有華 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

有華『Stamp Rally』

有華というより、一人の人間としての思いが詰まっています。

シンガーソングライター、有華が6曲入りEP『Stamp Rally』をデジタルリリース。(※通販とライブ会場限定でCD+Tシャツセットも販売)今作はTikTokやInstagramなどのSNSでも大きな反響を呼んだ“Partner”などに加え、新曲2曲も収めた内容になっている。その中身はこれまで以上に赤裸々、かつリアルな心情を綴った歌詞が多い。彼女の「第二章の始まり」と言ってもいい楽曲群について、有華に話を聞いた。

■コロナ禍で有華さんも無観客ライブやワンマンツアーを行っていましたが、シンガーソングライターとしてこの期間に音楽との向き合い方で考えることはありましたか?

有華 そうですね……もともとInstagramでカバー曲やオリジナル曲をあげていて、コロナ禍になってもそれは継続していたんですけど、インスタ動画の人と思われるのが嫌で、動画の頻度を落としたんです。SNSの人ではなく、一人のシンガーソングライターとして認知してもらいたかったから。でもカバー動画を辞めると……それを楽しみにしていたユーザーの方もいたので、それまで視聴者は上昇していたけど、どんどん減っていってしまったんです。

■ええ。そうなんですか……。

有華 それが自分の中ではコロナ禍での大きな出来事でした。最近、“Partner”という楽曲を聴いてもらえるようになり、今までとは違うところから初めて聴いてくれた人たちがフォローしてくれて、やっと自分が望む形になってきています。次の段階に行きたいという気持ちがあったから。

■そうなると制作のモチベーションに変化も?

有華 今までは恋愛だったり、日々感じることだけを書いていただけなんです。でもコロナ禍になると、自分の心が病んでいるような曲しか書けなくて……。(笑) アルバム『Cherish it』はコロナ禍で初めて出した作品で、その時期に考えていたことを詰め込んだので、今聴いても当時に戻って動けなくなるんですよ。

■今作はそこから抜け出した自分を書こうと?

有華 そうですね。音楽をもっと楽しもうと思えたんです。私の性格はもともと明るいので、音楽を通して明るいパワーを与えたくて。

■その気持ちは歌声や曲調から伝わってきます。

有華 良かったです。コロナ禍になったのが2020年で、その時に上京を考えていたけど、1年延期したんです。

■実際今の東京生活はいかがですか?

有華 新しい環境にワクワクもあったんですけど、東京はみんな何かを求めて生活している人たちが多いイメージで。新しい出会いもあり「自分も頑張らなきゃ!」と奮い立たされる一方、「やばい、何もできてない!」という気持ちが交互にやって来て。“Partner”が今、沢山のみなさんに聴いてもらえていますけど、もし聴いてもらえていなかったら……ゾワッとしますね。この1年でたくさんの人と出会い、今までの中で一番刺激をもらえていますから。それも作品に投影できて良かったなと思います。

■今作の最初の作品像はどんなものでしたか?

有華 私の中では20代で書いた曲を入れたくて。この作品を聴いたら「20代はこういう感じだったな」と、わかる作品にしたかったんです。だからより自分のリアルな感情を入れようと。

■有華さんはまだ20代ですよね?

有華 そうですそうです。普通は30代になってから、20代の頃を振り返るかもしれないけど……“Marry me”は「早くプロポーズしてよ!」という曲だけど、30代になったらもう思わない感情かもしれない。今だからこそ感じることを入れたかったんです。逆に20代前半に書いた“終わらない唄”は、「10代から歌手になりたい気持ちがあったけど、全然ゴールが見えない」という、その当時の気持ちを書いているんです。アルバム名も一つひとつのスタンプを押して、作品が出来上がるという感じで。有華というより、一人の人間としての思いが詰まっていますね。「君」、「あなた」と表現している歌詞も、本当は実名を入れたかったぐらいですもん。(笑) それくらい赤裸々でありのままという曲が多いですね。

■ここまで丸裸になれたのは初めてですか?

有華 そうですね。今まではどこかアーティストの有華が見張っているような感覚があったけど……今回の“Marry me”、“サヨナラのはじまり”は、私が思う一人に書いたような感覚ですから。というか、“終わらない唄”以外は、一人の人に向けた曲ばかりなんです。そこは恥ずかしさがなくなって、自分のために書こうと思えたからですね。以前は「共感するかな?」とか、聴き手のことも考えていたけど、「もういいや」って。自然とそうなれたんですよ。

■照れや恥ずかしさを取っ払えた理由は?

