ENVii GABRIELLA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ENVii GABRIELLA『Metaphysica』

■Kamusさんは、どんな人を思い浮かべましたか?

Kamus 私は家族や友達を思い浮かべましたね。同じように解釈してくれる聴き手の方が他にもいれば、それはそれで嬉しいですし、違う解釈をされている方の意見も聞きたいです。

Takassy この曲に関しては、本当に解釈が分かれるよね。

HIDEKiSM 本当にそう。「あなたにとっての「君」は誰?」っていうアンケートをとりたいくらい。(笑)

■そんな“Finally Found You”からアルバムが始まって、2、3、4曲目には強気で自信にあふれた感じの曲が続きますよね。メジャーデビューして、みなさんの中に攻めのムードみたいなものがあるんですか?

Takassy 逆に慎重になっていますね。

■そうなんですか?

Takassy これがハタチとかでメジャーデビューだったら強気だったかもしれないけど、私たちは普通に昼職もして、やっと辿り着いたメジャーデビューなので、失敗したら後がないんですよ。なので、メジャーデビューだからと言って浮足立っている余裕はない。メジャーデビューもひとつの通過点として、今後さらにお金が投入され、人が動くとなった時に、どうしたらスタッフの人たちが潤うか。私たちも潤うか。そしてプロジェクトが大きくなるか。それをさらに考えなきゃいけなくなってくるし。やっぱり私たちがENVii GABRIELLAというショーの座長になるので、私たちのテンションや考えいかんで潰れてしまうわけじゃないですか。そこは拾ってくれた事務所とキングレコードの期待に応えたいし、現実問題としてお金にしていきたい。だからとても冷静です。(笑)

■強気になっているというよりは、強気を演じているみたいな?

Takassy そうですね。1曲1曲、現状のマインドを表しているというよりは、こういう曲で3人がどう演じたいか。そういうエンタメ性の方を重視しているので、歌詞の中に伝えたいメッセージを入れてはいるんですけど、今アゲアゲな気持ちだからアゲアゲな曲というよりは、「この曲でカッコよくパフォーマンスしてみたいよね」っていうのが先に立っている感じですね。

■そういう背景まで知って聴くと興味深いですね。ちなみに4曲目の“Sorry Not Sorry”に「レコ大作家の曲ぶん取って」という歌詞がありますけど、今作ではレコード大賞を受賞しているCarlos K.さんと多くの曲で共作していますが、どういう経緯だったんですか?

Takassy 今までは私が編曲まで全部やっていたんですけど、メジャーになるということで、また新しい風を入れていかないと息詰まるだろうと思ったんです。あと、私は編曲が好きじゃないので、ずっと「アレンジャーが欲しい」と言っていたんです。それでキングレコードから紹介していただいて、ファーストシングルの“Moratorium”から一緒にやり始めたんですけど、見事に肌が合ったので、アルバムではがっつり絡んでいただきました。

■“Sorry Not Sorry”だけ、作曲がCarlos K.さんの単独名義になっていますよね?

Takassy Carlos K.さんのスタジオで雑談している時に、私が「なんか聴きたい」と言って、いろいろ聴かせてくれた中にあった曲なんです。別のアーティスト用にストックされていた曲だったんですけど、聴いた瞬間に「これ、オカマが歌うしかないよね?」と思ったので、「ウチらが歌った方が絶対いい!!」と無理を言って歌えるようにしてもらいました。だから、この歌詞の通りぶん取った曲です。(笑)

■そんな裏話があったんですね!そんな勢いのある前半に比べて、後半は繊細な曲が多くて、特に6曲目の“女優(仮)”はタイトルからして印象的ですけど、どんなきっかけで生まれた曲なんですか?

Takassy アルバムの中でも、いちばんコロナの影響を受けてできた曲です。医療従事者の友人がいるんですけど、今は大変なのが当たり前みたいな風潮があって、そういう人たちのがんばりとか我慢とかが見えなくなっちゃっている。“女優(仮)”とは書いていますけど、男性でも女性でも、どんな人でも、今はがんばっていない人なんていないじゃないですか。でも、みんなががんばっているからこそ、ねぎらいの言葉がなくなっていく。その一言さえあれば明日もがんばれるのに、誰もそんなこと言ってくれない。「その一言をかける人が周りにいたら、ちょっと未来が違ったのかもな……」と思って。それに、このコロナ禍で「がんばろう!」みたいな曲は、いっぱい生まれていますけど、私は「ツラいとか言えない風潮でも、ツラいって叫びたい」、そういう声にできない声を歌にしたかったんです。

■そうだったんですね。なんでタイトルを“女優(仮)”にしたんですか?

