Wakana表現者としての新たな開花宣言
まさに「Wakanaの開花宣言！」とでも副題をつけたいアルバムだ。1stソロアルバム『Wakana』は、かなり彼女自身のアイデンティティが詰まった1枚となった。正直、Kalafina時代のWakanaはプロデューサーの下、3人組だったこともあり、どこか与えられた歌を最大限に表現する歌い手的な印象であった。対して今作はそれらとは違った類い。自身が興味を持ったり、かねてから組んでみたかった方々に作曲してもらい、作詞はほぼ自身で手掛け、その収録各楽曲もかなり幅広くバラエティに豊んでいる。中でも特筆すべきは自身が得意とするミディアムテンポへのこだわりと自作の歌詞だ。歌詞に関しては、提供してもらった各メロディからインスパイアされ描かれた世界観が重視されたものばかり。それが故にメロとの絶妙なマッチングはもとより、より自身の歌として入り込み、感情移入や歌の表情づけへと結びついた感がある。そう、アーティストWakanaは、新たにここから開花していく！
■1stソロアルバムを聴かせていただきましたが、正直ここまでバラエティに富んだ楽曲内容になったことに驚かされました。
Wakana 確かにおっしゃるとおりです。私自身、楽曲を1曲1曲録っていったこともあり、作品の全体感は、曲が全て完成し、それを並べてみて改めて実感したんです。「うわっ、こんなにバラエティに富んでいたんだ!?」って。
■それらの中でも、アップテンポな曲が1曲も無かったのも意外でした。
Wakana 求められていると察してはいましたが、元々私、アップテンポな曲が得意ではなかったので、まずは今の自分に出来ることを詰め込むことが優先でした。それでこのような選曲に。結果、自身の作詞曲も沢山収めさせていただけて。
■それにしても自身としてもかなりチャレンジだった楽曲もあったんじゃないですか？聴いていて驚いた曲も何曲かあったもので。
Wakana その感想は嬉しいですね。とは言え、私の中ではどれも自然と受け入れられる曲ばかりでした。おかげさまで、全体的にかなりふり幅の広いアルバムになってしまいましたが。(笑)
■中でも特に3曲目の“瑠璃色の空”には驚かされました。「こんなシティポップ的な曲も歌うんだ!?」って。
Wakana “瑠璃色の空”は、昔のノスタルジックな雰囲気のある曲だと捉えています。私の中では新鮮ですが、聴く方によってはこのような曲がすごく懐かしいという方もきっといらっしゃるでしょうね。
■ご自身的には「このような作品を作りたい」的なビジョンはあったんですか？
Wakana ところがそういった想いが当初から特にはなくて。「自分の声をキチンと伝えられる。そんな1枚にしたい」それぐらいでした。あと、ここまで作詞もさせていただけるとは思ってもいませんでしたし。自分へのギフトのようなありがたいアルバムになりましたね。
■そうそう。アルバム中、ほとんどの楽曲でWakanaさんが作詞されているのも意外でした。
Wakana 書き始めだからが故に、ガーッと沢山書けたんでしょう。(笑) これから言葉を沢山綴っていく中で、悩んでいくこともどんどん増えていくでしょうし…。これからは「歌詞が浮かんでこない」や「パターンが決まってしまった」など、スランプになる時期がくるかもしれないですね。そう考えると、今が一番歌詞を書いていて楽しい時期なのかも…？(笑)
■今だとカラーもないし、イメージもないし、固定観念もないぶん、何をテーマに書いてもいいでしょうからね。
Wakana そうですね。そのキャンバスも今のところ真っ白ですから。これからも自分ではリミッターをかけずに、且つ書くことの楽しさは忘れたくないです。
■それにしても、ここまで多くの曲で作詞をなされるとは想像もつきませんでした。せいぜい数曲だろうと思っていましたが、実際、収録曲のほとんどの作詞をご自身で手掛けていますもんね。
Wakana そうなんです。歌詞を書き始めたばかりなのに。(笑) 前作のシングルで初めて作詞をさせてもらいましたから。当初は分からないことだらけで、緊張しながら書いていました。(笑)
■作詞される際、どこかメロディありきの印象があります。
Wakana 今のところメロディに対する想いや訴えてくるものを大事に書いています。その方法しかまだ知らなくて。私が今まで歌に向き合ってきた際も、メロディに対する想いが一番強かったですから。後から歌詞に想いを馳せていくタイプなんです。なので、作詞の際は私が今こう感じているからこう書こうではなく、曲が見せてくれるもの、そこを書くだけでした。それは何曲か書かせてもらううちに気づいたことで。
■では、メロディが呼んでいる景色や光景、物語みたいなものに導かれて歌詞を書いていったと？
Wakana まさしくそうです。曲が連れていってくれるというか、誘ってくれるというか。
■どの曲も共通しているのは、主人公がポツンとしているところかなって。(笑)
Wakana そうですか？ポツンとしていますかね？(自分の今作の歌詞をもう一度全てサラッと見直して)ホントだ！ポツンとした楽曲が多い。(笑) でも“流れ星”は二人ですよ。
■でもこの“流れ星”にしても、世界にたった二人ぼっち感がありますよね。
Wakana 確かに。それが自分じゃなくても、誰か一人の個人にスポットを当てて書いているものが多いかもしれませんね。あなたと私の歌というのはごくわずかで、自分とその想い出だったり、これからへの想いがほとんどですから。
