Tiara VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Tiara『All About Tiara』

10年間の日々と私の歌を重ねて聴きながら、何かしら心が動いたら嬉しい。

デビュー10周年を総括したデジタル・ベストアルバムを3ヶ月連続リリース中のTiara。Kとコラボレートした新曲“あいのかたち with K”を含む、いろんなアーティストとコラボレートした楽曲を集約した全17曲入りの『All About Tiara Ⅰ/ Collaboration Best』。時代や性別を超え様々なアーティストやバンドの楽曲をカバーした、全34曲を収録した『All About Tiara Ⅱ/ Cover Songs Best』。Tiaraのオリジナル曲の中から、ファン投票のもと選んだ上位30曲をまとめた『All About Tiara Ⅲ/ Fan Selection Best』。3枚の作品の話を軸に据えながら、Tiaraの10年を振り返る気ままなトークをここにお届けします。

■Tiaraさんがデビューした10年前といえば、世は着うたブーム真っ盛りの頃…でしたよね?

Tiara そうです。なんか不思議なブームでしたよね。当時はリリース数がとにかく多くて、常に楽曲をレコーディングしていた日々でした。

■あの頃は、まだガラケーでしたよね。改めて「そうか、10年前はまだガラケー全盛の時だ」と、懐かしく振り返ってしまいました。

Tiara まさにガラケー全盛の時代でした。(笑) 私、ケータイを捨てられない性格だから、歴代のケータイが今も手元に残っているんです。中には、移せていないデータもあって、写真などのデータをどうにか移行したいと思いながら、今もそのままの状態にしています。(笑)

■むしろ、今は古いケータイ自体が貴重な財産にもなっているんじゃないですか?

Tiara どうなんでしょうね。今、子供が5歳で女の子なんですけど、この際だからこの子が大きくなるまで手元に保管しておいて、「昔はこんなのがあったのよ」と見せようかなと思っていて。きっと娘に「こんなの使ってたの?!」って、言われそうだけど。(笑)

■当時のガラケーって、軽くて小さくて利便性も良かったですよね。

Tiara ガラケーって操作が簡単だったじゃないですか。どんなアプリを入れていたのか、たまにわからなくなるくらい、スマホは情報量が多すぎて…。昔は昔の良さがあったように、どちらが良いのかと考えてしまうこともたまにあります。

■ガラケーが今や懐かしさを覚える存在のように、常に時代は進化と変化し続けていますよね。今回Tiaraさんが3タイプのベスト盤をCD盤ではなく、デジタル配信で届けたのも時代の流れに合わせた形ですよね?

Tiara そうです。本当はベストアルバムとして1枚のCDにパッケージする予定でしたけど、コロナ禍の影響や今の時代の流れに合わせてデジタル配信に変えました。結果、3部作としてリリースする事になったり、収録曲数に制限がなくなった事で、本来であれば収録できなかった曲たちもぎっしり収録できたので、そこは良かったです。

■コラボレート、カバー、オリジナルと、3つの視点からTiaraさんの10年間を集約していますからね。

Tiara 今回はオリジナルの曲は30曲収録して、それでもまだまだ未収録の曲はあります。コラボレートの曲はほとんど収録して、カバー曲に関してはすべて収録しました。これらの楽曲をずらっと並べた時、改めて「こんなに沢山歌ってきたんだなぁ…」と、感じてしまいました。

■カバー歌だけで34曲って、すごくないですか?!

Tiara 2枚同時カバーアルバムのリリースなんて時期もありましたからね。(笑) あの2作品の制作時期は、本当に修行僧のような毎日で。それこそ1日1曲歌入れして、1日喉のためにお休みを入れつつ、次の曲の準備をし、その翌日にまた1曲歌入れをするという日々の繰り返しを2ヶ月間行ないました。そのおかげで、新たに吸収できたこともいろいろあったから、大変でしたけど良い経験だったなと思っています。

■デビューからの数年間はリリース数も多かったですが、とても目まぐるしい日々だったんじゃないですか?

Tiara そうでしたけど、私はレコーディングを行なうのがすごく好きなので、当時も今も、こうやって歌入れしていられることに幸せを感じています。

■Tiaraさんは、自ら作詞・作曲も行ないますけど、他の方々から楽曲提供をしていただくことも多かったですよね。

Tiara 私はよくシンガーソングライターとご紹介いただくんですけど、確かに半分くらいは自分で作っていますが、もう半分は他の方からご提供していただいた楽曲を歌い続けてきました。というのも、自分の中にはないスタイルの楽曲も歌いたいからなんです。そういう曲たちが、私自身にも新鮮な刺激を与えてくれますからね。

■『All About Tiara Ⅰ/ Collaboration Best』で、Kさんとコラボレートした新曲“あいのかたち with K”が収録されていますが、この歌を聴いた時、以前とは歌詞の視点が違ってきた印象を受けました。

Tiara それはあると思います。デビューした10年前の私は、実生活の中で、恋愛一つに於いてもいろいろ悩んでいた時期で。その当時の気持ちを歌詞に反映していくことがあの頃は主でした。だけど、この10年間の中で結婚をして、出産も経験したように、自分を取り巻く環境もいろいろ変わってきました。それに合わせて自分の意識も、表現する思いも変わっていくのは自然なことだと思います。

