結花乃 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

結花乃『結花乃譚~きんぎょすくい~』

シンガーソングライター結花乃が綴る様々な歌物語が今、聴き手の中に広がっていく

デビューして2年半。常に自身の中で生まれ出ていく想いや気持ちを、各種の歌物語に乗せて紡いできた女性シンガーソングライター結花乃。その内容やテーマ、シチュエーションは楽曲毎に様々だ。そんな彼女から初のアルバム『結花乃譚~きんぎょすくい~』が届けられた。1stアルバムとは言え、これまでの自身の集大成ではなく、あえて現在や今後、これからが詰まった今作。変わらず各曲毎で様々なシチュエーションや主人公、物語が展開されており、合わせて新機軸も散見。その内容はまさに短編集のようだ。「NHKみんなのうた」 (2018年8月~9月) のために書き下ろした“きんぎょすくい”を始め、初の歌詞提供曲や自身初挑戦な楽曲も含め、その楽曲のタイプも様々で幅広い今作。結花乃が描く各曲は、どれも聴く者の中に様々な歌物語を広げてくれる。

■今回、待望の1stフルアルバムを発表されましたが、それにしても各曲全く違ったタイプの曲と歌物語が収まっていますね。

結花乃 色とりどりのお話が詰まった作品になったとは自分でも感じています。タイトルの『結花乃譚』、この「譚(たん)」は「物語る」とか「言い伝える」といった意味を持っていて。まさにそんな内容になったかなって。

■分かります。短編が一冊にまとまったかのような作風も印象的でした。

結花乃 今回は一曲一曲の主人公は違ってもいいけど、私が作った各物語をまとめた作品集にしたいとの想いがありました。私の場合、それぞれ歌詞から曲を作り上げていくタイプなんですが、その歌詞も1曲で1話の物語やドラマ、童謡のように書いているので。

■その辺りの自覚はいつ頃から?

結花乃 「アルバムを作ろう!」との話になり、再度自分の曲を一から聴き返してですね。「私の歌ってなんか物語っぽいものが多いな…」って。振り返ると1stシングルの“花一匁”からしてそうでしたから。最新の“きんぎょすくい”も金魚の目線から、絵本の世界のようでいて内容は大人のような…この曲もどこか物語っぽいですし。逆にそれが自分らしさや特徴の一つなんだろうと改めて気づかせてもらいました。

■改めて完成形を聴き返していかがですか?

結花乃 どの曲も懐かしさはあるんだけど、「今の私が歌うと…」みたいな作品に仕上がったかなと。今回のリリースにあたり、昔の曲もいくつか改めて録り直したり、サウンドをガラッと変えたりもしたんです。おかげさまで昔の曲も今うたうことで熟成さを加えて歌うことが出来ました。

■この2年半で歌表現の幅も徐々に広がっていきましたもんね。

結花乃 歌っていくうちに表現力も徐々に備わってきて、結果、いろいろなタイプの声色が出せるようになっていたんだな…って私自身も改めて感じました。

■今回はデビュー曲も含め、活動当初の曲のリメイクも入っていたりしますが、その辺りは歌い直してみていかがでしたか?

結花乃 更に自分の中に馴染ませることが出来ました。改めて「あの頃の自分は、こんなことを考えていたんだな…」と気づいたり。これまでの2年半のその時々の私の気持ちや想いもギュッと詰まった作品になったなって。

■それにしても各曲毎に歌表現や声質も違っていて感心しました。

結花乃 ありがとうございます。その辺りは、私が各曲の主人公になり切って歌っている面が大きいかもしれません。どれも自分の声なので、そこからは逸脱しないよう心掛けましたが、私の場合、まずは曲毎の主人公にキャラクターや背景等の設定をするんです。性別も年齢も、性格や考え方も違う架空の人物を曲毎に設定して。まずはそれになり切るんです。そういった意味では役者さんに近いのかもしれません。

■逆にそれだと本質や、実際に伝えたいことが見えにくくなる懸念もありますが…?

結花乃 特にそこは心配していませんでした。私の場合、コレと決めてそれを突き詰めていくよりは、これもこれもこれも全部私、みたいなタイプの表現者なのかなって。歌い分けや違った声質でいろいろと表現できるのが自分の個性だと自負しているので。

■なるほど。

結花乃 その(各曲毎に於ける)声質の違いについても、元々「いろいろなことに挑戦してみよう」からではなく、「様々なタイプの曲が出来たので、それぞれに合った歌い方をしていった結果」だったりもしますし。なので、今回も「これ出来そう」、「これやってみたい」、そんな範中で全て歌わせてもらいました。

■中盤には主に新曲群がまとまって収まっていますが、それらの曲からはあえての軽さを感じました。

結花乃 既存で入れたかった曲が割とバラードが多かったんです。それらを先に決め、あえてそことバランスをとったり、バラエティさを表すように曲調は考えて新曲は作っていきました。いわゆる初めてのアルバムなので、過去の集大成のように感じさせない、いわゆるベスト盤的に響く作品は避けたくて。これから始まる。これから先に続いていく。そんな1枚にしたかったんです。なので、あえて重すぎないよう心掛けました。

■それにしても今回は驚かされた曲もありました。“わさび”なんて昭和歌謡じゃないですか?

結花乃 それこそこれは初挑戦でした。アルバムだし、ちょっと冒険してみようと。あとはアルバム中、どこか刺激になるような曲も欲しかったし。「刺激=わさび」みたいな。(笑) まずは歌詞を書いて、これをどうやったらもっと刺激的にさせられるか…の結果です。(笑) トーンやキーも低めで、コブシを入れて歌っていますが、それこそこれはなり切って楽しんで歌わせてもらいました。

■では、アルバム全体のバランスや聴き飽きさせなさ等も考えての制作だったり?

結花乃 ですね。特に新曲はそのような作り方をした曲たちが多いです。聴いていて飽きがこなかったり、キチンと最後まで流れで聴ける、そんな作品を目指しました。