鈴木愛理 VANITYMIX 2019 AUTUMN PICK UP INTERVIEW

鈴木愛理『Escape』

追いかけられたら逃げたくなる、天の邪鬼な女子を歌った初シングル

昨年6月のソロデビュー以降、日本武道館でのライブや二度の全国ツアーを大成功に収め、ロックフェスやファッションイベントにも出演するなど、多方面で活躍中の鈴木愛理が、初のシングル『Escape』を9月4日にリリースする。デビューアルバム『Do me a favor』以来のリリースとなるファーストシングル『Escape』について、ソロ活動によって生じた自身の変化とともに語ってもらった。

■ソロデビューから1年ほど経ちましたが、振り返ってみていかがですか?

鈴木 私、デビュー自体が人生で4回目(あぁ!、℃-ute、Buono!、ソロ)だったんですけど、だいたいデビューの年は何事も初めてで、がむしゃらにやって、「あっという間の1年でした」という表現がしっくりくるんですよ。でも今回は3年くらいソロをやっているような気持ちになる1年間だったというか。15年アイドルをやってきたうえで、初めてのことがいっぱいあって、ものすごいたくさん経験を積んだけど、「まだ1年だったね」って。濃厚で充実しまくった1年でした。

■この1年で自分自身が変わったなと思うことはありますか?

鈴木 あるんだと思います。自分としては特に変わらずやっていたつもりだったんですけど、久々に大学時代の友達に会ったら、「愛理、すごい変わったね」って言われたんですよ。

■どこが変わったんですか?

鈴木 なんか自立したって言われました。一人で生きていく感がすごいみたいな。(笑)でも、言われてみると、グループ活動をしているときは、自分から率先して意見を言うことはなかったなと思って。私は聞き手にまわるか、ふざけるときだけ登場するようなタイプだったんです。でも一人になったら、自己完結しなくちゃいけないじゃないですか。それでソロになって、ライブをやり始めたら、MCで20分以上しゃべっていて。最初は「3分もしゃべれないでしょ?」みたいに言われていたのに、いまやしゃべりすぎて怒られるようになりました。(笑)

■僕はグループ時代の鈴木さんを詳しく知らないですけど、前回のインタビューで初めてお会いして、YouTubeとかも見て、めちゃくちゃしゃべる人だなと思ったんですよ。

鈴木 ですよね!私も自分で自分を客観視して、そう思うようになりました。ははははは!(笑)

■もともとはそんな感じじゃなかったんですか?

鈴木 どうなんでしょう?グループにいたときは、自分でも気づかないうちに抑えていたのかもしれません。いまでも3人以上いると、その時代の感じになるんですよ。居酒屋とかで声が通るタイプの人には勝てないというか、一気に聞き手になっちゃうんです。

■鈴木さんはブログで、昨秋に出演した「Sound Inn“S”」(BS-TBSの音楽番組)の収録で、大きな刺激を受けたと書かれていましたよね。何があったんですか?

鈴木 自分の曲を有名なミュージシャンの方々がアレンジしてくださる番組だったんですけど、“start again”を島田昌典さん、“私の右側”を斎藤ネコさん、それと絢香さんの“三日月”を本間昭光さんに編曲していただいて歌ったんです。それまでも曲の世界観を理解した気持ちで歌ってはいたんですけど、その収録を経て、自分の感情をむき出しにして歌っていいんだというか。表情がどうとかじゃなくて、声に感情を乗せるみたいな感覚が芽生えて、「あ、楽しい」みたいな。特に本間さんがアレンジしてくださった“三日月”のときに、たくさんご指導いただいて、自分自身の心にある気持ちが紐付いてあふれるみたいな感覚がちょっとわかった気がしたんです。

■それまでは感情を出し切れていなかった?

