Non Stop Rabbit VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Non Stop Rabbit『無自覚の天才』

田口達也(Gt&Cho)、矢野晴人(Vo&Ba)、太我(Dr)

5年前までアルバイトしながら飯も食えなかった僕達が今こうしてるなんて、転生に近い

Non Stop Rabbitが7月20日にメジャー2ndシングル『無自覚の天才』をリリース。TVアニメ「転生賢者の異世界ライフ」の主題歌となった表題曲“無自覚の天才”は、爽快なロックチューン。一方でカップリングの“恋愛卒業証書”はシンプルなバラード、“豆知識”は歌詞に豆知識を詰め込んだ異色の楽曲になっており、田口のソングライティングの幅広さや、バンドとしてもYouTuberとしても軌道に乗る彼らの魅力を存分に感じることができる。
「無観客ライブは行わない」という信念に基づいてメジャーデビュー以降ライブを行ってこなかった彼らだが、今年3月には満を持して有観客でのワンマンライブを2日間で4公演敢行。タイアップにライブ開催、東名阪ライブ決定と、勢いに乗るノンラビの3人に、ライブの感想から今作の制作について話を訊いた。

■3月にメジャーデビュー後初、そして2年ぶりのワンマンライブを開催したみなさんですが、久々のライブはいかがでしたか?

田口 もうそんなに経ったのか……。ライブは嬉しかったです。楽しかったというよりも、嬉しかった。やっとできるようになったなっていう実感がありましたね。4公演あったので、めちゃくちゃ噛みしらめれました。

矢野 もういいよ!っていうくらい噛みしめられたね。

太我 めちゃくちゃ楽しかったです。

■チケットは43倍という高倍率でしたね。

田口 元々は2公演の予定だったんですけど、4公演にして正解だったなと思いました。

矢野 2日連続で2公演やるもんじゃないですよ……。普通やるとしたら1日なんです。

田口 でも面白い発見はあったよね。1日目に2公演やって、めっちゃ首とか痛くて。次の日もきついんですけど、2日目の2公演が終わったら痛みが全部なくなったんですよ!疲れで疲れを打ち消すっていう。(笑) 疲れの上に疲れをぶつけると消えることが分かった。(笑)

矢野 動けば治ったね。でももうやりたくない!(笑) 2公演やるなら1日だけですね。

■コロナ禍でライブができなかった期間はリリースが中心になったと思います。ライブの演奏とレコーディングは気持ち的にも異なると思いますが、改めてライブをするにあたって、気持ちの切り替えなど意識したことはありましたか?

太我 ライブをやっていないと衰えはしますけど、今までやってきたものがなくなるわけじゃないんですよね。だから普段と変わらずというか。ライブに出るまでは緊張の仕方とか忘れていましたけど、出てしまえばライブしていた頃と全く変わらないなって思いました。

矢野 そうですね。不安とかは特になかったですけど、お客さんが歓声を上げられない環境は初めてだったので、それに対しては不安というか、どうなんだろうって探る気持ちはありました。でも、いざ始まっちゃえば全然気にならなくて。すごく楽しかったです。できるものなんだなって。

田口 声のあるなしに関係なく、人がいるライブっていいなって思いました。僕らは無観客ライブをNGにしてきたので、人のいないライブ演奏はDVDの収録で1回やっただけなんですけど、その収録でもきつかったんですよ。「ライブってこんなんじゃない」って思いながらやっている自分がいて。だから人がいる時点で、向ける方向がちゃんとあるって思いました。

矢野 拍手とかもあるしね。

太我 むしろ、コロナ前の方が「ライブ=いつでも行けて当たり前」みたいな感じだったので、お客さんもすごく噛みしめている感じはありましたね。マスクをしているので目しか見えないんですけど、目がキラキラしていたんですよ。

田口 でも、ライブができなかったことで音楽の作り方は変わりましたね。メジャーデビューする前のアルバムって、ライブでどう盛り上げるかっていうことだけを意識して作曲していたので、とにかくバンドサウンドでノらせるっていう、ザ・バンドマンみたいな作曲方法だったんです。でもメジャーデビューするっていうタイミングで、1回作り方を考え直すタイミングもあったし、しかもこのご時世っていうことで、「どうやったら音源だけでも楽しめるんだろう?」っていう考えになりました。かつ、それをライブでどう盛り上げられるのかっていう曲作りに変わったので、そこは大きかったかもしれないですね。

■今回の表題曲“無自覚の天才”は、TVアニメ「転生賢者の異世界ライフ」のオープニング曲になっています。YouTubeでも話されていましたが、去年の早い段階から制作が始まっていたんですね。

矢野 そうですね。なので、タイアップの話を聞いた時は全然実感がなくて。今やっと、来週、再来週から放送だっていう段階になって、「ついにだな!」っていう思いです。少年漫画にはずっと関わってみたかったので、すごく嬉しいですね。

■制作にあたっては原作にも目を通したと思いますが、いかがでしたか?

