと私はギリギリ10代の最後にデビューさせていただいて、今回がCDとしては5枚目で、その間に『アニサマ』とか、ワンマンライブとかがあって、この2年間は本当に時間以上の経験をさせていただいたなと思うんです。今回のシングルも今までの経験があったからこそ、作ることができた作品だと思っているんですけど、ライブのタイトルもアルバムのタイトルも『Prologue』だったので、ようやくアーティスト・富田美憂の第1章に入った感じがあります。

■これまではプロローグだったと?

富田 はい!私、おばあちゃんになっても歌うつもりなので、すでに先のことを考えていて。これから自分にどんな引き出しが増えるのかが楽しみですし、今回『デート・ア・ライブ』という大きな作品のオープニングを歌わせていただくことで、今まで私の歌を知らなかった方に届く機会にもなると思うので、私を見る目が増えるという点でプレッシャーも感じつつですけど、より多くの方に私の作る音楽を届けられるようにがんばりたいなと思っています。

■富田さんは計画的にアーティスト活動を進めている印象があるんですけど、ここまで予定通りに計画を達成できている実感はあるんですか?

富田 あります。本当にスタッフのみなさんが私のやりたいことを実現しようとしてくださるんですよ。「私、こういう曲を歌いたいんですよね」とか言うと、すぐ実行してくださいますし。ワンマンライブのMCでも言ったんですけど、ソロアーティスト活動ではあるけど、実はソロではなくてチームなんですよね。あくまでチームを代表して私がステージに立っているだけという認識なので、私だけじゃなくてみなさんがやりたいと思っていることも、一緒に叶えていけたらという気持ちが強くあります。

■第1章の富田美憂は、何歳まで続くんですか?

富田 何歳だろう!?おばあちゃんまでやるとしたら30歳までとかなのかな?

■とりあえず今年中に終わるとかではなさそうですね。

富田 そうですね。とても年内だけではできないくらいやりたいことはいっぱいあるので。20代という年齢だからこそ歌える音楽もあると思いますし、もっと年齢を重ねて大人になったからこそ歌える音楽もあると思いますし、その時々にしか作れないものを楽しみながら作っていきたいです。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
1999年11月15日生まれ、埼玉県出身の声優・歌手。第1回〈アニ☆たん!〉ファイナリスト、〈2014声優アーティスト育成プログラム・セレクション〉グランプリを経て、2015年に声優デビュー。翌年にアニメ『アイカツスターズ!』の虹野ゆめ役で初主演を果たす。以来、『ガヴリールドロップアウト』『となりの吸血鬼さん』『メイドインアビス』などでメインキャストを担当。『ぼくたちは勉強ができない』の声優ユニット“Study”でも活動。2019年にシングル『Present Moment』でソロアーティストデビュー。2020年6月に2ndシングル『翼と告白』、11月に3rdシングル『Broken Sky』をリリース。2021年6月には1stアルバム『Prologue』をリリース。
https://columbia.jp/tomitamiyu/

RELEASE
『OveR』

初回生産限定盤(CD+DVD)
COZC-1862〜1863
¥2,189(tax in)

通常盤(CD)
COCC-17956
¥1,430(tax in)

日本コロムビア
4月20日 ON SALE