心にどんな”孤独” を抱えていようとも、yutoriのライブにくれば、僕らは思いを分かち合う関係になれる。
yutoriがミニアルバム『心の微熱』を引っ提げ4月から始めた全国9都市を巡るワンマンツアー『yutori ONEMAN TOUR 2026″Bless you!”』。同ツアーのファイナル公演が、6月7日(日)にKT Zepp Yokohamaで行われた。2階席の奥まで人で埋めつくされた場内。暗くなった会場にスタイリッシュでアーバンなSEが流れだすのに合わせて、フロアからクラップが起きた。メンバーの登場に合わせて、クラップの音も大きくなる。それだけファンたちが、これから始まるライブに熱い期待を寄せているということだ。ドラムを囲む形で円陣を組み、気合を入れるメンバーたち。そして佐藤古都子(Vo&Gt)がギターを掻き鳴らし、「隠した 思いも 見透かされて 心模様は雨」と高らかに声を響かせて“君と癖”を歌いだした。それを合図に楽曲は軽快に駆けだす。疾走する演奏に合わせてフロア中で起きた熱いクラップ。曲が進むごとに、沸き立つ思いが熱を帯びていく。嬉しい特色として見えていたのが、佐藤の歌声が感情的になるほどに、場内で鳴り響くクラップの音も大きくなっていたことだ。それは大勢の人たちが、メンバーらと心をシンクロしながらライブを楽しんでいたという証。サビで気持ちをひと際高ぶらせて歌う声に合わせて、演奏もさらに躍動する。なんてエモーショナルでパワフルな歌声や演奏だろう。その後も巧みに緩急を付けた表情を見せながら、楽曲はどんどん熱を上げて駆けていった。続く“センチメンタル”でも、佐藤が心地よい旋律に乗せて歌いだす。最初はあえて抑え気味で。でも、サビで一気に感情のボリュームを上げ、高ぶる気持ちで歌う姿がエモーショナルでありながら、とても凛々しく見えていた。熱を持って駆ける躍動した演奏が、佐藤の気持ちを背中から押していく。演奏が進むごとに高揚が増す。だから観客たちもときに声を上げ、拳を突き上げてメンバーらと熱い思いを重ねていた。

「今日はここにいる全員で、忘れられない最高の一日を一緒に作っていこうと思ってます。最後までついておいで」の言葉と、浦山蓮(Dr)が「ワン・ツー」と声を上げるのに合わせて、楽曲が心地よく駆けだした。奏でたのは“村人A”だ。軽快に駆ける演奏に乗せ、肩肘抜いた声で佐藤が軽やかに歌う。彼女が「僕じゃダメですか?」と相手に思いを求めるように歌う声が、胸に心地よく響く。決して感情を露わにして歌っているわけではない。でも、軽やかに走る演奏に乗せて気持ちの熱が伝わるからこそ、その思いに強く惹かれていた。その上で豊田太一(Ba)の弾く躍動したベースが、跳ねたビートを刻みだした。その演奏に合わせて、場内から生まれた熱いクラップ。佐藤が大きく手を振りながら“月と私のかくれんぼ”を歌いだすのに合わせて、観客たちも大きく手を振り出した。心が弾むまま跳ねた演奏に身を任せて軽やかに歌う彼女の声が、とても心地よい。ミラーボールに反射した輝きが、月の光のように会場中に降り注ぐ中、メンバーも観客たちも、まるで月夜のパーティーを楽しむように心の手を繋ぎながら、笑顔で身体を揺らしていた。ミラーボールと月夜がくれた素敵な魔法にかかりながら、今はただ歌や演奏に心を委ねて酔っていたい。続くミドルメロウの“爪色とグラスの縁”では、胸の内に抱いたもどかしい思いを少しずつ零すように歌っていた。サビで少し感情を露わにして、「好きだと 好きだと 好きだと言う気は」と歌う度に、その気持ちが佐藤自身の心の声のように胸に伝わってきた。躍動した“音信不通”の演奏に乗せて、心の奥に閉まっていた思いを少しずつ吐き出すように歌う。この曲でも佐藤の感情が露わになるのに合わせて、演奏も熱を高めだす。その熱と、疾走する演奏に刺激を受け、場内からクラップが起きていた。