tonari no Hanako VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

2代目Hanakoを迎えて描く、叶わなかった恋愛模様。

tonari no Hanakoがメジャー4作目となるシングル『半人前の恋』をデジタルリリース。作詞・作曲とボーカルを務めるame、映像ディレクターのsobue、ビジュアル面を担当するHanakoから成るユニットのtonari no Hanako。楽曲のみならず、映像やビジュアルを含めて物語を描写することに長けているユニットだが、そんな彼女たちが今回リリースするのは、夏の切ない恋を描いた“半人前の恋”。ameが実際に目の当たりにした、感情が揺れ動くひと夏の様子を瑞々しく歌詞に落とし込んだ楽曲となっている。
今回は楽曲制作とボーカルを担当するameにインタビューを決行。本作品よりHanako役を2代目にバトンタッチした理由や、tonari no Hanakoが目指す作品像について、そして“半人前の恋”が描くドラマチックな恋について、たっぷりと語ってもらった。

■tonari no Hanakoはユニットの中にビジュアルを担うHanakoがいることが最大の特徴だと思いますが、まずはユニットにビジュアル担当を加えた経緯を教えてください。

ame 元々、音楽を純粋に聴いて欲しい、純粋に楽しんで欲しいという気持ちがあったんです。「私が歌っています」という形で私が前に出てしまうと、tonari no Hanakoの音楽にビジュアルのイメージもついてきてしまう気がして。客観的に見た時に、私自身のビジュアルは自分の作りたいtonari no Hanakoの世界観に合わないと思ったので、顔を出さないで活動することに決めました。ただ顔を出さないだけでなく、tonari no Hanakoの世界観やイメージを表現してくれる方に加入してもらって、その方に表に出てもらうというのもいいんじゃないかと、薄々は思っていたんです。そんな時、メジャーデビューのタイミングでクラウンさんにビジュアル担当を入れるご提案をいただいて、正式にメンバーとして迎え入れることになりました。

■最近では素顔を出さないアーティストも多いですが、ビジュアル担当をメンバーとして入れるというのはあまりなかったですよね。

ame そうですね。でも音楽グループのメンバーも、楽器担当だけである必要はないと思っていて。tonari no Hanakoには映像制作担当のメンバーもいますし、それなら女優さんやモデルさんがメンバーにいてもいいんじゃないかという思いはずっとありました。あくまでも「クリエイティブを軸にして、作品が一番良くなるためにどうするか」という発想なので、こういう形になったのかなと思います。

■音楽作品というだけでなく、もっと広い視点で作品を捉えているんですね。

ame そうです。私自身、元々音楽をやっていた人間ではなくて、どちらかというと美術が好きだったんです。目から入る情報にもすごく興味があって。今の時代の音楽って、映像と一緒に音楽を楽しむことが多いじゃないですか。私の中では音楽と映像は切り離せないものなので、音楽以外の要素も含めてこだわりたいと思っています。

■曲を作っている段階から視覚的なイメージが浮かんでいることが多いんですか?

ame そうですね。色とか風景とか、そういうものからイメージを膨らませて歌詞を書くことが多いです。自分の頭の中にドラマみたいなものを描いて、それを文字にしていく感覚です。

■先程も美術の方が得意とおっしゃっていましたが、現在の音楽活動のルーツとなるものを挙げるとすると、美術方面の作品などになるのでしょうか?

ame それが難しくて。美術をがっつりやっていたわけでもないんです。なので、ルーツがないことがルーツになっているような気がしています。白紙から作ってきた気持ちはすごくあって、「こうでなければいけない」みたいなものがあまりなかったので、今のような柔軟な編成になったのかなと思います。

■ちなみに、ameさんが音楽を始めたきっかけはなんだったんですか?

ame 高校の頃に友達がバンドをやっていたのを見て、私もやりたいと思って、大学のバンドサークルに入ったんです。当時は楽器が何もできなかったのでボーカルとして入ったんですけど、超音痴で。(笑) でもそこで出会った仲間たちがすごく面白くて、めちゃくちゃ楽しかったんです。卒業した後、「人生をあの楽しかった感じで埋めたい」という気持ちになってしまって。音楽をやるなら若いうちしかできないと思って、勉強するところからまた始めてこの業界に来ました。なので、今自分がここにいることにもちょっとびっくりしています。(笑)

