■この曲は作詞にアサミサエさんのお名前も入っていますが、どうやって作詞していった感じなんですか?
玉屋 本人の歌うパートは本人が書いたという。(笑) なんの説明も無しに「歌詞書いて!」って言いました。(笑)
アサミサエ そうなんです!(笑) 最近は歌入れのレコーディングの時もだんだん雑になってきて、「ひとりでできるよね?」みたいな感じで、立ち会ってもくれなくなってきちゃって……。加入した時はすごく一生懸命ディレクションしてくれていたのに、最近は「もうわかるよね?ニュアンスとかもわかるでしょ?」みたいな感じで、「出来たら呼んで!」っていなくなっちゃうし。(笑)
■きっともう信頼関係が出来てきているから、任せてくれているんじゃ……?(笑)
アサミサエ でも歌詞くらいは書いてくれるんじゃないかと期待したのに。(笑) 仕方ないから自分で書いたんですけど、この曲は「意味のないことを言葉にした」という感じです。これは実体験から書いたんですけど、前に玉屋と夜遊びをした時に、すごく楽しくなっちゃった時があって、その時の自分の脳内を書き起こしたら、この歌詞になった感じです。(笑) 「全部出し切ろう」と思っていた疾走感と、ブレーキの効かない感じと、全部出し切った自分を俯瞰で見ている感じを書きました。あの夜は楽し過ぎて、このままでは終わりたくないなと思って、最後には意味なく筋トレなんかをし始めちゃって。(笑) そうしたら次の日はすごく寝坊しちゃって、待ち合わせに遅刻して置いていかれちゃって……。でもそれすら気持ちいいなって感じていたので。(笑) それを曲にできて良かったです。(笑)
■すごい経緯で作られた曲だったんですね。(笑) この曲は打ち込み主体の楽曲でしたが、こちらはどういったイメージで作られた感じですか?
玉屋 この曲調の感じは、定期的に∴560∵が「こういう曲がやりたい」というリファレンスをいろいろと送って来てくれているので、そういうところからもつまみつつ、もっと打ち込みでバンドの曲も作れるようになっていけたらいいなと思って。この曲はミックスも自分でやったんですけど、打ち込みの曲の場合は、結局自分でミックスもやるのが一番理想形に近づけるので、そういう勉強も兼ねてやりましたね。それであとはベースだけ∴560∵に弾いてもらって、全部宅録で完結させた感じです。
■∴560∵さんがいろいろとリファレンスを送っているとのことですが、∴560∵さんはいつもそういった曲のインプットはどうしているんですか?
∴560∵ どういうところからだろうなぁ?でも特にそんなに意識していないことが多いですね。探そうと思って音楽を聴くこともありますけど、だいたいは自分が好きだなと思う曲だったり、気になるなという曲だったり、自然と耳にしているというのが自分のインプットとしては一番多い気がします。元々自分の中にある好きが反応する曲の中から、Wiennersに活かせそうだなとか、取り入れたいなと思うものをチョイスして送っている感じです。
■なるほど。玉屋さんは∴560∵さんから送られてくるもの以外のインプットはどうしていますか?
玉屋 僕も音楽は好きなのでいろいろな曲は普段から聴くんですけど、最近すごく思うのは、僕は音楽以外だとサッカーとお笑いくらいしか興味がないんですけど、そのインプットというところで考えると、感動できればなんでもいいと思うんですよね。どんなことをしていても感動できないとなんのインプットにもならない気がするんです。例えば外に出て、空がめっちゃ綺麗だったらそれだけで感動するし、それがインプットになるんですよね。調子が悪ければなんにも感じないし、逆に調子が良かったらなにしても感動するし、インプットになるんです。だから、できるだけ感動できるような状態でいるのがいいんでしょうね。でもリファレンスを送ってもらえると、自分では辿り着けない意外性があるものに出会えるし、感動できるので新鮮ですよ。
■ある意味インドでの体験もきっとそういう事だったんでしょうね。
玉屋 そうですね。インドはなにが起こるかわからないし、立っているだけで事件が起こりますからね。(笑)
■アサミサエさんのインプットはどうしていますか?