後半、彼女の気持ちを蹴り上げるように演奏が炸裂すると、佐藤自身も情熱的な声を響かせた。楽器陣が激しく攻める、その攻撃的な姿勢も刺激的だ。その勢いにさらに勢いを重ねるように、内田郁也(Gt)がザクザクとしたギターの音を掻き鳴らす。その音と同じように情熱をぶつけるように、他の楽器陣の演奏も重なりだす。心地よくも感傷的な衝撃を持って“安眠剤”が駆けだした。場内に生まれた熱いクラップ。佐藤は自分自身へ問いかけ、自らの心の声を探すように歌った。彼女の歌声が次第に重く太くなるのは、それだけおおらかな気持ちで歌っていたからだ。「くだらねえな、バカ」と、言葉を吐き捨てるように歌う姿も、その声を煽るように荒々しく演奏をぶつける姿にも、気持ちが嬉しく騒いでいた。

「日々の生活って嬉しいことだけじゃなく、嫌なことだったり、苦しくなることもあります。繰り返しの中にある小さな思い出を大切にしてほしい」と語った言葉を合図に、白い光に包まれながら、一つひとつの言葉を大切に紡ぐように“生活”を披露。とてもシンプルな演奏だ。佐藤の揺れ動く心模様が、歌声から有り有りと伝わってきた。だから観客たちも、「愛されていましたか?」と問いかけるように歌うその声と演奏に耳と心を傾け、思いを巡らせながらこの曲を受け止めていた。「愛してるって嘘ついた」と歌いだす“愛してるって嘘ついた”でも、その言葉が胸に強く響いてきた。やがて楽曲が音を解き放つように駆けだすのに合わせ、情熱的な歌声と思いを演奏が力強く押し上げる。だから、より生々しくも感情的な色を持ってこの曲が胸を揺さぶった。鋼のように骨太なビートを刻む豊田のベース、その音を、浦山がタイトな音で際立たせる。そこへ内田のギターがザクザクとした音で刺激を与える。その演奏は、佐藤が「数%溶ける 溶ける」と歌うのに合わせて、衝撃を持って駆けだす、“数%のハッピーエンド”だ。どこか「べらんめぇ」な口調で言葉を吐き出すその歌声が、荒々しい楽曲と相まって気持ちを熱く騒がせる。一心不乱にギターを掻き鳴らす内田の横で、荒々しく声を張り上げて歌う佐藤の姿とのコントラストが印象的だ。後半は駆けるビートに合わせて、場内から熱いクラップが起きれば、その勢いを増幅するように、ヒリヒリとした歌や演奏をメンバーたちはぶつけた。凛々しく攻めるその姿がとても刺激的だ。「そんなもんじゃないんだろ もっとついておいでよ」と煽る声に続いて、がなるように“NOT MUSIC”を歌う。一気にバーストした演奏に乗せて、荒々しい声をぶつける。楽器陣も感情を露わにした音を叩き付け、この場に熱い衝撃を作りだしていった。裸の心を歌声と演奏に乗せてぶつけるメンバーたち。その気持ちを受け止めた大勢の観客たちも、沸き立つ思いを膨らませてメンバーにぶつけていた。切れ味鋭いビートを叩き出す浦山の演奏の上で、内田がヒステリカルにギターの音を掻き鳴らす。そこに雄々しい声で語るように佐藤の歌が重なるのを合図に、楽曲は勇ましい勢いで走りだした。“有耶無耶”でもメンバーらは、強靱な演奏を突きつけて観客たちを刺激すれば、佐藤も感情を剥きだしで荒々しく歌いあげる。その気迫と勢いに触れ、同じように気持ちが奮い立つ。なのに、彼女は「こんなんでいいんですか」と煽り、しかも楽器陣がさらに研ぎ澄ませたスリリングな演奏をぶつけてきたとなれば、見ている側もより感情を剥き出しにして騒がずにはいられない。

