■そこに注目しながらもう一回聴いてみます。あと、“The Dragon Cries”はトニー・ヴィスコンティのプロデュースなんですよね?
小鳩 そうなんですっぽ!ありがたいお話をいただいて。
SAIKI この曲を作詞してくれたトムさん(Thomas Kenney)が、トニーさんと古い友人らしくて、トニーさんに「こういうバンドがいるよ、一緒にやろうよ」と言ってくれたみたいなんです。
KANAMI 光栄なお話すぎて、最初は詐欺なんじゃないかって。(笑)
■僕は(トニー・ヴィスコンティが多くの作品でプロデュースを手掛けた)デヴィッド・ボウイもT.Rexも大好きなので、正直めちゃくちゃうらやましいですね。
小鳩 彩ちゃんもデヴィッド・ボウイがすごい好きだったので、ビックリしたっぽね。
SAIKI うん。ビックリした!
■制作はどういうふうに進めていったんですか?
KANAMI 最初にデモをお送りさせてもらって、いろいろ指示が来るのかなと思ったら、「いいね、これでいこう」みたいな感じになって。メロは実際、ほとんど原型がないくらい変わったんですけど、オケはほとんどそのままで。ちょっと世界に通用した感があってうれしかったです。
■BAND-MAIDにしてはテンポが遅めの曲ですよね。
AKANE BPM100いかないくらいだよね。
小鳩 雰囲気的には重い曲にしたいという話はあったので、それを踏まえてKANAMIが考えてくれて。
KANAMI スピード感よりはグルーヴィーな重さを重視したほうがいいのかなと思って作りました。
■レコーディングは日本でやったんですか?
SAIKI オケは日本で録って、ボーカルは私と小鳩でニューヨークまで行って、トニーのスタジオで録りました。
小鳩 デヴィッド・ボウイも録ったところで。
SAIKI デヴィッド・ボウイが座ったところにも座りまして。
■ヤバいですね!レコーディングはいかがでしたか?
SAIKI レコーディング中にメロを変えたり、歌詞を変えたり、その場で制作していく感じでした。
小鳩 日本で作っていた原型はあったんですけど、そこにはあまり縛られずに作っていきましたっぽ。
SAIKI ほんと発想の転換がすごく多くて。これも思いついちゃった、あれも思いついちゃったみたいな感じでしたね。
■トニーとの会話で印象的な言葉はありました?
SAIKI 声質を褒めてもらえたのはうれしかったですね。
小鳩 ブラックミュージックが合うねって言われてたっぽ。
SAIKI アメリカでも通用するんじゃん?みたいな感じで言ってもらえて、「ほんとに?」みたいな。(笑) でも、すごくうれしかったです。あと、歌詞が英語なので発音が不安だったんですけど、「全然聞けるし、意味もわかる」って言ってくれて。歌メロに乗せるならこっちの発音がいいと思うとか、細かく相談に乗ってくれたので、レコーディングしていくうちに不安もどんどん消えていきました。
小鳩 すごい仲良くなったっぽね。
SAIKI ほんとお父さんみたいでした。トニーもトムも親日家で、うれしかったですね。
KANAMI アメリカツアーでニューヨークに行ったときも、2日間とも両方見に来てくれたんですよ。
小鳩 「僕は大ファンだ」って言ってくれていましたっぽ!
■歌詞はトムさんが書かれたということですけど、何か説明されたんですか?
小鳩 いま世界的には難しい言葉じゃないほうが好まれていると言われましたっぽ。それに自分たちも英語が堪能なわけではないので、そんなに難しくない英語で、みんなで一緒に歌えるようなメロディーで、あえて単調にしたいねって。もともとはBAND-MAIDがよくやる掛け合いみたいなのが入っていたんですけど、このメロ一本だけで十分だよみたいな感じで言われて。
SAIKI これだけでいいの?って。
小鳩 でも、実際にできあがったものを聴いてみたら、これはこれで新しい私たちが見せられてかっこいいなと思いましたっぽ。そういうところは自分たちだけじゃ生み出せないので、プロデュースしてもらえてよかったですっぽ。
SAIKI 引き算って難しいじゃないですか。引き算してくれてありがとうって感じでした。ミックスもそのスタジオでトニーがやってくれて、すごくUSっぽい乾いた音になって、「かっけー!」ってなりました。
小鳩 ボーカルのエフェクトも「こんなに飛ばすっぽ!?」みたいな。こんなにふわんってした感じのミックスは日本じゃなかったですっぽ。
KANAMI すごーいってなった。
小鳩 ギターもBAND-MAIDは基本的に本数が多いんですけど、この曲ではガバッと少なくして。
KANAMI 「あ、減らされてる」と思いました。(笑)
小鳩 ミックスのときにトニーがすごい心配していたんですっぽ。「KANAMI、怒るかな?どう思う?」って。「いや、大丈夫ですっぽ!」って言いました。(笑)
KANAMI でも、かっこよくて、自分じゃ出せない感覚だなって、すごい勉強になりました。自分の作家人生としても、成長につながる経験だったなって感じています。
■まだまだ聞きたいことがいっぱいあるんですけど、時間がないので今後の話を教えてください。いまは昨年4月に始まった「WORLD DOMINATION」ツアーの最中で、いよいよ来年2月のLINE CUBE SHIBUYAでの2DAYSでファイナルを迎えますよね。このツアーは「宣告」「侵略」「激動」とタイトルが変わってきて、ファイナルは「進化」になっていますけど、その心は?
SAIKI 宣告、侵略、激動、もう一個で終わらせたいっていうのは最初からあって、この最後の2公演で進化を見せつけたいなと。それで「WORLD DOMINATION」ツアーを締めて、また次のステップに行きたいなと思っています。「WORLD DOMINATION」という目標自体はずっと続くものですけど、ツアータイトルとしてはこれで終わりです。
■長いことやってきた集大成が2月に行われるんですね。
SAIKI そうですね。この2年間、たくさんのお給仕をしてきましたけど、「進化」ではいままで通りじゃないもので、ご主人様お嬢様の心をさらに掴めるような2日間にしたいなと思っています。これまでと一緒と思ってんなよ、みたいな。(笑) 自分たちのことも試したいと思っている2公演です。
小鳩 いつも自分たちでハードルを上げていますけど、それを超えていきたいと思いますっぽ!
Interview & Text:タナカヒロシ
PROFILE
メイド服を纏い、ライブを「お給仕」、観客を「ご主人様・お嬢様」と呼び、メイドの世界観を演出する一方、ビジュアルとは相反するハードなロック・サウンドを武器に観る人を魅了する。日本だけに留まらず、海外のご主人様・お嬢様にも熱狂的に受け入れられている、〈世界征服〉を目標に掲げる、メイドの女性5人組ロックバンド。
bandmaid.tokyo
RELEASE
『CONQUEROR』
初回生産限定盤A(CD+BD)
CRCP-40590
¥5,000(tax in)
初回生産限定盤B(CD+DVD)
CRCP-40591
¥4,000(tax in)
通常盤(CD)
CRCP-40592
¥3,000(tax in)
Revolver records / CROWN RECORDS
12月11日 ON SALE