果歩 VANITYMX WEB LIMITED INTERVIEW

果歩『女の子の憂鬱』

憂鬱を抱えながら不器用に生きてるみんなも、それはそれで楽園だから、私が全部肯定してあげたい

シンガーソングライターの果歩が、弾き語りEP『女の子の憂鬱』をリリース。隠しがちで、時には目を背けたくなるような得体の知れない感情、「憂鬱」。そのいびつな想いをひとつひとつ丁寧にすくい上げることで、生々しいほどの「生」とその美しさが現れた今作。ここに込められた想いや言葉に共感したり、救われるものも多いだろう。上京してからのことを振り返りながら、この1枚に込めた想いを話してもらった。

■3ヵ月連続配信を経てのEPとなりますが、当初から今作を考えて制作されていたんですか?

果歩 3ヵ月連続配信はコロナになる前からやろうと考えていて、3曲とも結構前にできてはいたんです。でもちょうどこういう時期になってしまって、リリースの日程も変わっちゃったし、3曲と一緒に企画もやって完結という予定もなくなってしまって。なので、はじめはEPのことは考えていなかったんですけど、弾き語りの反応は前からよかったし、この時期に曲もいっぱい書けたから、弾き語り音源を集めた作品を作りたいなと思って。

■曲はどれくらい書かれたんですか?

果歩 20~30曲くらいはできたんじゃないかと思います。ずっと制作していたので。今回暗めの曲が多いのは、何もできないという状態で閉じこもって、いろいろ考えることが多かったからかもしれないですね。

■実際どういう気持ちで過ごされていましたか?

果歩 こんなに長い間ライブができないって、音楽活動を始めてから初めてのことだったので、何をしたらいいかわからなくて。バイトをしつつ曲を作ったり、新しいことも何かできるかなって、同い年の映像を作っている子とショートムービーを制作したりして。なので、それなりに有意義に過ごせてはいたのかなと思います。

■ほんとにずっと制作されていたんですね。

果歩 はい。あとは2ヵ月くらい新潟の実家に帰っていました。実家に大きいわんちゃんがいて、私は猫を飼っているんですけど、その猫を一緒に連れて帰って、2匹がたわむれてるのを見ていました。(笑)

■ふふふ、しあわせですね。実家にはよく帰られるんですか?

果歩 よく帰りますね。ライブでも定期的に地元に呼んでいただいていたし、長期の休みがあると必ず帰っています。実家が大好きなので。

■上京されたのは?

果歩 大学1年生になった時なので、18歳の時かな。

■東京に来ることは歌を始めた時から決めていたんですか?

果歩 小学生の頃から、「私は東京の大学に行く!」って思っていました。(笑)

■あはは、そうなんですね。

果歩 ずっと歌手になるのが夢だったので、私は絶対東京に行くだろうなって。

■実際に活動を始めたのはいつ頃なんでしょうか?

果歩 中学生の時にギターを習い始めて、弾き語りはできるようになったけど、次に何をしたらいいか考えた時、それが高1になった時だったんですけど、じゃあ曲を作ろうって。そこから次はライブかなって、その夏にライブハウスに電話して「ライブに出させてください」って連絡して、ライブを始めたのがきっかけです。

■すごい行動力ですね。

果歩 お母さんも協力的だったので「こんなライブハウスがあるよ」とか「高校生のイベントだったら出させてくれるんじゃない?」とか、一緒に相談して決めたりして。電話をかけた時に対応してくださった方とは今でも仲良くさせてもらっているんですけど、「じゃあ1回ライブハウスに来てみるといいよ」って、その方がすすめてくれた弾き語りのライブを観に行って。「イベントっていうのはこういうものなんだよ」ってことを直接丁寧に教えてくださったんです。なので、私は人に恵まれているなって、それは昔からずっと思っています。

■中学生の時にギターを始めたきっかけはなんだったんですか?

果歩 当時、YUIさんやmiwaさんが人気で私も大好きだったので、アコギで歌を歌ったら歌手になれるんだ!って漠然とした想いでギターを買って、でもギター弾けないから、お母さんにお願いして習いに行く、みたいな。(笑) なので、とにかく目に入るものや、やりたいことを自分でやっていった感じです。

■好奇心の赴くままに、みたいな?

果歩 そうです。自分の欲には素直なので、やりたいと思ったらすぐにやっちゃうし、やってみて違ったらそれはそれでいいから、とりあえずやってみるタイプです。

■上京されてからの3年、憧れていた東京での生活はいかがですか?

果歩 私、結構東京好きでした。(笑)

■ふふふ、どんなところが好きですか?

果歩 行っても行っても新しい発見があるところですね。私は喫茶店が好きなんですけど、新潟より東京の方がいっぱいあるし、交通の便もいいから、気軽に行くことができるし。時間ができたらちょっと遠くの喫茶店に行って、その街を散歩するのが好きなんです。そういう発見が3年経ってもまだまだあるし、生活に常に刺激があるというか、そういうところが好きですね。もちろん、新潟も大好きです。

■好きな街は?

果歩 吉祥寺が好きです。新宿と渋谷は人が多くて疲れちゃうし、怖いから、「私を見ないで」って気持ちになっちゃうけど、吉祥寺は「わたしを見なさい!」って。(笑) 堂々と胸を張って歩けます。

■あはははは。上京の時、不安はなかったですか?

果歩 上京した頃、めちゃめちゃ尖っていた時期なんですよ。どこの方向にも尖り散らかしていたので、不安よりも「やってやるぜ!」って気持ちの方が大きかったかもしれない。(笑)

■へー、そんなに尖っていたんですか?

果歩 はい。でも東京に来て変わりました。東京でいろんな人に出会って、いろんな人の優しさや考えに触れて。それまでは自分のことしか考えていなかったんですよ。例えば考え方や感じ方が違ったら、絶対に自分の方が正しいって思っていたけど、今は話を聞いて、そういう気持ちもあるんだねって思えるようになったんです。それはたぶんいろんな人に出会って、いろんな人の話をいっぱい聞けたからだと思っていて。