鈴木 昔は自分を出すことに恥ずかしさがあって。ソロになってからも、自分が書いた歌詞をマネージャーさんに送るのとか、本当に嫌だったんですよ。日記を見られているみたいで。でも、それからドラマ出演とかも経験して、いまは全然恥ずかしくなくなりました。もうポンポコポンポコ送れるので。(笑) そのへんは強くなったというか、変わったかなと思います。

■それまではアイドルとして演じているような感覚があったんですか?

鈴木 以前はどちらかというと、見た目がどうとか、(カメラに)一瞬抜かれるときの表情とか、そういう技術を磨いていたと思うんです。でも、それをソロでやっていると、ほんとロボットになっちゃうので。どの瞬間も自分だから、ずっとキメ顔でいなきゃいけなくなるのはなんかしっくり来てなかったところがあったんです。それがその「Sound Inn “S”」からは、いい感じのバランスで組み合わせられたらいいなと思えるようになって。まだまだ試行錯誤中ですけど、いまはその感覚のまとめ方がやっとわかり始めてきた気がします。

■昔に比べたら素の自分で歌えているような感覚なんですか?

鈴木 そうですね。MCは昔から素なんですけど、人間っぽいまま歌えるようになりたいなっていう希望はあったので。最近はそういう感情が入る曲を歌うときに、より入りこみやすくなった気がしています。

■今回のシングルはそんな1年を経ての作品になりますけど、去年の6月にデビューアルバムを出してから初めてのリリースですよね。ライブでは新曲もたくさん披露されていたのに、なんで1年以上も空いたんですか?

鈴木 大人の事情です。(笑)

■ブログにもそう書いていましたよね。(笑)

鈴木 みんながすっごい聞いてくるので。(笑) でも、おかげで新曲は音源を出す前にライブでやるスタイルが、勝手にできあがってきていて。だからライブで初めて聴いた人が置いていかれないように、演出に沿った新曲を作ることが、ソロをやってからの定番になってきているんです。もう去年の「PARALLEL DATE」ツアーと、今年の「Escape」ツアーで披露した新曲だけで、アルバム1枚作れるくらいの曲数はあるんです。

■そんなストックがたくさんあるなかで、なんで“Escape”をシングルにしたんですか?

鈴木 ものすごいたくさんの話し合いがあったんですよ。やっぱりシングルってなると、その曲で鈴木愛理のイメージが固まってしまうので、ソロデビューのときにテーマとして掲げた(いろんなタイプの曲を歌う)カメレオン性を表現するのが難しくなるねって。それに、スタッフからはダンスナンバーにしたいと言われて、さぁどうしようかっていうときに、(アルバムで1曲目だった)“DISTANCE”が印象的なメロディーラインの曲だったので、印象的な音がないとダメだと思ったんです。

■確かに“Escape”は、イントロからインパクトがありますね。

鈴木 しかも“Escape”は、私が小さい頃から憧れていたBoAさんを手掛けていた原一博さん(“LISTEN TO MY HEART”や“VALENTI”などを作編曲)が、作曲編曲をされていたっていう奇跡的な出会いもあって。それに、もともとこの曲をシングルとして出せるか決まる前に、次のツアーは“Escape”をリードソングにしようと決めていたんですよ。

■シングルのリリースは9月ですけど、「Escape」ツアーは5月からやっていましたよね。

鈴木 ライブは演出の問題があるので、年明けから打ち合わせを始めていて。(ライブの)ストーリーを決めて、候補としてあった曲をそのストーリーに当てはめていったときに、“Escape”は内容的にも曲調的にも今回の演出にしっくりきたんです。

■“Escape”の歌詞は「私を捕まえて」的な内容ですけど、なんでそういうテーマを選んだんですか?

鈴木 ライブは日常で感じられないドキドキみたいなものを感じる場にしたいなと思っていて。いくつか考えていた候補があったんですけど、ホールツアーだからこそできる演出ということも踏まえて、今回は変装して逃げるというところで、カメレオン性を見せていこうっていうことに落ち着いたんです。