樋口侑希(Vo&Gt)、古澤徳之(Gt&Cho)、黒野滉大(Ba)、安田吉希(Dr)
夜明け前、俺らの革命の合図
滋賀のロックバンド、WOMCADOLEがアルバム『黎明プルメリア』でメジャーデビュー。強い意思と熱い魂が刻まれた全13曲、嘘偽りのない1枚。痛みや不安と向き合い、常に闘い続ける姿は、たとえその一歩が踏み出せないとしても、わたしたちに光を与えてくれる。ともに旗をぶっ刺しにいこうというメンバー4人に、アルバムについて話を訊いた。
■メジャーデビューされて、気持ち的に変わったところとかありますか?
樋口 大きく変わったのは携わってくれる人の数が増えたことくらいで、あとは……うれしい。
安田 いろんな人に「おめでとう」って言ってもらえるからね。
■地元のライブで発表されたんですよね?
安田 B-FLATで。
■どんなお気持ちでしたか?
安田 アンコールのときに樋口が発表したんですけど、思っていた以上にお客さんが喜んでくれて、涙流してくれている子もいたりして。それを見てつい泣きそうになったけど、自分は演者やから、曲はちゃんと演奏しないとって、それで、楽屋に帰ってめちゃめちゃ号泣しました。(笑)
■そこまでの反応は想像してなかったですか?
樋口 めちゃくちゃすごかったもんね!
安田 「おぉー」じゃなくて「うわーーーーー!」って感じで、熱量がすごかったんですよ。
樋口 ほんとの声が出た感じ。
安田 そうそうそうそう。ほんとの声、ガチの声。そこで面食らったというか、グッとくるものはありましたよね。
■自分たちがほんとの想い、ほんとの声を届けていたからの反応でもあるんでしょうね。
安田 だとしたら、うれしいですよね。
樋口 俺はそういうのが好きなんですよ。考えるよりも先に出てしまうものじゃないですか、声って。俺はその声が好きで、あの日はめちゃめちゃそれを感じた。しかもリアルに、鮮明に。なので、俺は我慢できなかったですね。
■そうなんですね。
樋口 はい。耐えようと思ったんやけど、ま、いっかって。(笑) ありのままでいようと思ったら、もう涙が止まらんくなってしまいました。
■黒野さんはどうでしたか?
黒野 発表した瞬間はドヤ顔だったんですけど、僕もやっぱり泣きましたね。お客さんたちが泣いているのを見て、きましたね。人が泣いているのに弱いんですよ。
■もらい泣きしてしまうタイプですか?
黒野 めっちゃしてしまう。卒業式も最初は泣かんかったけど、クラスの代表格のヤツが教卓のところで男泣きしながら語っているのを見て泣いちゃったりして。だから、それを思い出しました。卒業式を思い出して、それと一緒くらい泣きました。いや、一緒くらいじゃなくて、それより泣きましたね。(笑)
■なるほど。(笑) 古澤さんはどうでしたか?
古澤 樋口がMCで発表したんですけど、最初はもう発表しないの?っていうくらいのテンションのMCだったんですよ。普通に「アルバムリリースします」って。
安田 そうだったな。
古澤 そう。だからお客さんからしたらまたインディーなのかなというか、そういうことも関係なく、ただアルバムが出るんだって感じで、僕らもそう思っちゃうくらい淡々と進めていて、あー、このまま新曲やるのかな?と思っていたら、樋口が「まー…」とか言い始めて。
樋口 あはは。ちょっと危ないモードに入ってしまって。
安田 もうすでに泣きそうやったもんな。
古澤 それで、「メジャーデビューします!」って言ったとき、ちょうどうちの兄貴が客席に見えたんですけど、その兄貴が泣いていたんですよね。普段そんなに感情を表さない家族が泣いている姿を目の当たりにして、「やめろよー!」とか言いながら、泣いちゃいました。
安田 身内は特にくるよな。
古澤 お客さんが泣いているのはあえて見ないようにして。曲をやりながらは見ちゃいましたけど、ライブが終わるまでは、っていう気持ちがやっぱりあったので。
■紆余曲折あったと思うので、いろんな場面や感情が蘇ったりもしたんじゃないですか?
樋口 めちゃくちゃ蘇りましたよ。活動休止もしちゃったし、無責任な感じでライブをキャンセルしちゃったこともあったし、それでも待っていてくれた人たちがいたから、俺らはめっちゃ元気もらえたし。そういうことを考えていたらもうぶわーって、感情が完全に滝のようになってしまいましたね。
■そういう中でのこのアルバム、どんな1枚にしようとか、何かコンセプトみたいなものはあったんでしょうか?
樋口 おおまかに言うと、「夜明け」っていうイメージがまずあって、そこからメジャー=俺らの革命の合図だなって。だから夜が明けるニュアンスを出したくて、タイトルを『黎明プルメリア』にしたんですけど。
■はい。そうなんですね。
樋口 「黎明」が「夜明け」「明け方」っていう意味で、「プルメリア」は、花言葉で満月の夜明けにまだ朝霧に包まれた冷たい花を花束にして大切な人に渡すと願いが叶うっていう意味があるんですけど、俺にとっての大切な人は聴いてくれている人であったり、ライブに来てくれる人であったり、感じてくれる人やから、そういう人たちに、夜明けに、俺らの革命の瞬間にこのアルバムを届けたいなっていうイメージで作りました。
■ドラマティックなタイトルでもあり、ぴったりなタイトルですよね。
樋口 俺はいつもアルバムのタイトルとか後出しタイプなんですよ。
安田 出すときにめっちゃ恥ずかしがるんですよ。
樋口 勝手にコンセプトを決めているんですけど、俺、恥ずかしがり屋やし、イモいっつうかヘタれなんで、みんなにLINEとかで言うんですよ。(笑)
■ふふふ、かわいいですね。(笑)
安田 「いまからアルバムのタイトル送るわ」って、隣にいるのに。(笑)
樋口 いや、なんかね、染み込んでほしくてさ。
黒野 いや、違う。俺らの反応がうざいから、それもある、絶対!
樋口 それもありますね。(笑)
安田 シャイなんだよね。
樋口 でも文字することによって、漢字とかカタカナとかで、違って伝わることもあるじゃないですか。
■たしかに。言葉と文字だと違いますよね。
樋口 そうなんですよ。
■「革命」とおっしゃいましたげど、まさにそんな1枚だと思いました。どの曲も意思が強いうえにバラエティに富んでいるし、それぞれの曲の振りきり具合もすごくて、いろんな方向に振りきっているなと。ここは意図して作られたんですか?
樋口 ただ作りたいものを作った、やりたいことをやったっていう感じで意図はしていないですね。その日に自分が感じたことを書き続けたいから、作ろうと思って作る曲もあるけど、どっちかというと自然体で日記のような、今日こういうことがあったよっていうことを書きたいから。