vivid undress VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

vivid undress『愛のゲイン』

kiila(Vo)、yu-ya(Gt)、rio(key)

誰に何を思われても、私は私だというスタイルで書けました

メジャー3作目にあたるvivid undressの2ndミニアルバム『愛のゲイン』が素晴らしい。鍵盤奏者を含む5人のアンサンブルはカラフルかつ優美に溶け合い、ポピュラリティをグッと高めた渾身の一枚と言えるだろう。「愛と色彩」という今作のテーマを踏まえた極彩色のバンドサウンドを浴びていると、脳内に鮮やかな心情や景色が浮かんでくる。バンドとして「ラブソング」と真正面から取り組んだ作風について、kiila、yu-ya、rioのメンバー3人に話を聞いた。

vivid undress『愛のゲイン』

■今作は「愛と色彩」をテーマに制作したそうですね。前作以上にポップ性を高めつつ、1曲1曲のバリエーションも豊かな一枚に仕上がりましたね。

kiila もともとテーマにしていた「愛と色彩」はしっかり表現できたんじゃないかと思います。愛と一括りに言っても、恋人だけじゃなく、家族愛、ペット愛、自分を愛することだったり、様々な愛の形があるので、それを表現できたと思います。

■今回のテーマはいつ頃に浮かんできたものですか?

kiila 毎回テーマは決めずに、その時のマインドでやっていたんです。でも前作から変わっていきたい、前に進みたいという気持ちが生まれて…。これまでラブソングを前面に出した作品を作ったことがなかったんです。アルバムを作る際は挑戦的な意志を持っていたいので、今回は愛をテーマにすることが私の挑戦でした。そうすることで新境地が拓けるかなと。

■お二人はこのテーマを聞いた時にどう思われましたか?

rio 前作から曲の節々にその片鱗は見えていたと思うんです。バンドの立ち上げ初期は、どうしても内に向かう歌詞だったけど、今はkiilaちゃんが本当に歌いたいことを表現できるようになっているのかなと。愛をテーマにしたいと言われた時は、腑に落ちるところがありましたから。自分は色彩担当だと思っているので、作品を追うごとにキーボードもド派手になっていっていますからね。

■今作のサウンドはまさにそうですね。

rio はい。過去の自分からは考えられないことで…。

kiila 隙間産業だったもんね?

rio そう!(笑) ギターをメインに出すというコンセプトがありましたから。だけど、自分の中で前作ぐらいから挑戦してもいいかなと思い始めたんです。

■yu-yaさんはいかがですか?

yu-ya 自分は暗い曲を作ることが多かったんですが、開けた曲を作りたいと思い、コロナ禍で生活リズムの改善が始まり、今作自分のクレジットが入った曲はそういう雰囲気に作れたと思います。僕の中で愛がテーマと言うと、明るく開けたイメージだったんですよ。

■前作は引き算を意識されていましたが、今作はkiilaさんのヴォーカルはもちろん、演奏も随所に攻めたフレーズも散りばめられていて、歌とアンサンブルのバランスも絶妙だなと。

kiila 初期の段階では自我の強いメンバーが集まったので、音でバチバチ演り合う感じだったけど、それから引き算の美学を覚えて、隙間ができることによって各々の抑揚も露わになってきたんです。それこそrioさんが入る隙間も増えてきたから。

■今作はメンバー5人の色合いが1曲の中にきちんと集約されているし、バンド感はとても高まっていますよね。

yu-ya ようやく慣れてきました。引くだけじゃなく、ここは出ようかとか、そういうことも考えられるようになったから。

■1曲の中で何を伝えたいのか、それが明確になってきたのかなと。

kiila そうですね。例えば料理でおいしい魚や野菜があっても、調味料がたくさんあると、素材の良さは活かされないから、音楽でもそういうことなのかなと思って。綿密に打ち合わせはしていないけど、それぞれが出るところは出て、譲り合うところは譲り合って、その意味でも成熟したと思います。

■今までラブソングを作品テーマに掲げなかったことが不思議なくらい、バンドカラーにマッチしていると思います。

kiila 自分の気持ちがそこに追いついてきたのかなと思います。必死に生きてきたので、必死な歌詞しか書けなかったけど、ようやく手を差し伸べられるような自分になってきたんじゃないかと。

rio いい意味で歌詞にも隙が出てきたと思うんです。聴き手もいろんな色を付けられるというか、それも大事ですからね。

■今作に先駆けて、3月には3週連続配信シングルリリースを行いましたが、あれはどういう経緯で?

kiila 配信で先行して出したいという話はしていたんですよ。

rio ちょうどコロナでCDショップになかなか行けない時期にミーティングを重ねていたので、それは自分たちから意見を出しました。

kiila アルバムの中から3曲連続で配信リリースして、その後にアルバム発表という流れに繋げようと。

■第一弾が“夢見る2人”ということで、ダンサブルでお祭り感にも溢れた曲調ですね。

kiila 私もこの曲は“エレクトリカル・パレード”と呼んでいましたからね。それこそお祭りですね。

rio でもこの曲は難産だったんですよ。いろんな人の助けもあり、パレードのように目の前の景色が小気味よく変わる展開で、自分でも面白い曲ができたなと思います。最初はAメロとクラップしか作っていなかったけど、こんなに大サビちっくなものが乗るとは思わなくて…作っていくうちに進化していきました。

■第二弾の“R-15”は歌詞を含めて、甘い世界観が印象的ですね。

kiila 作っている時は甘い感じとは思っていなくて…人間の内側に秘めた欲望みたいなものを表現したくて、歌詞も割りと攻めた内容にしました。かわいらしい声色で歌っているけど、アダルトな雰囲気もあるし、曲名のとおり中高生ぐらいが一番欲が強いというか。少女性のある歌い方だけど、欲望を内に秘めているという。

■その内側に秘めた欲望とは?

kiila 愛情ってキレイなものばかりじゃないから。人を思う気持ちは軽いものじゃないというか、重いものだと思うんです。「あなたのことを想っていますよ」と歌詞で表現しつつ、狂気的な愛を楽器隊にはサウンドで表現してもらいました。

■曲の後半はアンサンブルが激しくなりますからね。

kiila ダークファンタジーというテーマを掲げて、それをみんなに表現してもらおうと。

yu-ya 初め、最後のギターソロは間奏にあるようにスペーシーな感じだったけど、「もっとぶっ壊れて欲しい!」と言われたので、ああなりました。

kiila 最後に向かって破滅する展開にしたかったんです。見事にやってくれました。

rio vivid undressの新境地だなと。過去イチで自分の思い通りにやれました。浮遊感漂う感じが似合うなと思い、この曲のトラック作りはかなり没頭したんです。ピアノも深すぎるほどのディレイをかけたり、風のような音やモールス信号も入れたりして、すごく楽しかったですね。(笑) 世界観をガンガン作ってやろうと。