アサミサエ それでいうと、私は幸せのハードルがめっちゃ低くて、ハンバーガーにアボカドがトッピングできるだけで感動するし、なんでもないことで常に楽しめているし、感動できるのがいいのかも。(笑) むしろ、なにもない空っぽの状態で常にいたいと思うんですよ。なにかあった時にいっぱいに入れられるようにしておきたいというか。音楽に関しても、どちらかというとクリエイティブなことよりも表現する方が得意なので、玉屋が作ってきた曲をどうやって表現するのが楽しいかなとか、ライブでどうやってアレンジしようかなって考えている方が好きだし、そっちのアウトプットなので、そんなにインプットは意識していないかも。前に松本隆さんが「歌詞を書く時にどうしているか」というインタビューを読んだ時に、「とにかく不自然なことはしない」と言っていて、それこそ歌詞を書くために映画を観たりとか、本を読んだりとかするんじゃなくて、「ただ空を眺めて雲の切れ間から言葉が浮き出てくるのを待つ」みたいな感じだったんです。それが恐れ多いですけど「わかる!」って思いました。(笑) だから、自分から自然とにじみ出るものというか、そういうのを目指したいので特にインプットはしないです。
■ではある意味、“おどれおんどれ”の歌詞をいきなり書いてと言われて、その場で歌詞を書いてレコーディングしたというのは、願ったり叶ったりの状況でしたね。(笑)
アサミサエ そうかも知れないですね。(笑)
■玉屋さんも実はその辺のことがわかっていて、現場でいきなりオファーしたのかもしれませんね?(笑)
玉屋 実はそこまで考えてプロデュースしています。(笑) でももし僕が歌詞を書いていたら、立ち会っていたかもしれないですね。
アサミサエ 絶対にそんなことないでしょ!(笑) 寂しいけどきっと信頼して任せてもらえているんだってことにします。
■今作は2曲ともめっちゃ早口で歌録りは特に苦労しそうでしたけど、今作のレコーディングで大変だったことや、自分なりに何か工夫したことなどはありましたか?
玉屋 歌は綺麗すぎずに歌うというか、サビに関しては半分ブチ切れているくらいの感じで歌って、憂さ晴らし感が出ればいいなと思ってレコーディングしましたね。でもこの曲はハモとかコーラスが多かったから、そこは単純に大変でした。それ以外のギターとかはそんなに難しいテクニックとか使ってないし、楽曲の構成自体で面白みを出しているので、僕がやっていることはすごくシンプルですね。
アサミサエ 私のシンセに関してはいつも縫い物の作業みたいな感じなので、合うところに上手く入れるというか、そんな感じですね。サビのところとかは隙間から「フゥーーーー!」ってやるような感じで入れているし、私は割と抽象的なイメージでフレーズを作っているので、そんなに難しかったところはないです。Wiennersのシンセは、リフは派手で、歌に入るところは持ち上げる感じとかなので、照明さんみたいな感じですかね。(笑) でも今回の“TOKYO HOLI”は風が吹いている感じをイメージしました。
∴560∵ ベースとしてはレコーディングはスムーズでしたよ。どちらの曲も迷いなくやれたし、明確に「こうしたい」というのがあったから、音作りとかも迷うことなく出来ました。すごく思い通りの気持ちの良いレコーディングでしたね。
■今回の“TOKYO HOLI”のMVはどんな感じになりそうですか?
玉屋 神羅万象全部入ったような感じになっています。すごいいっぱい入っている感じ。でもここまで何やってるかわからないMVも珍しいかも。(笑) CGを合成するのでグリーンバックで撮影したから、後ろにどんな映像がくるか、自分らがどう使われるかもわからずに撮影していましたからね。(笑)
アサミサエ 私なんかもう全然記憶がないもん。この日のために買ったすごく高かったバックルが壊れたことしか覚えてない。(笑) なんかジャンプした時に飛んでっちゃって。最近私に破壊神が取り憑いているみたいで……。“TOP SPEED”の撮影の時もキーボードスタンドが壊れちゃったし。
玉屋 あぁそうだったね!しかも同じ撮影スタジオじゃん!
アサミサエ だから最近私、いつもアロンアルファを持ち歩いてるもん。(笑) 撮影だからってテンション上がって、いつもよりエネルギーが出ているのかなぁ?
■今作を引っ提げての東阪クアトロ2マン企画もあるそうですが、ライブに向けての意気込みもそれぞれ聞かせてください。
玉屋 今回はやりたかった二組とライブできるのが嬉しいですね。対バンライブは今回は自分たちが主催でやらせてもらうんですけど、ちゃんと毎回意味のある対バンになっているのが嬉しいんですよ。認められているという感覚もあるし、仲間に入れてもらえている気もするし。ひとつひとつ濃いライブにしたいと思います。今回はキュウソネコカミとはキュウソネコカミとしか作れないライブになるだろうし、フレデリックとは、ほぼ初めての対バンなので、どんなライブになるのかすごく楽しみです。最近はライブが圧倒的に楽しいんですよ。これだけ感動しているウチらが出す音は絶対に楽しいと思うので、安心して遊びに来てください。
アサミサエ 最近はワンマンライブが多かったので、久々の2マンライブでめちゃくちゃ楽しみだなと思います。でも『TOKYO HOLI』のライブを経て、自分たちのライブの熱量もそうなんですけど、すごく彩度が上がった気がしていて、言葉では上手く伝えられないんですけど、ぜひそれを実際に体感しに来てもらいたいです。ずっと今までやってきた曲たちも色濃くなったというか、さらに違う聴こえ方がすると思うし楽しめると思うので。それに「いろいろな曲をやろう」と話しているので、セットリストも楽しみにしていてほしいです。
∴560∵ 僕は今回のライブは、実質『TOKYO HOLI』のレコ発ライブだと思っているので、みんながこの曲を聴いてライブに来てくれると思っているから、ライブ会場がどうなるのか今から楽しみですね。
■今年もあと4ヶ月を切りましたが、今年中にやり遂げたい目標を教えてください。
∴560∵ 僕はもう腹筋を割りたいですね。着実に毎日トレーニングしているので。(笑) 年内には納得のいく形にしておきたいです。
玉屋 まずは気になっている漫画を全部読みたいですね。あとは名古屋グランパスを一桁台の順位に押し上げたいです。あと、サッカー日本代表のワールドカップ予選も応援しなきゃだし。(笑)
アサミサエ 全然自分の目標じゃないじゃん!(笑)
玉屋 いやいや、サポーターの応援も大事なのよ!ウチらだってWiennersのサポーターたちの応援によって、来年以降の活動も変わってくるからね。みなさん応援よろしくお願いします!
