吉澤嘉代子 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■最近はSNSとかでもよく言われていますもんね、「老後は友達と暮らしたい」って。歳を取るのは楽しみですか?それとも怖いですか?

吉澤 私は怖いです。子供の頃からすごく怖くて……。子供の頃はずっと「自分をホルマリン漬けにしたい」って思っていました。年齢を刻むのが怖かったので、閉じ込めておきたかったっていう思いがあります。今は音楽をやっているので、曲を作ってそれをリリースできれば、その時のカケラが残っていくから、気持ち的にはトントンになっています。

■確かに曲を出せば、曲を作っていた時の自分がホルマリン漬けになるわけですもんね。子供の頃は何が怖かったですか?

吉澤 眠るのが怖かったですね。みんなが寝ちゃうと、「なんか、みんなが死んで自分だけが生き残っちゃった」みたいな気がして怖かったのと、眠れたら眠れたで、夢がすごく怖くて。夢から逃げるのってすごく大変じゃないですか。どうしても悪夢を見ちゃって、子どもの頃から寝るのがすごく苦手でした。

■その感覚はわかります。今は眠れていますか?

吉澤 今はもう大人になったらいろんな解決策があるので、それで悩むことはないんですけど、子供の頃って助けを求めるのも難しいし、誰にも相談できないじゃないですか。大人になった方がその辺は楽になりますよね。

■最後の曲は“抱きしめたいの”ですが、ギターと歌だけのとてもシンプルな曲になっていますね。

吉澤 ギターは君島大空さんが弾いています。この曲はずっとライブで歌い続けてきて、君島さんとよく演奏していた曲だったんですけど、今回は音源化にあたってバンドバージョンで録りたいなと思い、あらためて編曲してもらったりしていたんです。でも、それはそれで素敵だったんですけど、なんか「バージョン違い」みたいに聴こえてしまって……。やっぱりライブで表現している方法が正解というか、1つの答えになっているかもしれないと思い、お客さんの中でもそうなのかもしれないから、「せーの」で一緒に録って、ライブのような感覚でレコーディングしました。

■それにしても今作は、“氷菓子”で始まって、“抱きしめたいの”で終わるのって、面白い順番ですよね。ゴージャスに始まり、剥き出しのサウンドで寂しく終わって……。

吉澤 うう……曲順間違えたかも。(笑) 曲順はすごく悩みました。“抱きしめたいの”は絶対に最後だって思っていたんですけどね……。この曲を作った時はすごくボロボロな時期でした。でもやっぱり悩み苦しみ一生懸命な時って、「喉元過ぎれば」じゃないですけど、後から振り返ると「すごく頑張っていたんだな」って思えるんですよね。青春もきっと同じだなと思って、今回は“抱きしめたいの”を最後に入れたくて。30歳になっても悩み苦しむことがいっぱいあるし、これからもあるんでしょうけど、後から振り返った時に、苦しんでいた時の自分を抱きしめられたらなって思います。その時は愛せなくても、許せなくても、いつか抱きしめられたらいいなって。

■こうやってお話をしていると、吉澤さんは言葉を大切にひとつひとつ組み立てているアーティストだからこそ、どの曲も歌詞のどこかに引っかかりができるのが素晴らしいと思います。一方で、今作はマイナー調の曲が無いですよね。“抱きしめたいの”も曲自体は明るくて。

吉澤 次のEP『六花』は暗いですよ~。(笑) 暗いというか、とても切ないものになります。リリース時期もお別れの季節になりますし。

■明るい作品と暗い作品が出来上がるのですね、楽しみです。そして間もなくライブハウスツアーが始まりますが、1月なんてあっという間に来ますからね。どんなツアーになりそうですか?

吉澤 高校生の頃の気持ちに戻ったような、そんなツアーにできたらなって思っています。やっぱりライブハウス公演と、ホール公演って気持ちが違うので、今回はライブハウスツアーを選びました。ツアーはナインティーズのメンバーも含めた同世代のミュージシャンたちと一緒に回ろうと考えています。ライブハウスも、全国ツアー自体もすごく久しぶりなので、ただただ楽しみです。

■ツアーで各地を巡る時に楽しみにしていることはありますか?

吉澤 各地でお寿司を食べています。(笑) 海がある場所ではひとりでもお店に行きます。グルメが楽しみなのですが、まずお寿司がとにかく大好きなので……。みんなが喫茶店に行っている時にも、ひとりでお寿司屋さんに行ったり。(笑)

■生のおさかなが大好きな吉澤さんなんですね。(笑) 次回作『六花』も楽しみにしています。

Interview & Text:安藤さやか

PROFILE
1990年6月4日生まれ。埼玉県川口鋳物工場街育ち。2014年メジャーデビュー。2017年にバカリズム作ドラマ「架空 OL 日記」の主題歌『月曜日戦争』を書き下ろす。2ndシングル『残ってる』がロングヒット。2020年11月25日にビクターエンタテインメントよりシングル『サービスエリア』をリリース。2021年1月20日にテレビ東京ほかドラマParavi「おじさまと猫」オープニングテーマ『刺繍』を配信リリースし、3月17日に5thアルバム『赤星青星』をリリース。同年 6月20日には日比谷野外音楽堂での単独公演を開催。9月29日に初のライブブルーレイ『吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂』をリリース。2023年7月12日に映画「アイスクリームフィーバー」主題歌として書き下ろしたニューシングル『氷菓子』をリリース。11月15日には「青春」をテーマにした二部作の第一弾EP『若草』をリリース。2024年1月より全国ツアー「吉澤嘉代子 Live house tour “若草”」を開催。春には第二弾となるEP『六花』のリリースも決定している。
https://yoshizawakayoko.com/

RELEASE
『若草』

初回生産限定盤(CD+BD)
VIZL-2243
¥7,700(tax in)

通常盤(CD)
VICL-65892
¥2,750(tax in)

ビクターエンタテインメント
11月15日 ON SALE