さかいゆう VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■演奏についてはどんな制作の進め方をしたんですか?

さかい 今流行りのリモートレコーディングです。まさにコロナが生んだカバーアルバムだと思います。受け入れるっていうのも大事なんだなって思いました。だってリモート録音だったら、時間はいくらでもあるってことになるわけじゃないですか。コントロールやジャッジもすごくしやすくなるので、そういう強みを生かして、それぞれが思い描く音像を「こんなのどう?」みたいな感じで気軽にデモテープ送ってくれたり、そういう感じでやっていました。スタジオだったら、こと細かくやることを決めてスタジオに臨まないと、1日1曲録れないですからね。今の時代を受け入れて、肯定的にこのプロジェクトを進めていきました。

■カバー曲の面白さはどんな部分だと思いますか?

さかい メロディーと歌詞が全く一緒で、やっている人が違うとこんなに違うんだっていう楽しみがカバーアルバムにありますよね。だからどう崩すかと、どう守るかのせめぎ合いですね。崩すのは簡単だったりしますけど。だから僕はそこまで大きくは変えていないんですよ。ちょっとハーモニーが違ったり、ビートが違ったり、機材や使っている楽器がちょっとずつ違うんだけど、原曲のコードから思いっきり変えるっていうのはあんまりないようにしました。そのコードじゃないとあれにはならないっていうコードとメロディーだったりするので、間にちょっと現代的な決めがあったり、リバーブ感が現代的だったり、そういう違いで十分違うものになる。ビートとかテンポをちょっとだけ変えて、2022年の僕とorigami PRODUCTIONSが思うシティポップを作ったっていう感じですね。

■プロデューサーをさかいさん自身が務めている楽曲も3曲ありますよね。この曲だからやりたかったみたいなことがあるんですか?

さかい いや、みんなに1曲ずつはプロデュースしてもらいたくて。でも多分余るだろうなと思ったので、それは自分でやろうということですね。でも“オリビアを聴きながら”と“夏のクラクション”はボーナストラックっていう気持ちも多少あって、ちょっと足りないぐらいにしているんですよ。“オリビアを聴きながら”は途中までベースが出てこなくて、ビートとシンセ、キーボードの弾き語りくらいにしていて。“夏のクラクション”も普通にやってもよかったんですけど、ベースと家にあるローズと歌だけにすることによって、原曲にはない緊張感とスペースが生まれて、コーラスが入った時にダイナミクスをつけられるので、そういうアレンジにしました。

■“夏のクラクション”は……

さかい 今、“夏のクラクション”って、語尾上げる形で言いました?今後どうやって発音していこうかなって思っているんですよね。イントネーションって結構大事じゃないですか。アクセントっていうのも面白いなって思うんですよね。英語は子音があるし、日本語ってすごい重たい母音の言葉だけど、その抑揚で感情とかわびさびを表すことができる。「あの子の命は」っていう歌詞も「命」のイントネーションだから結構耳に入るんですよね。普通に日々発するアクセントでメロディーを付けると、すごく耳に入ってくる。ユーミンさんとか、そういうの上手いんですよ。小田さんだったら「君を」の「き」をかなり強めに言ったり。それってやっぱり「ハッ」とするじゃないですか。それは発明ですよね。あと“SPARKLE”のアクセントが「パ」だったり、“夏のクラクション”は「な」から始まったり、“RIDE ON TIME”も「ラ」から始まったり、何かを始める音って母音が「あ」なんですよ。「あ」って、「明るい」とか「上がる」とか「晴れる」とか「開く(あく)」とか、人を明るくする、背中を押す言葉が多くて。ちゃんと1音1音に言霊がある。

■そこが日本語の面白さですね。

さかい そういう技がシティポップにもあるんですよね。曲と言葉、声色、音像が結び付いてるっていうところも芸術的な職人芸なんだなって。

■改めて今作が完成して、どんな作品になったと感じていますか?

さかい もうちょっと時間が経たないと分からないですね。自分らしく息の長いアルバムになってくれたらいいなとは思っていますけど、それも自分で決められることじゃないから。作っている時は、自分がずっと愛してあげられるもの、他の人に受け入れられなかったとしても、「僕は聴きたい、僕は素敵だと思うアルバムを」っていう基準で進めていて。だから答えがないからすごく時間がかかったんですよ。僕が60歳くらいになって、「20年前のこのアルバム、未だに聴いても古くならないね」って言えるものを作らないといけない。でも、その時にできる限り想像力を働かせて、トレンドとかに左右されずにエバーグリーンなものを真心込めて作るって、簡単そうで意外と難しいんですよね。難しいというか、しつこさ、異常さが必要。でもそれがないと名盤は生まれないんだなって思います。だからこのアルバムが名盤になってくれるかどうかは、「20年後さぁどうでしょう?」っていう感じですけど、少なくとも今自分ができるベストを尽くしたっていう感じですかね。

Interview & Text:村上麗奈

PROFILE
高知県出身。高校卒業後、18歳の時に突如音楽に目覚め、20歳で上京。22歳の時、単身でLAに渡り独学でピアノを始める。唯一無二の歌声と、SOUL・R&B・JAZZ・ゴスペル・ROCKなど幅広い音楽的バックグラウンドをポップスへと昇華させる、オリジナリティ溢れるサウンドが魅力の男性シンガーソングライター。2009年10月7日にシングル『ストーリー』でメジャーデビュー。2018年から世界中で楽曲制作・レコーディングを行う旅をスタートさせ、世界的なプレイヤーとのレコーディングを実現。2022年6月22日、“Whale Song”(酔鯨酒造50周年記念ムービーテーマソング)をはじめ、故郷・高知にまつわる楽曲を集めた『Whale Song EP』をリリース。
http://www.office-augusta.com/sakaiyu/

RELEASE
『CITY POP LOVERS』

初回生産限定盤(CD+DVD)
POCS-23909
¥4,950(tax in)

通常盤(CD)
POCS-23029
¥3,300(tax in)

newborder recordings / Office Augusta Co., Virgin Music Label & Artist Services
11月30日 ON SALE
https://virginmusic.lnk.to/CITYPOPLOVERS

LIVE
■さかいゆう 野音ライブ
4年越しの野音ライブ開催
2023年4月8日(土)開場16:00 / 開演17:00(20:15終演予定)※雨天決行・荒天中止
会場:東京・日比谷野外大音楽堂
ゲスト:Ovall, Michael Kaneko, Nenashi a.k.a Hiro-a-key, Shingo Suzuki, mabanua, 関口シンゴ, さらさ
チケット:全席指定7,000円(税込) ※小学生以上有料
チケット一般発売:2023年2月4日(土)
★『CITY POP LOVERS』CD購入者特別先行予約(抽選制)
受付期間:2022年11月30日(水)12:00[正午]〜12月18日(日)23:59
https://www.office-augusta.com/sakaiyu/