終盤にはステージと客席とで「Oi!Oi!」と荒ぶる声を張り上げる熱いバトルが繰り広げられた。楽器陣による、緊張感を孕んだセッション演奏。佐藤が「H@BREAK」とタイトルを告げるのを合図に、“H@BREAK”が飛び出した。がなるように歌う彼女の背後で、スラップしたベース音を高速で叩きつける豊田の姿もインパクトを与えていた。佐藤が感情剥きだしで雄々しく歌う。荒ぶるその姿と重なるように、楽器陣も荒々しくも攻撃的な音を次々と叩き出し、観客たちを熱狂という渦の中へとガンガンに巻き込んでいった。「これからもあなた一人のために音楽を鳴らします、またここに帰っておいで」と佐藤が思いを述べ、さらに演奏の速度と熱を上げるように“スピード”を披露。心地よい緊張感を抱いて爆走する楽曲だ。サビで「今のスピードじゃ追い越せないから」と、気持ちを奮い立たせるように歌う姿が印象的だ。曲が進むごとに、速度と熱が加速するように感じていたのは、メンバーたちのテンションの高いエモーショナルな歌声や演奏に気持ちを煽られ、一緒になって熱くなっていたからだ。その上で佐藤がギターを掻き鳴らし、凛々しい声で“煙より”を歌う。曲が進むごとに歌声が感情的になり、その気持ちを押し上げるように、演奏も迫力と臨場感を増していく。その姿と熱に興奮を覚えた観客たちも拳を振り上げて騒ぎだす。佐藤の歌声に向けて、浦山と観客たちが「いつまでも いつまでも」と声をかけ合う。もうこのまま上がるところまで上がり続けたい。「あなたの心の中に孤独を怖がるあなたがいるなら、この歌を送ります」と語り、yutoriは最後の曲として“僕らは孤独だ”を歌い奏でてくれた。一人ひとりの心へ歌声の手紙を届けるように、「僕は、君は、貴方は、僕らは孤独だ」と、同じ心の色を持った仲間たちへ向けて思いを響かせる。「僕らは孤独だ」と歌いながらも、この場にはyutoriの音楽に引き寄せられた仲間たちがこんなにも多く足を運んでいた。それぞれの心にどんな「孤独」が生きていようとも、yutoriのライブに来れば、僕らは思いと楽しさを分かち合う関係になれる。みんなそれをわかっているからこそ、ここに来て拳を振り上げ、ときに声を荒げて熱狂し続けていたのだろう。

アンコールは、沸き立つ気持ちに導かれるままに佐藤がギターを掻き鳴らし、“煩イ”を歌いだして始まった。激しくもエモーショナルな演奏と、凛々しい声で歌う彼女に向けて、場内から熱いクラップが響きだす。メンバーに煽られるまま拳を突き上げて騒ぐ観客たち。アンコールでも会場中の人たちが気持ちを一つにして、沸き立つ思いをぶつけあう景色が生まれていた。改めて佐藤が、「あなたの心の居場所になれますように」と思いを述べた上で、最後の最後にすべてのわだかまった感情を解き放つように大切な存在を真っ直ぐに見つめ、“巡ル”を歌った。「あの日の影をまだ追いかけて」と感情的に叫ぶ声が、気持ちを熱く奮い立たせる。だから、大勢の観客たちが拳を高く突き上げて、夢中になって騒いだ。みんなで沸き立つ思いを一つに重ね、心が求めるままに熱狂していく。もどかしい現実の日々を振り切って、ただただ大好きな音楽に夢中になれる。あるべき自分の姿に戻ってはしゃぎながら、yutoriの4人と一つになれる。この一体感が楽しくて僕らはyutoriのライブに足を運ぶのだろう。10月からは対バンツアー『yutori 2MAN TOUR 2026~対 vol.2~』が始まる。次はこの場を通して、また心を一つにして騒ごうか。
Text:長澤智典
Photo:エド ソウタ
『yutori ONEMAN TOUR 2026″Bless you!”』@KT Zepp Yokohama セットリスト
https://kmu.lnk.to/blessyou_setlist
01. 君と癖
02. センチメンタル
03. 村人A
04. 月と私のかくれんぼ
05. 爪色とグラスの縁
06. 音信不通
07. 安眠剤
08. 生活
09. 愛してるって嘘ついた
10.数%のハッピーエンド
11.NOT MUSIC
12.有耶無耶
13.H@BREAK
14.スピード
15.煙より
16.僕らは孤独だ
ENCORE
01. 煩イ
02. 巡ル







