■では、mukuさん、ふわふわのカニさんの今作の手応えを聞かせてください。
ふわふわのカニ 大黒も言った通り、高校時代に作った曲もあり、“いらない”はあの時だったら、こういうサウンドにならなかったんだろうなと。“HOW IS LIFE”も高校の頃ならもっと難しいことをやっていたと思うんですよ。今は聴かせることに重きを置いて、ドラムのフレーズも考えていますからね。
muku 本当に振り返りの作品でもあり、ベースに関しては自分の手癖ではなく、新しいアプローチも入れていて、いつもとは違う感じのプレイができたと思います。特に“HOW IS LIFE”、“いらない”は自分の手癖ではないから。“東京”については、自分がやりたいことをやっても成り立つ感じだったので、好き勝手にやらせてもらいました。
■今作を聴いて、気分がちょっと落ち込んでいる人や、これから何かを始めたい人の背中を押してくれるような作風だなと思いました。聴き手の心に優しく寄り添ってくれる楽曲が多い印象を受けました。
大黒 暗い曲もよく書いてはいて……それこそ“Numb”、“know pain”とか、鬱屈としたものもあったけど、今回はミディアムテンポでストーリー性のある“東京”という曲もありますからね。悲しいことを歌っているけど、これからに期待しているメッセージを入れているから。「落ち込んでばかりはいられない」という心情が、今作を作っている時にあったんです。自分としてはまっすぐ正面を向けた曲が多いですからね。だから、聴く人の背中も押せるように、“TEARS”みたいな曲を作ったんです。割りと抽象的に歌っているけど、僕がライブハウスに行った時に感動して涙を流すことがあって、それはとても美しい行為だなと思い、その行為が愛しいという気持ちで書きました。
■“東京”の歌詞の中に「君は一人じゃない」とありますが、それもまた今作の中で伝えたいメッセージの一つなのかなと。
大黒 お客さんと同じ目線で歌いつつ、その上で引っ張っていきたいし、言い切ってちゃんと安心させるのがバンドの役目かなと思って。回りくどく言うんじゃなく、「君は一人じゃない」というフレーズを叫ぼうと。
■あと、 “いらない”は今作の中でもヒリヒリした激しい曲調ですが、歌詞もすごく攻撃的ですね。
大黒 「他人の光を餌にして飯を食うバカに用などない」という歌詞をマネージャーに見せた時、確かに不安がっていましたね。(笑) 同じ歳のバンドでもこれはダサイよね、という価値観が似ていて。仙台にSPIKE SHOESという重鎮のハードコアバンドいて、ライブを観た時に「ハードコアは憎しみを武器にしているけど、それはあなたに向けたものではなく、共通の敵に対して向けたものだ」と言っていて。誰かが悲しんでいる時に慰めるような曲も好きだけど、一緒に闘って憎しんでくれる曲も必要だなと。「信じるただ一つを」という歌詞は、ルサンチマンというバンドの“not wrong”という曲の中に、「甘いだけの歌は腐っちまうぜいつか」という歌詞があって、一過性のもので終わらない腐らない曲を書きたいなと思って。ルサンチマンに対するリスペクトも込めて、「甘いだけの歌 いつしか くさっちまうよ」という歌詞を書いたんです。
■そうだったんですね。“いらない”はギターもヘヴィさも際立っていますよね。
大黒 憎しみを歌にしようと思ったから、ザラついた攻撃力の高いサウンドにしたくて。
シマヌキ メインリフを作ったのは大黒ですけど、この曲は激しく弾きました。KOTORIのドロップの曲“unity”とか聴いていましたからね。
■なるほど。今作は全体を通して、メッセージ性の強い作品になりましたね。
大黒 昔は「みんな違って、みんないい」という気持ちがあったけど、「そんなことはないぞ、自分たちが信じたものを信じ切ろう」という思いは強くなりましたね。
■今作のレコ発ツアーは9月から始まります。どんな気持ちで挑もうと思っていますか?
大黒 今回ツーマンするバンドは、自分がフロアで観ていた人たちばかりだから、200%で闘いにいかないと絶対に倒されてしまう相手なんですよ。自分たちを観に来てくれた人は絶対に楽しませたいけど、「鉄風東京はどんな感じなんだ?」と思っているお客さんにもカッコいいところを見せたいです。
ふわふわのカニ 大黒も言ったけど、200%で闘って、その中で吸収できるものがあればいいなと。
muku これを機に対バンの人と仲を深めて、楽しくライブができて、いいツアーだったなと思えたら最高ですね。ツアー最後までに成長できたらいいなと。
シマヌキ 出せる力を全部出そうと思います。いい経験になると思うし、次のツアーに繋げられたらいいですね。
Interview & Text:荒金良介
PROFILE
仙台を拠点に活動する、平均年齢20歳の4ピースオルタナティブロックバンド。エモのエッセンスを感じるアルペジオと等身大の歌詞、疾走するギターサウンドが特徴。結成から現在に至るまで、ライブを大事にするスタイルで活動している。2020年に公開した“外灯とアパート”の MVは100万回再生を突破。2021年に1stEP『Nokosu』をリリースし、タワクル展開店の全5店舗で1位を獲得。2022年、1stシングル『遥か鳥は大空を征く』は、TOWER RECORDSの「タワレコメン」とスペースシャワーTV の「it!」に選出される。10月には、2ndシングル『BORN』を引っさげ全国ツアーを開催し、各所ソールドアウトした。2023年1月にはバズリズム02の「これがバズるぞランキング 2023」で16位にランクイン。3月に『FLYING SON』を配信リリース。勢いそのままに、初の大型野外フェス「JAPAN JAM」、「OTODAMA ʻ23 ~音泉魂~」にも出演を果たした。6月21日には待望の新曲『TEARS』を配信リリースし、7月に初の全国ワンマンツアーを開催。9月13日に1stミニアルバム『From』をリリースし、全国2マンツアーを開催。
https://tepputokyo.jp/
RELEASE
『From』

NBDL-0109
¥1,500(tax in)
No Big Deal Records
9月13日 ON SALE