川口レイジ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

川口レイジ『Departure』

アーティストとしての出発点、そして歌とメッセージの出発点
メジャーデビューEPリリース

YouTubeで62億再生を突破したヒット曲“DESPACITO”のソングライター・Marty Jamesと、日本人として初めて共作したシンガーソングライター・川口レイジが、メジャーデビューEP『Departure』をリリース。Martyと制作した“Summers Still Burning”をはじめ、トップライナーとのコライトから生み出された全7曲。独自の方向性を見事に打ち出したこの『Departure』から、彼の可能性はまだまだ広がっていくであろう。Martyとの出会いについて、コライトでの制作について――彼の音楽との出会いまで遡り、話してもらった。

■デビューEPのリリースを控え、どんなお気持ちでしょうか?

川口 『Departure』というタイトルに込めた意味、それがそのまま僕の気持ちですね。自分が出発するという意味もあり、この作品が僕のもとを出発して、たくさんの人に届けばいいなという意味もあります。この1枚がきっかけであり、大事な通過点でもあるので、しっかりと気を引き締めているところです。

■作品を作るうえでイメージしていたことはありますか?

川口 全体では夏がテーマになっていて、“Summers Still Burning”や、“Like I do”のラテンのサウンドやビートが中心にはあるんですが、今回は全曲コライトで作っていて、邦楽でもなく、洋楽でもないところというか、自然な場所に落ち着いたなって。“falling down”や“two prisoners”といったバラードもあるし、ラテンサウンドもあるし、そういう意味ではバラエティ感を出せたと思うし、それを足がかりに自分のやっていきたい方向や特徴もしっかり出せたと思います。7曲という曲数の中で、どれだけ自分のアーティスト性を出せるかということを考えて作ったので、結果、自然といいところに落ち着いてくれたんじゃないかなと思います。

■このEPに至るまで、川口さんにとってMarty(James)さんとの出会いが大きいと思うのですが、出会ったきっかけというのは?

川口 僕は高校の頃に野球をやっていたんですけど、怪我で挫折してしまったり、父親が亡くなったりで、心に大きな穴が開いてしまったんです。そのとき、その穴を埋めてくれたのが音楽で、それが僕の音楽の始まりなんです。それからストリートライブやインターネット配信をやるようになって、今のソニーのスタッフさんに声を掛けていただいて上京したんです。だけど、当時、自分のライブにはエンターテイメント性のある曲が足りないなと感じていて、そこから洋楽を聴くようになってハマりはしたんですけど、それを上手くアウトプットできなかったんです。

■それは?

川口 それは自分のバリエーションの少なさもあったし、小さい頃から音楽というカルチャーにあまり触れてこなかったっていうことも大きかったんでしょうね。

■当時はどのような音楽をされていたんですか?

川口 高校のときにギターを弾くようになって、そのとき好きだった女の子が聴いていた椿屋四重奏の中田裕二さんが、玉置浩二さんの“しあわせのランプ”をカバーしているのを聴いてから、ずっと玉置さんが好きで。それまで自分で培ってきた音楽性もないので、どうしても好きなものに偏ってしまうというか、玉置さんの曲のコードとかリズムに自然と寄ってしまって。違うように違うようにって意識はするものの、そんなスキルもなく、そもそも弾き語りスタイルでやっていたので、表現もしづらかったりしたんですよね。

■なるほど。

川口 試行錯誤してずっと悩んでいたんですけど、「ロサンゼルスで海外のトップライナーと一緒に曲を作る話があるけど行ってみないか?」って、ソニーのスタッフさんに誘っていただいて、そこでMartyさんと出会ったんです。海外にも行ったことなかったので、パスポートを取りにいくところから始まって。

■不安はなかったですか?

川口 けっこう新しい環境に飛びこめるタイプなんで。(笑)

■たのもしいですね。実際にコライトされてみていかがでしたか?

川口 自分自身の曲作りに対しての工程を確立させていたわけではなかったので、そこに関しての衝撃はそんなになかったんですけど、やっぱりカルチャーショックは大きかったですね。いちばんびっくりしたのは音の良さ。生音がすごく瑞々しいんですよ!逆にシンセサウンドが分厚かったりするし、スピーカーもすごくいい。そういうのがいっぱいあり過ぎてびっくりしましたね。そこでトップライナーをブッキングしてもらって、その中にMartyさんがいて。身長も大きいし、自分が想像しているアメリカ人像、元気でエネルギッシュで大きくてって、それが全部2倍増しくらいの人で。(笑) それもびっくりしました。

■そこからどのようにコミュニケーションを取っていったんですか?

川口 もちろんやさしい人ではあるんですけど、アメリカの文化的に、初対面で「おまえはどれくらいできるんだ?」みたいな見られ方をするんです。だから、僕もそこは最大限できる限り頑張って、そういう中でお互い認め合っていった感じですね。これくらいできるんだってことがわかると、お互いどこまでやればいいのかもわかってくるので、作業も早くなってくるし。

■そこはもう最初から心をオープンにしてという感じでしたか?

川口 そうですね。むしろ何も考えずにいくのがいいと思いましたね。大きくいなくちゃいけないとか、気を遣わなくちゃとかじゃなくて、普段のままいくとちゃんとハマるというか。例えば、特に日本だと「これは言っちゃダメかな」とか考えることが多いと思うんですけど、言うべきことはちゃんと言わないと、変に相手に支配されてしまったり、そうなると曲も意図しない方向にいっちゃったりするんですよ。だから、思うことがあったら「ちょっとゆっくり話してもいい?」って、その都度ちゃんと言うようにして。立場とか関係なく、いい意見だったら取り入れてくれるし、そうでなかったら跳ねのけられるし。だったら言うだけ言ってみようって。