■最初は歌も歌えなかったとおっしゃっていましたが、どのように克服していったんですか?

ame たくさんのボイストレーナーの先生を渡り歩きました。でもどこに行っても上手くならなかったんです。ボイストレーナーの先生は、歌の職業についている歌が上手い人たちに教えているので、私くらい歌が上手くない人間に歌を教えるのってすごく難しいみたいで……。(笑) でも諦めずにいたら、すごく教えるのが上手いという先生を紹介していただく機会があって。その方に「歌は下手なんですけど、こういう曲を書いています」ってオリジナル音源を持って会いに行ったら、「歌詞が面白い」と言ってくださって、そこで習えることになりました。それからぐっと伸びた感覚があるので、すごく感謝しています。

■それこそ、tonari no Hanakoにameさん以外のボーカルを入れるという選択肢もあったのでは?

ame 実はそれも考えていました。1stEPの『切ったら、空』のリリースの時はボーカリストを探していたんですけど、中々自分のイメージにぴったりな方にお会いできなくて……。結局、イメージに近いものを自分で頑張って歌ってみようと思ってレコーディングしたんです。それを元に、次の作品からは「こういう雰囲気で歌ってもらえませんか?」という形でやっていこうと思っていたんですけど、『切ったら、空』がありがたいことにCDショップ大賞をいただいて。いろんな人から「お前が歌った方が良い」と言って頂いたので、結局は他の人に頼むことができなくなってしまいました。(笑) 今の自分の能力だと、私がイメージするものにはまだ届かないんですけど、本当にちょっとずつ近づいている手ごたえはあるので、楽しみながらやっています。

■今回の新曲“半人前の恋”は、どんな思いやコンセプトから生まれた曲なんですか?

ame 夏の曲を作りたかったんです。自分の過去の経験をいい塩梅で入れながら曲を作ることが多くて、今回も印象に残った夏の思い出を入れています。以前、夏に友達10人くらいで島に遊びに行ったことがあるんです。その時に泊まった宿が、屋上に出られる場所だったので、みんなで寝っ転がって星を見た思い出があって。そのままそこで朝まで寝る人もいたりして。(笑) それがすごく楽しかったんですよね。その思い出を書きたかったのと、その仲間内で恋をした子がいたんです。でも仲間内だし、口に出してしまうとその関係を壊してしまうかもしれないから、「このままでいい」って、結局想いを伝えないまま大人になって。私は周りの人がどういうことを考えているかを感じとるのがすごく得意なタイプなんですけど、きっとその2人はお互いに想い合っていたと思うんです。でも2人ともすごく優しい子だったから、「仲間の関係を壊したくないから」という理由で自分の想いを言わなかったし、言わせなかった。すごくもどかしい気持ちもありましたけど、他人が口を挟めることではないじゃないですか。

■本人たちがそう決めたことですからね。

ame そうなんです。私自身も人に本音をぶつけたりするのが得意なタイプではないので、場を乱す可能性のあることは全部飲み込むし、そういう経験は誰しもあると思うんです。でも、そうやって飲み込んできたものって、時間が経てば勝手に消化されるわけではないと思っていて。「何年か経って、もしあの2人が出会ったらどうなるんだろう?」とか、いろいろ考えた気持ちを曲にして歌っています。

■すごく切ないお話ですね。

ame 「どうにかならなかったのかな……?」って思いますけどね。口にしないことが優しさだという考え方の人もいると思いますし。その優しさがずっと成仏できずに残ってしまうと思うので、それを成仏させるための曲です。

■編曲はボカロPとして活動している、内緒のピアスさんが担当されていますね。

ame 元々内緒のピアスさんとは知り合いで、“半人前の恋”は彼のアレンジが合うんじゃないかと思って、私から推薦しました。リズム・ビートに対するリクエストや、ベストな転調パターンを探ってもらうなど、いろいろ無茶ぶりをしたんですけど、すごく良い感じにしてくださって。ありがたいですね。

■歌詞の言葉選びには、すごく繊細な感情の動きを感じます。

ame 言葉にならないものを歌詞にするのが好きなんです。だからこそ、歌詞にする意味があると思っていて。繊細で小さなものほど描くのって難しいんですけど、でも見落としてしまいそうな、言葉にできないモヤモヤが言葉になった時に、その気持ちが成仏するんじゃないかと思っています。なので、そういう繊細なものを歌詞に詰めるということは徹底しています。