■根底にある意識は変わらずとも、その人の経験値によって視点が変わるのは当たり前ですからね。

Tiara そこは良い意味での変化だと私は受け止めています。以前は1日中歌に集中する時間を毎日のように過ごしていて、寝ても覚めても楽曲のことが頭の中からずーっと離れずにいました。つまり、頭の切り換えができなかったんですよね。だけど、今は子供が側にいるので、家庭の中で自分がやらなきゃいけないことがとても多いから、楽曲のことを集中して考える時間がどうしても限られてしまう。それが功を奏したと言いますか、逆に意識の切り換えが上手く出来るようになったなと自分では感じています。歌手のTiaraとしての仕事が終わった瞬間から、「今晩の子供のご飯はどうしよう?」と、母親の意識に変わっていたり。そこも私の中では大きな変化でしたね。

■今の環境があるからこそ、Tiaraさんの表現の視点にもより広がりが出たんでしょうね。

Tiara それもあると思いますが、何より自分を表現できる場所が今もしっかりあることが、意識をそうさせているんだと思います。結婚や出産のために3年間休んで、復帰をして、子育てのためにまた3年間休んで、そしてまた今回復帰して、という状況の中で音楽活動を続けています。休んでいる時期はTiaraというアーティストではなく、普通に一人のお母さんとして、家族のために毎日を過ごしています。その環境の中から音楽業界へ戻ってみると、たった3年間でも動きがだいぶ変わっているので、私自身が新鮮な気持ちで音楽へ接していけるんです。それが結果的に表現の視点も広げてくれているのかも知れません。

■Tiaraさんの場合、お休み期間を繰り返す前の日々はものすごく忙しかったですよね?

Tiara とくにデビュー時期は、振り返る余裕なんてまったくなかったくらいに忙しい毎日でした。だから、10周年という一つの節目をきっかけに、今回自分の10年間を振り返られたのは、すごく良い機会になりました。

■あの激動の時期を過ごしてきたことが、今のTiaraさんの基盤にもなっているわけですね。

Tiara ものすごく大変なあの時期を乗り越えられたことは、私の中でもすごく自信になっています。

■ここからは、改めて3枚のデジタルベスト盤について振り返りたいなと思います。『All About Tiara Ⅰ/ Collaboration Best』に収録されている、“あいのかたち with K”の歌詞は、家庭・家族を持った夫婦だからこそ書ける内容だと感じました。そこにも今のTiaraさんのリアリティを記したかったわけですよね?

Tiara リアリティのある想いを記したい意識は昔から一貫してあることなんです。ただの恋愛ソングは、今の私のリアルにはないなぁ…というところから、こういう形(夫婦間についての想いを記した歌詞)の歌になりました。今年は大切な人との距離感をいろいろ考える時間が増えたという方が沢山いらっしゃるかと思いますが、私自身を見ても、これまで日中は家にいなかった旦那さんが平日も家にいる。それだけでもういつもの生活とは違いますからね。身近なママ友たちもよく、「毎日家に旦那がいるから、私の居場所がない」と会話をしているんです。主婦にとっては、旦那さんが会社へ行き、子供が幼稚園に行っている間の、一人でいられる時間がとても大切なものなんです。その時間があるのと無いのとでは、ストレスの溜まり方も違ってきます。そういう意識も一緒に歌ったKくんとも話をして、「夫婦間のリアルな揉め事も歌の中へ入れたいね」という会話もしたうえで、“あいのかたち with K”を作りました。本当はもっといっぱい生々しい話はしていたんですけど、さすがにそれを歌詞には書けなかったです。(笑)

■Tiaraさんのデビュー時期は、アーティスト同士がコラボレートする機会が多かった頃でしたよね。

Tiara そうでしたね。私の場合、インディーズ時代にケツメイシさんのコーラスをやっていた時期もあったので、あの当時はHIP HOP系の方々とお会いをすることが多くて、コラボレートする機会もとても多かったです。私自身は、決してHIP HOPに詳しいわけではないんですけど、自分の知らない世界の人たちとコラボレートするのは、すごく新鮮でとても面白かったですね。ただ、普段の自分の環境とは異なる場なので、レコーディングなどは毎回挑戦でした。

■今もそうですが、あの当時はとくにコラボレートを通してアーティスト同士の関係を深めていくことも多い時代でしたよね。

Tiara 私は下積み時代が長かったから、デビュー前にステージでご一緒させていただいていた方たちと、デビューしてからコラボレートが実現したこともありました。とくに“WINTER GIFT with MIHIRO 〜マイロ〜”で共演したMIHIROさんは、私がデビューできるかもわからない時代にライブハウスで出会い、その時にご本人に向かって「私、いつかMIHIROさんと一緒に歌いたいです」と言っていたんです。その夢が叶ったので、あの時から頑張り続けて良かったなとすごく思っています。

■コラボレートした方一人一人と、いろんなドラマがあるんだろうなと想像します。

Tiara ありますね。“My Girl Friends/Tiara×AZU×片桐舞子(MAY’S)”でコラボレートしたAZUと舞子ちゃんは、デビュー時期もほぼ一緒だったし、同世代の仲間なんです。彼女たちの活躍を見ながら、尊敬もしていますし、私も負けられないと頑張れたので、そういう存在が今も身近にあるのは大きな励みになっています。