安田レイ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

安田レイ『アシンメトリー』

ツラい時期を越え、それが糧になったからこそ、今の安田レイに繋がっている

思わせぶりな態度や逆につれないそぶり…。恋する女性は相手のそんな一挙動でもとても気になり、しいては考え、深読みや、あらぬ妄想をしてしまうもの…。もう、いっそのこと、「そんな駆け引きはヤメてお互い素直になろうよ!」と、つい心の声を荒げたくなる時もある。そんな女性心理や恋愛あるあるの数々を歌に交えた安田レイのニューシングル『アシンメトリー』(フジテレビ系10月期木曜劇場「モトカレマニア」オープニングテーマ)。アシンメトリーとは左右非対称のこと。幾ら親しい間柄とは言え、それは男女、その非対称は免れない。さて、実際の安田レイの場合はいかに…?その辺りも含め、今回のニューシングルについていろいろと話を訊いた。

■今回収録の“アシンメトリー”と“Not Enough”の2曲は、対象的ながら共通して「ピュアだった頃の自分を想い出して」みたいなテーマを擁している印象を受けました。

安田 2曲それぞれながらも、今おっしゃって下さった、「ピュアな気持ち」という部分では、どちらも自分の感情の中にある素直な気持ちを擁しているのかなって。“アシンメトリー”は素直になれない部分が、ある意味正直な自分でもあったりして。それらも含め、この曲は多くの方に共感していただけるんじゃないかな…。

■私も同感です。もどかしさも含め、歌われている内容的に「ああ、この気持ち分かる…」って方が多く現れそうです。

安田 この曲はドラマ(フジテレビ系10月期木曜劇場「モトカレマニア」)のオープニングテーマでもあるんですが。今回は原作のコミックを読んで曲を作ったんです。このコミック自体、すごく「分かる!分かる!!」って恋愛の駆け引きのシーンが多々あって。

■それは例えば?

安田 元カレの名前をSNSで検索してしまうとか。私もありますけど、これってみなさんやりません?

■つい、やっちゃいます…。

安田 見ても何もいいことはないんですが。(笑) 結局「見なきゃよかった…」って凹んでいる自分がいる、みたいな。もちろんそんなに頻繁には見ませんよ、私も。(笑) 昔好きだった人を調べて、覗いてみたら既に結婚していて子供もいて…。「あっ、そうか。時は流れているんだ…」ってなる。私の中では、その彼はあの時のままなので。そんなモヤモヤ感もこの楽曲には収まっています。それに限らず、「いいね」ってワードも出てくるんですが。それは「SNSではリアクション出来るんだけど、実際の本人に会ったら上手いこと自分の感情を伝えられない」みたいな。それも今の時代を表している歌詞なんじゃないかな。結構それで葛藤している方も多くおられそうですよね。

■照れもあるんでしょうが、素直に「好き」と言えないばかりか、わざと平静を装ったり?

安田 それどころか一周回って、なぜか「嫌い」って態度や言葉で思ってもいないことを言ったり、態度に出したりと、そんな瞬間があったりする。そんな「恋愛あるある」が沢山詰まっているんです。

■でも印象的に安田さんは、このようなタイプとは異なったイメージがあります。

安田 いやいや全然こっちのタイプですよ。(笑) 素直になれない、昔からです。特に近い人には。自分の感情の奥深くにあるものを伝えるってことを、昔から全く出来ない子で。未だにそんな葛藤は残っています。そんな「どうやったらこの想いを伝えられるんだろう?」と悩んでいた時に音楽との出会いがあって。「あっ、音楽ならすごく素直になれるな…」とか、「自分の気持ちを代弁してくれてモヤモヤを空っぽにしてくれる存在だな、私にとって音楽は…」とか。そう考えると沢山音楽に救われてきたな、私もって。

■では音楽と出会い、ここまで共に過ごすことで安田さん的にも変わったり?

安田 いやいや。もちろん今もその不器用な部分は変われてはいません。でも、それってすごく人間臭くて、逆にいいかもと思えるようにもなってきて。やはり100%素直に生きられる人なんていないでしょうから。想ったり、感じたりしたことが全部言えたり、伝えたりできる人、全てを吐き出せている人なんていない。人はみなそれぞれ何かしら葛藤があって、でもそれって特に悪いことではなくて。そう悩んじゃっている方々に「そんな自分を否定しないで」って思っちゃいます。

■その辺りの心の葛藤とそれを打破したい。そんな心の機微がこの“アシンメトリー”からは非常に伝わってきます。

安田 まさに自分自身でも経験してきたリアルな葛藤だったし、恋愛中の特に女子のみなさんに聴いていただきたいなって。合わせて、その今の恋愛におけるストレスをこの曲に乗せて発散させてもらいたいです。

■結局この歌には答えのようなものがキチンと出ていない。いや出していないのもポイントかと。

安田 ですね。全体的には「それでも恋をしよう!!」って。いろいろとモヤモヤとすることもあるだろうけど、心の向くままに自分を信じて恋をしていこうよって。やはり正解がないのが恋愛でしょうし。私にとっては常にモヤモヤに囲まれているものでしかないけど。(笑) 人それぞれに様々なカラーがあるでしょうから。

■ミステリアスさは誰にでもありそうですもんね。

安田 そのミステリアスさは必要だし、それが恋愛に火をつけていくんです。(笑) 何でも分かり合えるのももちろん大事かもしれませんが、私の場合、多少でも「この人、何を考えているんだろう?」「この場合、どう行動してくるんだろう?」と、読めない人の方がタイプだったりもして。その「?」があった方が恋愛は燃える。(笑) とは言え、結局はそこで新たなモヤモヤが発生するケースがほとんどなんですけど…。(笑) 無かったらなかったで、たぶんそれほどまでには燃えないかもしれない。でも、何も分からなかったら逆に恋愛としては成立しなさそうですから…その塩梅も難しいですね。(笑)

■それらをアシメントリ―と例えているのもユニークでした。

安田 自分の中にある2つの感情が近いようで、ちょっと違う。そんなことをタイトルで表現するとしたら、これ、いいワードだなって。今回はジャケット等でもかなりアシンメトリー感が出せているかなって。

■今回はアートワーク全般に、安田さんの赤がインパクトありますね。

安田 MVでも赤いドレスですからね。あっ、そこでも上手くシンメトリーとそうじゃないところが同居しているし。そうそう、カプセルホテルでの撮影もあったんですが、私、カプセルホテルって初めて体験して。「えっ、今こんなのがあるんだ!?」と感激しました。

■ジャケットはすごく歌内容を上手く伝えていますね。対象者がアシンメトリーで映り、互いに触れたいと思っているんだけど、触れ切れていないもどかしさが上手く表れています。

安田 そうなんです。ちなみに今回ジャケットの私の全体が赤いのは、これは後からカラー補正したものではなく。実は最初から赤いライトを当てて撮影したものなんです。同じ自分なんだけど、ちょっとずつ違っている。その辺りを上手く表現していただいています。先ほどのMVのカプセルホテルの発想も、殻に閉じこもって、そこから出たいとの想い、それを上手く伝えられているかなって。