有華 さっきのSNSの話じゃないけど、フォロワーが減った時に辛かったけど、再スタートできるかもしれないと思えたからですかね。インスタで知ってもらえたのが第一章なら、自分がどんな曲を届けたいかを深く考えたのが今作かもしれない。

■今作は第二章の始まりですね。そして、1曲目が“バースデーソング-2022 ver.-”です。この曲を冒頭に持って来たのは?

有華 私にとって誕生日は特別で、誕生日があるから自分が今ここにいる感覚があるから、とても大事にしたいんです。これを1曲目にすることで、その日が誕生日じゃなくても、「あなたが今ここにいる印の日」という歌詞で始まるんですけど、「大丈夫だよ」って、ハッピーな気持ちで始めたかったんです。

■この曲は2015年に発表されたものですが、当時の音源と聴き比べてみていかがですか?

有華 こんなに声って変わるんだなと。自分で言うのも変ですけど、声に深みが出たというか、自分がいろんなことを経験した上で出た声だなと思います。

■今回は明るく包み込んでくれる柔らかな歌声ですよね。

有華 2015年にどういう風に歌ったのか今は思い出せないんですけど……ただ言葉をなぞっているだけという印象を受けて。改めてレコーディングすると、心からお祝いしたいという気持ちで歌えましたから。

■そして、次の“Partner”はより多くの人に届いた楽曲になりましたね。

有華 「ありがとう!」という気持ちが強くて、自分でも把握しきれないくらい、いろいろなところで聴いてもらえているんだなと。昔の友達とかも「駅で今JKが歌っていたよ」とかって連絡をくれるんですよ。(笑) 私もそうですけど、周りの友達や家族、ファンの方たちに喜んでもらえて、それが嬉しいですね。この曲はCHIHIROさんと共作したんですけど、「私はこんな女です」と、まずはLINEで箇条書きにして送ったんです。「自分はメンヘラだな」と思いつつ……。(笑) 例えば「ケンカした時は追いかけてきて、アイスぐらいは買って欲しい」とか書いて。私の恋愛観を書いているので、そこに共感してくれて、みんなが動画を使ってくれるのは嬉しいですね。「ああ、良かった、私だけじゃないんだな」と思えるし。男性からしたら、「ええー!」と思うかもしれないけど、私的にはポップに伝えたつもりなので。(笑) カラオケで彼女が歌って、「かわいいなあ」と思ってくれたら、それでいいんじゃないかと。

■確かにこの曲をバラードで歌われたら、重く感じるかもです。(笑) “一蓮星”はバラードテイストの楽曲です。歌詞はコロナ禍で多くの人が抱く感情を綴っていますが。

有華 いろんな思いの中で作ったんですけど、遠距離で会えない相手、コロナ禍で会えない相手、私は甥っ子が早くに亡くなってしまい、その子に向けた曲でもあるんです。その意味でも残したかった楽曲なんですよね。その子には数回しか会えなくて、この子がいた証、生きた証を音楽で残したくて。制作の中では一番歌詞が大変だったかもしれない。

■それから“Marry me”ですが、これは“Partner”以上にド直球の歌詞になっていますね。この曲はどういうきっかけで書こうと?

有華 この年齢になると、ガールズトークで結婚の話題しか出てこなくて。(笑) みんな、「プロポーズしてくれないんだ」という話が多かったから。

■女性はみんな待っていると?

有華 みんな待っていますよ!(笑) こればっかりはタイミングもありますからね。でも曲にしたかったんです。女の子は男性の前だと本音を言えない女の子も多いので、私も本当に好きな人には全部を言えなくなる部分もあるから。結婚したいんだけど、焦らせるのも嫌だから、じゃあ、音楽で焦らせようかなと。(笑) 私の中で“Marry me”はすごく書きたい曲だったんです。

■曲調的には打ち込みやホーンを入れた賑々しいサウンドです。

有華 アップテンポにするつもりで、最後のサビは女の子みんなで歌っているようなアレンジにしようと思って、そこはこだわりました。女性の叫びが伝わればいいなって。(笑)