安田レイ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

安田レイ『Not the End』

■完成した“Not the End”を、レイさん自身、今はどんな気持ちでこの歌を受け止めていますか?

安田 この歌詞を書くことで、今、自分がどういう想いを胸に日々を生きているのか、そういう感情の整理が出来たなと思っています。前作の“through the dark”も、今回の“Not the End”も、根底にある大きなテーマが「闇と光」なんです。少なくとも今の自分は、このテーマを描いていくと言いますか、自分にとってリアリティのある想いを大事に、これからも歌詞を書いていきたいなと思っています。

■リアリティある歌詞の方が伝わりやすいかもしれませんね。

安田 以前までの自分の中には、どこか「いい子ちゃんでいたい」という気持ちも正直ありました。私もそうだけど、人なら誰もが良いことばかりではなく、時に心がズタボロになる経験だってしていくじゃないですか。でも、そういう時の本音を隠さない言葉こそが、今は人の心に刺さっていく。今の自分は、口では人に言えないようなことでも歌にして伝えようと思っているし、“Not the End”でもそう表現しています。それこそ、弱い自分だって見せていこうという自分になれたからこそ、この歌詞が生まれたわけですからね。

■今回のジャケットはかなりインパクトが強いですね。

安田 ジャケットには私のアイデアを採用していただき、スクラップ工場を舞台に撮影を行ないました。“Not the End”の中で「奪ってく」や「壊れる」という言葉が大きなキーワードになっていて、壊れてゆくモノの中には,いろんな人の想いや、想い出が詰まっているからスクラップ工場を舞台に撮影しました。

■それは、どういうことですか?

安田 人によっては、ジャケットに映し出されたスクラップたちは、ただのゴミにしか見えないかも知れません。今でこそ、壊れたことで捨てられたモノたちですけど、人の生活を支えていた頃には、とても大切にされていたモノだったと思うし、ガラクタたち一つ一つに人の想い出が染みついているんです。そういう「壊れていく想い出たち」と、当たり前の日常が奪われ、自分が自分じゃなくなってしまうような日々を過ごしていく中、自分までもが駄目になってしまうんじゃないかと落ちそうになっていく、そんな今の社会にいる人たちの「壊れそうな気持ち」とを重ね合わせ、表現したかったからなんです。

■そういった想いが込められていたんですね。

安田 みんなの心の中で何かが壊れて、日常が奪われ、自分が自分じゃなくなっていく。自分がどんどん駄目な人間になっていく。きっといろんな人たちが心の中に抱えているであろうそういう感覚を、ジャケットやMVに落とし込みました。余談ですが、私が座っているソファを支えているのは、廃棄された大きな歩道橋なんです。そんな場所で撮っていたこともお伝えしておきますね。(笑)

■カップリングに収録される“amber”は、映画『おもいで写眞』の主題歌として使われています。

安田 深川麻衣さん演じるヒロインの音更結子は、とにかくめちゃくちゃ生きるのが不器用な子で。弱い自分を守ろうと、常に眉間に皺を寄せて世間をにらみ付けているような子なんです。だけど、得意の写真を通していろんな人たちとの出会いを重ねていく中で、自分の居場所を見つけて、自分の弱さをさらけ出してもいいんだと思える環境を通して、人としてどんどん成長していく。そんな結子ちゃんの姿が自分と強く重なりました。

■レイさんと似ているんですね。

安田 私も、自分が抱えている感情を誰かに伝えるのが苦手だし、いろんな感情を一人で抱えながら我慢してしまうところがあって。そういうところは、本当に結子ちゃんと同じなんです。この主題歌は、映画が完成した後にオファーを受けて作りました。なので、レコーディングの時にも、結子ちゃんの気持ちと重ねながら、深い気持ちを込めながら歌えたのは良かったです。

■“Not the End”と“amber”には、共通する想いも記されていませんか?

安田 曲調だけを並べたらまったく異なりますけど、“Not the End”も“amber”も、歌詞の中で大事なキーワードの一つになっているのが「繋がり」です。一人だけでは見つけられないことでも、人と繋がりあうことで「こっちだよー」という、これまで気付けなかった道を示してくれる。私自身が「駄目な自分もさらけ出していいんだ」という気持ちになれたのも、いろんな人との繋がりを通して得た感情がきっかけでした。今の時代はとくに、「人と人の繋がりが必要」とされています。そういう大切なテーマも、この2曲を通して伝えたかったんです。

■3曲目には、“Not the End -piano ver.-”が収録されていますが、レイさんの歌声が、生々しくも感情的に胸に響きました。

安田 “Not the End”をピアノバージョンにしたことで、より言葉に重みが出るし、気持ちも伝わりやすくなったのを、私自身も感じました。私はピアノの演奏に寄り添いながら、ライブバージョンみたいな感覚で歌いました。だからこそ、早くこの形でもみなさんに歌を届けたいなと強く思ってしまいます。

■早く、いつものような形でライブを行えるようになれたらいいですよね。

安田 それが私の今年の目標の一つです。無観客ではなく、みなさんを前にしたライブを行なって、一緒にあの空間に生まれる熱を感じ合いたいです。疲れた心を一番に開放できる手段こそが、私はライブだと思っているので、ライブはお互いにエネルギーを与え、与えてもらえる場だからこそ、早くみなさんを前に歌える環境を取り戻したいなと思っています。

■その日を今は心待ちにしています。

安田 私も待っています!

Interview & Text:長澤智典

PROFILE
1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州生まれ。 3歳で日本ヘ。10歳の頃、母親が聴いていた宇多田ヒカルに衝撃を受けてシンガーを志す。13歳で音楽ユニット『元気ロケッツ』に参加。20歳を迎えた2013年、「自身の歌声をもっともっとたくさんの人々の心に直接届けたい」という強い想いを胸に、同年7月シングル『Best of My Love』にてソロシンガーとしてデビュー。その後も、ドラマやアニメ主題歌、CMタイアップ曲など、 話題の楽曲を次々とリリース。2015年11月にリリースした『あしたいろ』は、TBS系ドラマ「結婚式の前日に」主題歌として共感を呼び、その年の活躍が認められ、「第57回輝く!日本レコード大賞』新人賞を受賞。配信シーンでの活躍が顕著で、これまでにリリースしたアルバム3作がiTunesTOP10入りを果たしている。ファッション分野、ラジオDJ としての活動も行い、さらなる活躍が期待されている。
https://www.yasudarei.net

RELEASE
『Not the End』

初回生産限定盤(CD+BD)
SECL-2583
¥1,980(tax in)

通常盤(CD)
SECL-2585
¥1,320(tax in)

SME RECORDS
2月24日 ON SALE