Takassy 「(仮)」はニュースとかに出てくる仮名の「(仮)」ですね。今は誰しも女優のように仮面をかぶって、ツラさを隠しながら仕事をしている。そういう現状が「コロナっていう舞台の上で演じている女優さんなんじゃないかな」って。

■なるほど。5、6、7曲目と繊細な曲が続いて、最後は“ハッピーハッピーウェイウェイドンチー”でド派手に締めくくられますけど、これは意味のない曲を作ることがテーマだったんですよね?

Takassy そうです。“女優(仮)”とは対極になってしまうんですけど、年末にずっと音楽番組を見ていて、「がんばろう」「愛は大事だ」「命を大切に」「SNSで悪口を言うな」とか、疲れちゃったんですよね。1曲だけ聴いたらいい曲なんでしょうけど、そういう曲をずっと聴き続けていると、みんなの気合いがすご過ぎちゃって。そんな時に流れてきた坂本冬美さんの“夜桜お七”がすごく響いたんですよ。

■ひたすら「さくら さくら」と。

Takassy そうそう。意味がないわけじゃないけど、普通の演歌の恋愛ソングで、余計なことを考えずに聴けたんです。そう思った時に、「何も考えずに歌える、歌詞の行間すらないような曲が欲しい」と思って作りました。

■さっき、歌詞はLINEのノートで注釈をつけると話していましたけど、この曲にもあったんですか?

Takassy もちろんないです。だって、意味がないんですから。ただ、これを曲にしてしまった時点で意味が生まれてしまうんですよね。本当に意味のない歌を歌いたいんだったら、そういう曲は作っちゃいけない。矛盾をはらんだ曲です。

■「意味のないことを大事にしよう」っていう意味がある?

Takassy そうですね。でも、人生なんてそういう矛盾をはらんで、それでも楽しく生きていくものじゃないですか。だから、この曲は人生です。

■この曲を1曲だけ聴くのと、アルバムの8曲目として聴くのでは、全然印象が違ったんです。7曲目までで、「こういうことを考えている人たちなんだ」と知った上で聴くと、より意味がないことの意味を感じて。

Takassy それは嬉しいですね。“ハッピーハッピーウェイウェイドンチー”は新規の方の入口になって欲しい曲なんですけど、アルバムとしては出口というか。この曲をきっかけにアルバムを聴いてもらって、いろんなことを通った上で、最後はハッピーになって欲しい。それに「意味のない曲を歌いたい」と言っている曲を最初に持ってきちゃうと、あとの7曲が矛盾でしかなくなっちゃうので。

Kamus 確かに〜。

Takassy 「いろいろ言ったけど、結局意味のないことでいいじゃないか」って。オチみたいな感じになっているんですよね。

■アルバムができたことで、見えてきた今後のビジョンはありますか?

Takassy 大きなことを漠然と掲げるよりも、目の前にあることを着実に叶えていくことが大事だと思っていて。「次はフルアルバムを出したい」、「次はもう少し大きな会場でライブしたい」――そういう目標一個一個をスタッフみんなと考えて、着実に達成して、去年よりも大きくなっていくということを積み重ねていければ、それが夢が叶うことに近づくのかなと思っています。

HIDEKiSM 「Mステに出たい」、「武道館に立ちたい」、「紅白に出たい」……そんなの出たいに決まってるじゃないですか。このアルバムを聴いていただければわかる通り、これだけジャンルレスに詰め込んでいるんだから、ちゃんと欲深いんですよ。だから、今後の展望は「全部」。憧れてきたものは全部やりたい。これだけ派手派手にやっているんだから、やっぱり出たがりですよ。でも、みんないい歳なので、漠然とした憧れではなく、ちゃんと逆算して着実に叶えていきたいですね。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
それぞれが違うフィールドで活躍したのち、2017年3月よりユニットでの活動を開始した、Takassy(タカシ) 、HIDEKiSM(ヒデキズム) 、Kamus(カミュ)からなる、まさに唯一無二、最強オネエ・ユニット。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトに、同年よりスタートさせたYouTubeチャンネル「スナック・ENVii GABRIELLA」が話題をよび、現在に至るまで16万人を超えるチャンネル登録者数を保有しており、今なお物凄いスピードにてファンを増やし続けている。また、メインとしている音楽活動では、YouTubeチャンネルで見られるお茶目な素顔からは想像できない圧倒的なヴォーカル、3人の息の合ったダンスパフォーマンス、さらにトレードマークである“ピンヒール”でのパフォーマンスも大きな話題となっている。
https://engab.jp/

RELEASE
『Metaphysica』

KIZC 662~3(CD+DVD)
¥5,000(tax in)

KING RECORDS
3月9日 ON SALE