CYANOTYPE VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

CYANOTYPE『PORTRAITS』

■舞台の場合、演出家の意図を汲み取りながら、その演出家の意図に寄り添う表現を求められますよね。音楽面でも西間木さんの意図をどう読み取り、そこへ沿っていくかも考えるのでしょうか?

海宝 確かに舞台は演出家の解釈をみんなで具現化していくので、音楽監督が描いた歌い方をどう役者が形にしていくかが魅力にもなっています。でも音楽はすべて表現者が自由に解釈していけるので、その違いを僕ら3人とも楽しんでいます。

小山 僕と西間木くんとはもう14年くらい一緒に音楽活動をしているんですけど、未だに「こういう引き出しを持ってくるか」という、嬉しい発見をさせてくれるんです。“間違傘”のようにモノを擬人化するスタイルは昔から彼が得意としていたスタイルなので納得でしたけど。“キャラメル・シティ”のような洒落た文学的な表現はこれまでにはなかったものだったので、30代に入り、より大人になった西間木ワールドを垣間見れ、そこに面白さを感じました。

■“キャラメル・シティ”は、シティポップなスタイルを意識した楽曲ですが、歌詞に書いたティン・パン・アレイという言葉を目にした時、タイトルの“キャラメル・シティ”って、もしや「キャラメル・ママからきてる?」と、勝手に想像を巡らせてしまったんですけど…。

西間木 その通りです。(笑) 僕自身の音楽的なルーツにあるのが、山下達郎さんや細野晴臣さんが活動していたはっぴいえんどやキャラメル・ママ、ティン・パン・アレイなどの音楽性なんです。自分なりの解釈で捉えたシティポップというか、16ビートナンバーを作りながら、歌詞の中へティン・パン・アレイという言葉をハメた時にしっくりきたので、今のタイトルを思いついたんです。「さすがに“キャラメル・ママ”には出来ないな」と思い、試行錯誤していたら、海宝くんもキャラメルという響きをすごく気に入ってくれて、その言葉を活かして生まれたのがこのタイトルでした。そこの遊び心が世代的にわかっていただける方は決して多くないと思いますけどね。でも、「気付いてもらえたら嬉しいな」と思い、さりげなく楽曲へと組み込みました。(笑)

■完成したミニアルバム『PORTRAITS』、それぞれどんな手応えを感じているのかも聞かせてください。

小山 今回は4人のアレンジャーさんと一緒に作ったことで、今の自分では出てこないギター表現の引き出しをいろいろ引き出してもらえたのは嬉しい勉強になりました。どの楽曲もソロプレイは自分の感性のまま自由に弾いていますけど、それこそ“紬 -tsumugi-”のようなバッキングの演奏は、それまでの自分の解釈の中にはなかったものですし、いろんなアレンジャーさんとやったからこそ引き出せた演奏でした。ここには「自分らしさ」と「新しい自分」の両面を入れることが出来たなと思っています。

海宝 僕もそこは一緒です。素晴らしいアレンジャーの方々とご一緒したことで、自分や自分たちでは気付けなかった新しい表現をいろいろ引き出してもらえたし、自分らの新たな可能性にも気付かせてもらえました。結果、今後の表現の広がりにも繋がる、一番新しいCYANOTYPEの姿を詰め込めた作品になったなと思っています。

西間木 コロナ禍以降の中で作り上げた作品なので、改めて表現していくことや、バンド活動が出来ることのありがたさを感じることが出来ました。この作品を今の時代に産み落とせたことに、僕はすごく感謝しています。

■次はライブを通してこの世界観を表現していく形ですね。

海宝 ようやくライブを行なう場を作ることが出来ましたからね。僕自身、舞台を通しても感じてはいますが、コロナ禍以前と以降とではエンターテイメントの作り方もガラッと変わってきました。今回のCYANOTYPEのライブに関しても、今の情勢に合わせた形の中で一体感を持って楽しめる方法を今作りあげています。むしろ、新しいエンターテイメントのスタイルを作り上げていくチャンスの場でもあるから、今の環境を前向きに捉えた形でのライブを作りあげますので、みなさんも楽しみにしていてください。

■CYANOTYPEって、アルバムのタイトルに写真絡みの言葉をよく用いていませんか?

海宝 CYANOTYPEという言葉自体が青写真という意味を持っていますからね。1stアルバムの『MONTAGE』も、今回の『PORTRAITS」も写真に絡んだ言葉なんです。今回の『PORTRAITS』は、収録した1曲1曲の中へ丁寧に主人公の人物像を描いたからこそ、それらをまとめあげる言葉として、肖像画=ポートレイトという言葉を持ってきたのもありました。それに聴いてくれる人たちも、楽曲ごといろんな人物の心模様に想像を巡らせ、その解釈を楽しんでもらえると思います。まさに「この作品にピッタリのタイトルになったな」と僕らも思っています。

Interview & Text:長澤智典

PROFILE
2012年結成。海宝直人、小山将平、西間木陽で編成される3人組バンド。海宝直人は演劇の世界で、小山と西間木はベンチャーズバンド「bcv」でも活動等、それぞれが独自のサイドストーリーを持つ。確かな演奏力とここに持ち合わせた音楽性の奇跡的な超融合が無類のクリエイティビティを生むシアトリカル・バンド。2018年1月24日、1st.シングル『光』でメジャーデビュー。2019年10月9日に1st.アルバム『MONTAGE』を、2021年8月18日にミニアルバム『PORTRAITS』をリリース。
https://www.cyanotype.jp/

RELEASE
『PORTRAITS』

初回生産限定盤(CD+BD)
YRCN-95348
¥3,630(tax in)

通常盤(CD)
YRCN-95349
¥2,310(tax in)

よしもとミュージック

8月18日 ON SALE