田口 「この部分までをアニメにしたいから、ここまで読んで」っていう指定の範囲があったんですけど、話がめちゃくちゃ面白くて。資料として送ってもらった分からさらに自分で買い足して、言われた範囲の後も読みました。それから制作していきましたね。

矢野 僕は1巻だけ読みました。アニメで続きを観たいなと思っていて。わくわくというか楽しみを取っておきたいみたいな。

太我 すごい面白かったです。

田口 読んでねえだろ!

太我 (笑) 僕、文字を読むのがあんまり得意じゃなくて……。漫画も一切読まないんですけど、アニメは大好きなんですよ。アニメを観て面白いって分かったら、漫画に戻って読むことはたまにあるので、これからの僕に注目してもらえればいいなと思います。アニメの放送が終わった後に僕がこの漫画を読んでいたら、この作品は本物だっていうことですね。(笑)

田口 お前いったい何者なんだよ!「あの太我が読むくらいの作品」っていうね。(笑) 

■(笑) 作品を読んで、どういった部分から着想を得て書き始めたんですか?

田口 まず読んで思ったのが、設定が面白いなと。ただのサラリーマンだった人が急に転生して、そこでついた職業がすごく強くて。これって自分たちでもあり得ることだし、ちょっと似てるなって思ったんですよ。5年前までアルバイトしながら飯も食えなかった僕たちが、今こうしてメジャーで活動しているなんて、転生に近いなって。だから、自分たちにも当てはめられるなと思って。僕たちは気付いていないだけで、化け物みたいな力を持っている可能性だってあるっていうところからサビが浮かんだ感じですね。

■転生っていう一見非現実的なテーマではあるものの、リアルに捉えていたんですね。

田口 そうですね。環境を変えたら才能が開花する人とかって結構いるじゃないですか。まさにこの漫画はそういうことだなって思いました。転職だったり、転校でも一緒だなと思ったので。

■曲調はノンラビらしいバンドサウンドですね。

田口 パッとアニメで流れた時に、男性アイドルグループでもなく、アニソン歌手でもなく、バンドだなって一発で分かるようにしたかったんです。なので、とにかく楽器から始めようと。バンドとしての意識はかなりしましたね。

■その他にアニメで流れるから特別に意識したことはありますか?

矢野 僕はないですね。今まで通りというか。ノンラビの曲はどれもオープニングとかに使えると思うので、今からでも使って欲しいくらいなんですけど、その中の1曲としてこれができたっていう感覚なので、いい意味で普段通りというか。特別いつもとなにかを変えたりとかはしていないです。

田口 構成だったりサビへの行き方は意識したかもしれないです。サビ前で一回止めて、楽器と時計の針の音だけにするというのは今までやったことなかったですし。「その方が映像を作りやすいんだろうな」とか、サビで一気に技がでたりするのを想像しながら、「映像をこういう風に作ってもらえたらいいな」と考えながら作りました。

矢野 でもまだオープニング映像見てないじゃん?想像してたやつと全然違うかもよ。(笑)

太我 サビでスライムが踊ったりとか。(笑)

田口 それはそれでいいね!(笑)

■時計の針の音を入れるっていうのはどこから思いついたものなんですか?

田口 作中では転生の条件は分からないんですけど、どっちにしろ時間は流れているなと思って。作品を見ていると、転生した後に敵に立ち向かっていく時の方が生き生きと時間が流れている感じがするんです。社畜の時って時間を無駄にしてる感覚だったけど、転生した後は「秒針まで生きている感覚がするな」と読んでいて思ったので、絶対に時計の針の音を使いたいなと思って。

■先程、「自分たちも転生したみたいなもの」という話もありましたが、みなさんはもし異世界に転生したらどういうことをしてみたいですか?

田口 せっかく転生するなら本当にこの作品みたいなことをやりたいですね。魔法を出したりとか。

矢野 可愛いヒロインに囲まれてハーレムになりたい。

太我 国のトップになってみたいなって思います。やばいルールを作りたいですね。

■三者三様の回答ですね。(笑) 一方“恋愛卒業証書”はラブソングです。田口さんの書くラブソングはいつも客観的というか、ロジカルだなと感じます。

田口 人より俯瞰で見ている感覚はありますね。とにかく冷静に。今回は、はるの声にハマればいいなと思ってバラードにしたので、それが今回は上手くできたなと思っています。これは恋愛の曲として書いていますけど、元々は人間の生死を題材にしていて。でもそのまま書くのは重すぎて違うなと思ったので、恋愛に当てはめて書きました。頭の「なんで生まれたら死ななきゃいけないのに」とかは、恋愛ソングにはまず出てこないような歌詞ですけど、そういう題材があったからこそのフレーズですね。

■タイトルにある「卒業証書」もキーワードだなと感じました。

田口 僕の知り合いで亡くなった方がいて。でもそれをいいバネに変えて「あの人の分まで頑張ろう」って思うタイミングって結構あると思うんですけど、そういうのが恋愛でもあると思っていて。別れてずっと引き摺っているけど、「早く忘れて次に行こう」みたいな。それって証書みたいな次に進むための何かを貰って、次のものに立ち向かっていくっていうことなのかなと思って。そういった意味で自分に卒業証書を渡して、「あなたはよく頑張りました、次に行ってください」っていうのを書きたいなと思って。