アサミサエ じゃ、私の目標はWiennersのサポーターたちの声で窓ガラスを割りたい!(笑)
■それも自分じゃないですね。(笑) それくらい熱狂的なライブがやりたいということでいいですか?(笑)
アサミサエ そうです!これを見てくれた人たちにかかっていますからね!(笑) お願いします!
■ちなみに前回の取材の際に、反射的な考え方の癖を無くすためにも、「これからは毎年インドに行こうかと思っている」と話していましたが、冗談ではなく続けていきそうですか?
玉屋 もう毎年3月くらいにイベントをやって、その後1、2週間くらい休んで海外に行けば、曲ができて帰ってこられるってわかったので、インドとは限りませんが、どこかの国に行こうと思っています。(笑) 次はブータンあたりがいいですかね。
■お二人もご一緒に?
∴560∵ いや……その予定はないです。(笑)
アサミサエ 私はハワイがいい!それか沖縄!(笑)
■次の曲はウクレレを弾かないと。(笑) では最後に読者に向けてそれぞれメッセージをお願いします。
玉屋 最近は好きなものに感動している自分がいるので、なんか「元気が出ないな」と思ったら、「元気を出そう」とかじゃなくて、なにか感動できるものを探したらいいと思うし、そういう音楽をWiennersはやっているので、ぜひ『TOKYO HOLI』を聴いてもらえたら別の感情が動くと思うので、ぜひ聴いてみてください。これからもそういう曲を作り続けていきますので。
アサミサエ とにかくどんな時も大きな声でハキハキと頑張りましょう!
∴560∵ 元気がなかったら走ったらいいと思います!汗をかくのが一番なので、ぜひこの曲を聴きながら走ってください。ライブも待っています!
Interview & Text:土谷拓史
PROFILE
銀河系パンクバンド。メンバーは玉屋2060%(Vo&Gt)、アサミサエ(Vo&Key&Sampler)、 ∴560∵(Ba&Cho)。2008 年、吉祥寺弁天通りにて結成。予測不可能な展開、奇想天外かつキャッチーなメロディーに人懐っこい男女ツインボーカル絡み合う、類を見ない独自の音楽で、子供から大人まで聴くもの全ての喜・怒・哀・楽を電撃的にロックする。2020年5月にアルバム『BURST POP ISLAND』をリリースし、日本コムビアよりメジャー進出。2021年10月「FACITON」(フジテレビ系 TV アニメ「デジモンゴーストゲーム」オープニング主題歌)を配信リリースし、東名阪ツアー『Welcome to the FACTION』を敢行。2022年6月8日に「SHINOBI TOP SECRET」(テレビ東京系テレビアニメ「ニンジャラ」エンディング主題歌)を配信リリース。7月20日に約2年ぶりとなるフルアルバム『TREASURE』を発売。2023年7月12日『TOP SPEED』(フジテレビ系 TV アニメ「逃走中 グレートミッション」エンディング主題歌)を配信リリース。2023年8月、Zepp Shinjuku にて過去最大キャパでのワンマンライブを実施。2024年3月21日(木)に渋谷WWWにてワンマンライブ『TOKYO HOLI』を開催。5月8日にデジタルシングル『何様のラプソディ』をリリース。6月3日より全国ツアー『何様大行進2024』を敢行。9月18日にデジタルシングル「TOKYO HOLI」をリリース。秋に2マン企画「W Dutch 2024 -Wienners 2MAN SHOW-」を開催する。
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RELEASE
『TOKYO HOLI』
デジタル配信シングル
https://wienners.lnk.to/TOKYOHOLI
日本コロムビア / No Big Deal Records
9月18日 ON SALE
LIVE
Wienners”W Dutch 2024-Wienners 2MAN SHOW-“
2024年9月26日(木)梅田CLUB QUATTRO w / フレデリック
2024年10月2日(水)渋谷CLUB QUATTRO w / キュウソネコカミ
チケット詳細:https://wienners.net